過日、小学校教員による児童盗撮が発覚し、さらに教員同士で作っていたSNSグループ内で盗撮画像が共有されていたというショッキングな事実が判明して、教育現場における職務管理の在り方が強く問われています。
【画像】先生の平均年収はいくら? 近年、児童盗撮事件は増加の一途という体感ではありますが、教育現場に限らずこのような当事者の外見や日常行動だけからでは測り得ない個人の出来心的犯罪を、組織として未然に防ぐことができるのか否か。
この一件からは、単に個人の犯罪としてだけでなく組織のリスク管理上の問題として、大きな課題を投げ掛けられている感を強くしています。
組織がリスクを負う犯罪には、「組織ぐるみの犯罪」と「組織に属する個人の犯罪」の2種類があります。組織ぐるみの犯罪は組織内の風通しの悪さなどから言いたいことが言えずに、知らず知らずに犯罪に手を染めてしまうというケースが多く見受けられます。
未然に防ぐこと自体は決して簡単なことではありませんが、まだ社内の雰囲気から犯罪行為が行われそうな危険信号はある程度察知できるのではないでしょうか。
一方で個人型の不祥事は、表面行動だけからでは知り得ない特異な嗜好、家庭内の問題、経済的状況などが動機となっていることが多く、その未然防止はほとんど不可能であると思うのです。
筆者の企業勤務時代にも、仕事上では何の問題もなかった職場の後輩が駅構内での盗撮で逮捕され解雇される事件がありました。
後日、社会復帰した本人から事情を聞いたところ、奥さまが精神疾患で仕事ができず家庭の雰囲気が暗くなり、小さな子どもたちの世話や家事の切り回しなどにも追われて、ストレスフルの状態でおかしくなっていたと、話していました。
もしかすると本人に特異な嗜好があったのかもしれませんが、職場で身近な存在であった筆者にも家庭の事情も特異な嗜好の有無も、察知する余地はなかったのです。
事件の種類は異なりますが、企業人の個人的犯罪として昨年大きな話題となった銀行貸金庫での多額の金品盗難事件もまた、同じように「知り得ぬ陰の部分」に起因する犯行であったことが分かっています。
犯行の当事者は、上司から信頼された役職者であり、貸金庫業務に関わる仕事上の権限を与えられていました。しかし同時に、周囲が知らない部分として投資などで多額の借金を抱えていたとのことで、そのことが権限上与えられた裁量と相まって出来心を生んだのです。
もちろん、銀行の管理体制がしっかりしていればという恨みはありますが、「知り得ぬ陰の部分」の存在は如何ともしがたいのです。
筆者が銀行で管理職にあった時代には、お客さまのお金を預かっている企業としての社内管理の一環で、「職員の行動管理にも注意を払え」との指示が人事部からうるさく言われていました。
それを受けて、仕事以外の事情で悩み事や疲労がたまっている者がいないか、外部から気がかりな電話が入っている者がいないか、私生活が乱れている者がないかとかが、職場内の人事会議にて管理者間で共有されていました。
その上で、「危うい」と思しき職員とは個別面談で相談に乗ったり注意を促したりするなどして、個人犯罪の未然防止を図っていたのです。プライバシー保護を重視する昨今ではそのような管理は当然NGなので、個人犯罪の未然防止はますます難しくなっていると言えるでしょう。
All About - 2025/07/23 21:15