逮捕された後の実録 その5
2016年も今週で終わりということで今回は刑事施設における年末年始の様子を振り返ってみたいと思います。
刑事施設と言っても様々ありますが、留置場(警察署)と拘置所、刑務所について見てまいります。身柄が拘束されていて不自由なことには変わりありませんが、留置場とそれ以降とで大きな違いがあるのをご存知でしょうか。
警察署の留置場は平常運転
年末年始に限った話ではありませんが、警察署の留置場は生活する上での処遇が拘置所や刑務所より圧倒的に悪いとされています。されていますというか実際に悪いです。
その比較が現れている点の1つとして年末年始に支給される食べ物が挙げられますが、拘置所や刑務所では何かしら年末年始らしいものが支給される一方で、留置場は平常運転であって普段と変わらない食べ物しか出されません。
平日であれば昼食のみ領置金を支払って出前を取れるところも年末年始は注文を受ける業者が休みという場合が多いので普段より悪いとも言えます。
もともと警察署の留置場は長期間にわたって勾留される場所ではないので、食料や日用品、書籍等の購入に制限があるか全くできないようになっており、このことからも刑事施設での処遇としては最も悪い場所とされています。
とはいえ拘置所への移送は必ずしも希望を聞いてもらえるわけでもなく、事件によっては数か月間留置場に勾留される場合もよくあるのでこの処遇の悪さはそういう場合に特に効いてきます。
以前は留置場で喫煙ができたため(運動中のみ、1日2本までなどの制限はある。拘置所や刑務所は喫煙不可。)、その1点に価値を見出せる一部の喫煙者においては留置場の方が良いという人もいましたが、現在はどこの留置場でも喫煙不可なので留置場の方が良いという声はほとんど聞きません。
留置係の警察官も日本人ですので年末年始には休暇シフトになりますが、その辺りに若干の違いが出る以外は食べ物を含めて普段と何ら変わりない勾留生活を送ることになります。回覧される新聞等でしか年末年始感を味わうことはできないでしょう。
ちなみに休暇に入るのは留置係に限らず他の警察官も同様なので人手が薄くなるためか、年末年始は逮捕されて留置場に入ってくる人が明らかに減ります。
拘置所からはおせちの折り詰めやお菓子が支給される
上述のように留置場では特別な食べ物が何も支給されませんでしたが、拘置所からは年末年始で何日間かにわたっておせちの折り詰めやお菓子が支給されるようになります。
拘置所に勾留されているいわゆる未決拘禁者については普段から食料や日用品、書籍等の購入(上限額があったり購入できるものが曜日で決まっていたりする)ができるので留置場での処遇とは一変するのですが、年末年始に支給される食べ物においても留置場とは大きな違いがあります。
また、留置場ではテレビを見ることはもちろんラジオも聴けない警察署も多い中、拘置所では購入した書籍や新聞に加えて決まった時間にラジオが流されるので、不自由な勾留生活においても多少は世間の年末年始感を味わうことができるでしょう。
勾留されている間はとにかくやることがないので時間をつぶすことができる娯楽があると大きく違ってきます。
こういった違いがあるので12月に入ると多くの人が留置場から拘置所への移送を要望するようになりますが、要望通り移送されればラッキー、事件の関係などで移送が叶わないとより厳しい年末年始を過ごすことになってしまいます。
刑務所ではテレビも視聴できるようになる
刑務所での年末年始は、未決拘禁者が購入できた食料などが無いという以外は基本的に拘置所と大きく変わりません。施設によって支給される折り詰めやお菓子に違いはありますが、そういったものが支給されることには変わりなく、それ以外の3食にも年末年始っぽいメニューが入ったりします。
なお、上述した拘置所での折り詰めやお菓子も同様ですが、内容が年々貧相になる傾向があるようで、「去年はもっと良かった」といったフレーズが毎回聞こえてきます。食事に限定して見ればシャバで生活している人たちより良いものを食べているという場合もあるので、そういった声によって予算が削られていくのは仕方ないのかもしれません。
また、刑務所では反則行為調査や懲罰などによって隔離されていない限りは居室内に備え付けられているテレビを視聴することができるので、年末年始をより感じることができます。テレビもラジオも無い警察署の留置場に比べると大違いです。
さらに普段であれば21時に減灯就寝となるところが、大晦日に限っては24時まで起きていてもよく、それまでテレビを見ていることもできます。チャンネルを自由に選べる施設では居室内で何を見るか決めることになりますが、チャンネルが指定される施設では大抵が紅白歌合戦です。
24時まで起きていても良いとなると中にはテンションが上がる人もいるのですが、常に21時に寝る生活を続けていると22時や23時頃になるともう眠くなってきます。この辺りは子どもと同じということになるでしょうか。
配食担当者は年末年始も関係ない
以前の記事でも触れたように筆者は府中刑務所で配食を担当していましたが、府中刑務所だけではなく初めて服役したとき以外はどの施設でも配食担当でした。すべて違う工場に配役されているのですが、炊場が配食担当の施設では炊場に、統計が配食担当の施設では統計に、という具合でどこへ行っても配食していました。
配食担当者は年末年始だろうと配食しなければならないので朝昼夕と居室から出されて作業することになります。寒いので布団から出るのが厳しくなる一方で、年末年始の数日間ずっと居室内にいるよりは気分転換になるので良い面もありました。
こちらの記事で書いたように府中刑務所は刑務官の検食が厳しく、配食担当者のオカズを多く盛るというのは困難でしたが、横浜刑務所のときは配食担当者寄りの刑務官がいたことからその人が付いた日には検食はほとんどスルー、他の部屋の倍はあろうかというアンコを自室に入れたりもしていました。
改めて見るとしょうもないことですが、甘いものが貴重な刑務所において大量のアンコというものには価値があり、アンコでなくとも食事が何よりの楽しみという刑務所では年末年始にしか出ないメニューを多く盛れるのは役得がありました。
ちなみに府中刑務所とは違って横浜刑務所では配食担当者に延長食は出ませんでした。