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職場で従業員が盗撮「加害者にもプライバシー」難しい企業側の対応方針 被害者ケア、公表の必要性は?

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職場で従業員による盗撮の問題が生じた場合、企業はどれだけ被害者をケアすべきか。そして、関係者への通知や公表について、どのような判断をすべきだろうか。

【写真】実際に隠しカメラが設置された女子更衣室 企業側の労働問題に取り組む安倍嘉一弁護士に聞いた。

問題発覚直後の初動から、被害者へのケア、そして社内外への公表の判断基準まで、企業が直面する課題は多岐にわたる。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

——従業員による職場での盗撮が発覚した際、企業はまず何から手をつけるべきでしょうか。対応の大きな流れを教えてください。

まず、盗撮のカメラが発見されたり、盗撮の疑いが発覚したりした場合、企業が最初に直面する問題は「行為者を特定できるか」というものです。

たとえば、防犯カメラの映像などから仕掛けた人物が判明すれば、その後の処分を検討する段階に進めます。

しかし、そうした証拠がない場合、企業の力だけで犯人を見つけ出すのは困難なことが多いです。そのため、警察に相談し、被害届を提出することが次のステップになります。

ただ、客観的な証拠がなければ、警察としても、必ず犯人が見つけられるとは限りません。警察も社員全員から事情聴取をするといったことは現実的ではありません。

——犯人が特定できない場合、企業は次に何を考えますか。

再発防止策を講じることになります。防犯カメラの設置も選択肢の一つですが、これは従業員のプライバシーとの兼ね合いもあり、慎重な判断が必要です。警察に現場検証に入ってもらうだけでも、一定の抑止効果は期待できるかもしれません。

しかし、盗撮は意図的になされる犯罪であり、本人がやろうと決めているのを完全に防ぐのは極めて難しいものです。被害が度重なるようであれば、防犯カメラの設置も検討しなければいけないでしょう。

——被害者となった従業員へのケアについては、企業はどこまで対応すべきでしょうか。たとえば、被害者が精神的な苦痛から「現場となったトイレや更衣室を使えないので、部署を異動したい」などと申し出た場合、どこまで応じる必要があるでしょうか。

被害者へのケアの基本はメンタルケアになりますが、これは企業のカウンセリング制度などを利用しつつも、基本的には医師の専門領域です。産業医が専門外であれば、専門の医師を紹介するなどする対応が望ましいです。

ハラスメントの問題が生じたときと同様に、異動の希望については、まず本人の話をしっかり聞くことが前提として、その上で異動可能なポジションが社内にあれば検討すべきです。しかし、企業の規模や状況によっては現実的に難しい場合もあります。

異動先がなければ対応できませんし、これまで事務をやっていた人がいきなり営業にいって能力を発揮できるかといった問題もあるでしょう。現実的に異動できる可能性があるか、移動後の状況なども検討する必要があります。

——もし犯人が特定され、刑事事件として捜査が進んだ場合、企業はどこまで情報を追いかければよいのでしょうか。たとえば、被害者から「加害者がどんな処分を受けたのか、盗撮データは流出していないのか知りたい」といった要望が寄せられることも考えられます。

この場合の被害者はあくまでも個人であり、企業ではありませんので、企業が警察の捜査情報を入手するにも限界があります。基本的には、個人で確認していただくことになり、企業としてできることがあるとはあまり考えにくいと思います。

ただ、従業員が加害者であった場合、逮捕・起訴されるなどすれば、今度は加害者である従業員の処分を検討することになります。その場合、最終的にどのような刑罰を受けたかも懲戒処分の検討において必要になる場合もあるため、裁判を傍聴することはあります。

弁護士ドットコムニュース – 2025/08/28 12:01


 

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