【伊賀】勤務していた三重県伊賀市内にある病院のトイレで盗撮を繰り返し、女性の遺体を触る目的で霊安室に侵入したなどとして建造物侵入や性的姿態撮影処罰法違反などの罪に問われた名張市美旗町、元会社員渡部憲治被告(47)に対し、津地裁(西前征志裁判官)は9日、懲役3年執行猶予4年(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。
判決などによると、渡部被告は昨年9月―今年6月、伊賀市内の病院で女子トイレに侵入し、職員ら女性6人を盗撮。昨年1月には同病院の霊安室に、遺体を触る目的で侵入したなどとされる。
西前裁判官は、判決で「性的欲望を満たすための身勝手な動機に酌むべき事情はない」と強調。「職務上の立場を利用した卑劣な犯行で、常習性も認められる」と指摘した。
渡部被告が以前に盗撮をしたとして罰金刑を受けたことを踏まえて「法を守る意識が鈍い」とした上で「医療機関を受診するなどし、二度と各犯行のようなことをしない旨述べた」として、執行猶予付きの判決が相当と結論付けた。
公判は被害者の特定を避けるため、病院名などを伏せて審理した。
「自宅以外でトイレに行くことが困難になった」「閉まっている個室を避けるようにしてトイレを選んでいる」。検察は公判で、盗撮被害を受けた女性らの悲痛な思いを読み上げた。
検察側の証拠などによると、渡部被告は約10年前から盗撮を繰り返し、令和元年に罰金刑を受けた。6年前からは伊賀市内の病院で整備や点検などの仕事をするようになったという。
被告人質問で渡部被告は、精神科を一度受診したが、3年ほど前から再び盗撮を繰り返すようになったと説明。検察官に盗撮の回数を問われると「数えられないくらい」と答えた。
犯行は盗撮にとどまらなかった。仕事で管理していた予備の鍵を使って職員宿舎に侵入し、下着などを物色。マスターキーを使って病院の霊安室に侵入し、女性の遺体を触るなどの行為にも及んでいた。
被害者らは「絶対に許すことができない」と厳重な処罰を求めた。検察は論告で盗撮行為の常習性を指摘し、霊安室への侵入を「死者の尊厳を損なう」と非難。渡部被告は最終陳述で「自分の人生をかけて償いたい」と述べた。
この日の判決で西前裁判官は執行猶予付き判決を言い渡した。常習性などを挙げて「刑事責任は重い」とした上で「被告が二度と各犯行のようなことをしない旨述べた」「被告人には身体を拘束される性質の前科はない」と説明した。
伊勢新聞 – 2025/12/10 08:01