二度と女性を盗撮しません―。法廷でこう誓い、2024年9月に執行猶予付き有罪判決を受けた長野県千曲市の会社員の男(23)が判決からわずか1カ月後、再び見ず知らずの女性を盗撮しようとして起訴された。昨秋の判決後、医療機関を受診したり、家族が監督を強めたりしたが犯行を止められなかった。公判や接見取材を通じて背景を探った。
今年1月中旬、長野地裁の法廷。しわのないスーツに身を包んだ男が証言台の前に立った。問われたのは性的姿態撮影処罰法違反罪(撮影未遂)。昨年10月、長野市の長野駅前のコンビニエンスストアで、10代女性のスカートにスマートフォンを差し入れて撮影しようとしたとする起訴状の内容を検察官が読み上げ、裁判官が認否を尋ねると、男は「間違いないです」と力なく答えた。
検察側冒頭陳述などによると、男が盗撮に興味を持ったのは高校生の頃。インターネットで「盗撮動画」を見るなどして「自分でもできるだろう」と考え、自身のスマホで盗撮を始めた。自動車関連会社に就職し、結婚した後も犯行を繰り返した。男の摘発は今回が4回目。前回は24年3月に長野駅近くの商業ビルで10代女性のスカート内を盗撮したとして同法違反(撮影)の罪に問われ、有罪判決を受けた。
昨年8月の公判で男は動機について「仕事や家庭のストレスがたまっていた」などと供述。今後は普段持ち歩くスマホのカメラを壊し、一人で駅前をふらつかない―と述べた。9月、裁判官は執行猶予付き判決を言い渡し、「ここが最後のチャンスです。がけっぷちに立っていることを自覚してください」と説諭した。男は深くうなずいた。
「欲に勝てなかった」。男は仕事の都合で長野駅周辺を訪れる機会が増えたことを機に、この判決の翌月から再び犯行に手を染めた。スカート姿の女子高校生に狙いをつけ、ATMの操作に集中している隙をみて犯行に及んだ。盗撮に用いたのは、カメラを壊した自身のスマホとは別の、家から持ち出さないと妻と約束していたスマホ。レンズ部分を塗り固めた木工用接着剤をその都度剥がし、犯行に及んでいた。
信濃毎日新聞デジタル - 2025/05/04 06:30