逮捕された後の実録 その3
ネットニュースを見ていたらたまたま府中刑務所に関する記事を見つけました。筆者も府中刑務所で服役していた経験がありますので、当時のことを思い出しつつ記事に触れてまいります。
今週ロケットニュースのウェブサイトにて以下の記事が掲載されました。
【突撃】刑務所の中に入ったらこうだった
レアな内部画像あり
レアな内部画像ありとのことでしたが、記事に書かれている通り参観で刑務所内に訪れても撮影等は禁止されていますので中で実際に撮影した画像はありませんでした。記者が内部の様子をイラストで描いたというだけのようです。
ただ、イラストで描かれている内部の様子は概ね合っていますので、府中刑務所で務めていたときのことを思い出します。記事で触れられている点についていくつか見てまいりたいと思います。
入浴時に使えるお湯の量をチェックしている刑務官はいない
このツアーでは、受刑者の生活空間を直接目にすることになる。メインと言えるのは受刑者が仕事をしている作業場、それからお風呂場だ。受刑者自体を目にすることはないが、彼らが日々の暮らしで守らなければいけないルールの厳しさを感じることになるはず。
一例を挙げると、受刑者が入浴する場合、かけ湯は洗面器2杯まで、入浴中に使えるのは合計で12杯までだという。
このように紹介されており、このお湯の量のルールは他の施設でも存在していたので府中刑務所に限らず割とポピュラーなルールと思われます。ただ、入浴中にこのルールが守られているか厳格にチェックしている刑務官はいません。
2ページ目に府中刑務所の浴場の様子を描いたイラストがありますが、このイラストにあるように浴場にはシャワーが設置されており、受刑者はまずシャワーを使うように配置されますので洗面器で浴槽からお湯を汲んで洗体や洗髪を行う人がそもそもいない場合があります。
また、一度で数十人が同時に入浴する一方で監視する刑務官は1名ないし2名程度なので、こいつは何杯目、あいつは何杯目などといちいちカウントするのは不可能です。このルールが存在することは事実ですが、実際にこのルールを超えてお湯を使って懲罰を受けたという話は聞いたことがありません。
シャワーについても出しっ放しにはするなというごく普通のルールがある程度なので、15分間という短時間しか入浴が許されない点と私語厳禁という点を除いては不自然なほど厳しいルールがあるわけではないです。
なお、脱衣場も含めたイラストを見ると脱衣場が肺のように2つあることがわかりますが、これは限られた時間内で矢継ぎ早に入浴させるためのものです。左の脱衣場から入った工場Aが入浴している間は次に入浴する工場Bが右の脱衣場で待機し、工場Aの入浴が終わったら左の脱衣場へ入れた上で工場Bが入浴を始め、さらに次の工場Cが左の脱衣場で待機するという形です。
8人在室している共同室は(たぶん)ない
複数の受刑者が一緒に生活する共同室を上部から見た模型のようなものの画像も掲載されています。これも過去に収容人員が多かったときに作成したものと見られますが、現時点で府中刑務所の共同室に8人も入れている部屋は(たぶん)ないと思います。たぶんというのはすべて確認したわけではないためです。
府中刑務所に限らず、ひと昔前までは刑務所の過剰収容という問題があって共同室では常に定員いっぱいまで、単独室でも2段ベッドを入れるなどして2人収容するなどして詰め込んでいました。しかしその後、増築して居室を増やしたり、受刑者の人数自体が減ってきたりしていて過剰収容については概ね解消されています。
筆者は府中刑務所では配食を担当していたので担当フロアの部屋ごとの人員は概ね把握していましたが、ここ数年は1部屋あたりだいたい4,5人くらいで、多くて6人といったところではないでしょうか。
ちなみに配食を担当しているとより多く食べているのではないかと一般の受刑者から目の敵にされることがありますが、全員同じ程度の量になっているかどうか刑務官がチェックする検食という工程があり、府中刑務所においては厳しい検食を行う刑務官が非常に多かったのでより多く食べていたわけではありません。
配食担当者の分を多くしているのではないかという目で見る刑務官もおり、一般の受刑者よりむしろ少ない場合もありました。食事が数少ない楽しみの1つなので、量がちょっと多い少ないといったしょうもないことでも揉めたりするものです。
なお、府中刑務所では配食担当者に対して概ね週に1回か2回延長食が支給されていました。配食作業の分だけ一般の受刑者より長く働いていることへのご褒美のようなものですが、通常は月に数回しか食べられないお菓子やジュースが週1か週2で支給されるのはとてもありがたかったです。
服役していた当時の府中刑務所での延長食は以下のような感じでした。
府中刑務所の延長食
- お菓子はコアラのマーチ、オレオビッツサンド、プチチョコチップ、プチホワイトチョコラングドシャ、チョコ&コーヒービスケット、ココナッツサブレからローテーションで1点
- ジュースは500mLペットボトルのコカコーラ、ジンジャーエールから交互に1点 (ジュースは出ない場合もある)
お菓子についてはだいたい100円前後のものをチョイスしていると見られますが、チョコ&コーヒービスケットとココナッツサブレは量が多くて食いでがあったので配食担当者の間では人気でした。