横浜市の児童相談所一時保護所で6月、夜間巡回中の男性職員が保護児童を盗撮した事件について、同市は再発防止策の方向性を公表した。この間の検証で、巡回を実質的に1人で担当する夜間指導員の研修が十分でないことや、男児が被害を訴えるまで時間がかかったことなどが明らかになったという。職員の体制や採用、研修の再検討、児童が相談しやすい環境づくりなどを進めていく。
市によると、一時保護所は市内4カ所の児相に設置されており、事件を起こした職員は昨年1月から勤務する20代の会計年度任用職員。週1~2回、夕方から翌朝までを担当する「夜間指導員」と呼ばれる職種で、巡回中に居室で寝ていた10代男児の衣服をずらし、尻などを私用のスマートフォンで撮影したとされる。男児が別の職員に「怖い思いをした」と打ち明け、児相が県警に通報。8月に不同意わいせつなどの疑いで書類送検され、市の聞き取りにも容疑を認めているという。
市では7月、内部で委員会を立ち上げて課題の整理を始めた。児相全体の人手不足の中、一時保護所の夜間担当は正規職員と夜間指導員の2人体制(男子ブロック)となっており、巡回は基本的に指導員が1人で担っている実態が浮かび上がった。
もともと福祉職志望の学生が多かった指導員は、近年、夜勤を敬遠してなり手不足で、児童福祉への理解が不十分な人もいる。だが、勤務時間が限られているため、研修は勤務初日に30分程度あるだけで統一したマニュアルもなかった。該当職員は私用スマホの持ち込み禁止も知らなかったという。
また、男児が被害を打ち明けるのに4日かかった点についても重く見て、相談方法や窓口などを子どもにわかりやすく伝える掲示なども検討する。
17日の市議会常任委員会で報告した。事情を抱えて保護された児童が福祉現場で受けた被害に、こども青少年局の福嶋誠也局長は「児相は子どもを守る最後のとりでで、(被害児童は)混乱し、深く傷ついていると思う」と言葉を詰まらせ謝罪した。外部の有識者や現場のスタッフ、子どもたちの意見を聞きながら、年内に具体的な防止策をまとめた報告書を公表する。(足立朋子)
朝日新聞 – 2025/09/19 11:15