弁護士にすぐに相談することはできません
盗撮などの性犯罪に限った話ではありませんが、弁護士などが開設しているウェブサイトではよく、
逮捕されたらすぐに弁護士にご相談ください!
と掲載されていますが、逮捕直後で事態が最も切迫しており、最も助けが必要な状況においては現実問題として弁護士にすぐに相談することはできません。
なぜすぐに相談できないのか
例えば盗撮で逮捕される場合、多くのケースでは以下3つのいずれかに該当します。
逮捕されるケース
- 行為中または直後に、被害者または第三者に取り押さえられて現行犯逮捕される。
- 行為中または直後に、被害者または第三者に取り押さえられ、警察署へ任意同行された後に通常逮捕される。
- 行為後(日が空く場合が多い)に、通常逮捕される。
このうち、2を除いてはそもそも逮捕されている状態ですので、弁護士どころか他人に連絡することさえ許されません。
また、2においては逮捕されるまでの間は弁護士を含め他人に連絡することはできますが、被疑事実が固まり次第逮捕されるといった緊迫した状況には変わりなく、その間に弁護士に相談するということは極めて困難です。
なので、上記は「逮捕され(て連絡できる状況になっ)たらすぐに弁護士にご相談ください!」程度の意味しかなく、実際そうすることしかできません。
それでは遅い
しかしながら、弁護士に連絡できる状況になってから連絡し相談することは、もちろん意義はありますが、そのタイミングでやっと相談できるようでは遅いと言えます。
逮捕後、身柄の拘束が解かれるにしろ続くにしろ、その前にまず弁解録取書や身上調査書、被疑者供述調書という書類を作成することになりますが、これらの書類についてはその後の捜査や処分内容を決める上で非常に重要な意味を持っています。
盗撮に関して言えば、非常に強い常習性があったりネット上で公開していたりなどといった特殊な事情が後から出てこない限り、最初に作成されるこれらの書類の内容で最終的な処分内容がほとんど決まってくることがあります。
さらに、単独の盗撮事件で報道される場合、多くのケースでは逮捕当日または翌日にその報道が集中しており、そのソースとなるのは必然的に最初に作成される供述調書ということになります。そのため、その際の供述内容にニュース性の高いものがあれば報道されやすくなり、ニュース性の低い平凡な内容であれば報道されないケースも出てくるでしょう。
なので、弁護士に相談する頃には事件そのものに関しては大勢が決しているとも言える状況になっており、それ以降に弁護士ができることと言ったら被害者との示談交渉や勾留期間の短縮・不起訴の獲得を狙うことでしょう。
それはそれで重要なことなので意義はあると上述しましたが、逮捕後の状況を左右する供述調書の作成にあたって弁護士の助言を受けることはやはり困難ですので、そこは弁護士に頼らずにあらかじめシナリオを想定しておくことが重要と言えるでしょう。
また、弁護士という立場上、逮捕される側にとって真に有用な助言というものは出てこないものですので、そういった点についても今後触れてまいりたいと思います。
余談
上述の供述調書の作成に先立って弁護士に相談することは、理屈上はできます。
それは「弁護士と相談してから話す」と対応することで、そうすれば弁護士と相談してから供述調書の作成に臨めることになります。
しかしこの対応は「弁護士が来るまで話さない」ということですので、取り調べを担当する刑事の心証が悪化すること請け合いです。
そのまま帰されるはずもなく、素直に応じていれば身柄の拘束が解かれて在宅事件になるような内容でも勾留されてしまうことになりかねませんので、勾留されてでも弁護士に相談したい特殊な事情がない限りはオススメしません。