教員が女子児童らを盗撮し画像をSNSのグループチャットで共有したとされる事件で、愛知県警熱田署捜査本部は5都道県の全メンバー7人を摘発した。互いに面識はなく、メンバー同士の承認欲求が投稿を助長し、被害が拡大した可能性がある。校内での盗撮もあり教育現場の信頼を揺るがす前代未聞の事態となった。識者は「児童と日常的に触れ合うことで罪悪感が薄れた上、称賛を得て歯止めが利かなくなった恐れがある」と話す。
発覚のきっかけは名古屋市立小の元教諭、水藤翔太被告(34)が3月に別件で逮捕されたことだった。押収した携帯電話の解析でグループの存在が判明し、県警は6月に同市立小の元教諭、森山勇二被告(42)らを逮捕。全容解明に向け捜査本部を設置し、11月までに神奈川、北海道、東京、岡山の教員を相次いで逮捕した。全員起訴された。
◇ ■各教委、未然防止に懸命 教員不信の暗い影 教員による一連の盗撮画像共有事件を受け、各地の教育委員会では、児童らを撮影する際のルールの徹底など盗撮の未然防止に躍起だ。ただ名古屋発の事件の衝撃は大きく、各地の教育現場に〝教員不信〟の暗い影を落としている。
近年の学校・園では、年中行事に限らず、子供たちの様子を教員が撮影し、画像とともに公式サイトに掲載する機会が多い。各教委は以前から盗撮を防ぐため、私用のスマートフォンでの撮影や教室へのスマホの持ち込みを禁じてきたが、文部科学省は事件を受け、改めて学校所有のカメラ・端末での撮影を求める通知を出した。
事件の発端となった名古屋市教委は、教員2人以上で隠しカメラがないか点検するよう指示。また児童を撮影した画像データを全ての教員がチェックできるよう共有サーバーで保存することや、保存後は記録媒体から速やかに削除するといった撮影ルールの順守を呼びかけた。
校外学習の際には緊急時の連絡用に教員がスマホを持つ必要があることから、撮影できないようレンズ部分を覆うシールを全校に配布。さらに効果的な再発防止策を検討するため、教育長をトップに、外部有識者やPTAなどで構成するプロジェクトチームを11月に始動させた。年度内に対応策をまとめる方向だが、「待っていると対応が遅れる」(同市教委担当者)として、できるものから前倒しで実施。今月には隠しカメラを熱探知できる機器を導入した。
信頼回復に追われる各教委だが、複数の担当者が「ごく一部の教員のために、誠実に子供たちに向き合っている大多数の男性教員がつらい思いをしている」と明かす。名古屋市教委の担当者も「今後、『担任は女性にしてほしい』という保護者の声があるかもしれない」と懸念した。(藤井沙織)
産経新聞 - 2025/12/22 21:30