女子バレー全日本のエースとして活躍し、ビーチバレー界のパイオニアとなった佐伯美香さん(52歳)。五輪3大会に出場した現役時代の秘話や苦悩、指導者として活動する今などを聞いた。《NumberWebインタビュー全4回の最終回/第1回、第2回、第3回も公開中》◆◆◆ 【写真】「ユニフォームの形も今とは全然違う」ビーチでプレーする佐伯美香さんの実際の写真に、「婚姻届けが届いた」大フィーバーの全日本エース時代。学生たちを指導する現在の様子も。この記事の写真を見る。
現在は、地元・松山で指導者として活動している。2015年から松山東雲女子大学・短期大学ビーチバレーボール部の外部コーチに就任。近隣にできた石手川緑地公園ビーチコートを拠点とし練習に励んでいる。2018年には大学選手権で創部初優勝に輝き、2019年に2連覇を達成した。
佐伯の指導方針は、選手の意思決定を尊重すること。その方針に沿ってマネジメントしていくのが自分の仕事だと語る。
「私自身が経験したことは参考までに選手に話すことはありますけど、これが正解、これが合っているというふうな指導はしないですね。選手自身、向き不向きもあると思うので、選手自身がやりやすい、自分に合っていると思う方法を見つけて練習に取り組んでもらう。私はその手助けをするだけ。自分の意志を持って目標に進んでいくことが大切だと思っています」 佐伯は大学生の指導の傍ら、ビーチスポーツの普及を目的にスクールや大会を運営する『B-sport』を2018年に設立した。
「私が現役時代に少なからず結果を出せたのは、競技環境が整っていたからです。成長を遂げていく子どもたちや高校生や大学生たちにとっても、いつでもビーチバレーに取り組める環境整備が必要だと思いました」
現役時代に使っていた日本で初めて創設された屋内コート「ひめっこビーチコート」を「B-sport」のホームビーチとして再利用。2024年には、ここで育った佐伯琉史/髙内雄心組(当時松山商業高)が国スポの少年男子で準優勝、少年女子も同じ愛媛の矢田和香/森川仁湖組(当時今治精華高)が優勝に輝いた。国スポで正式競技になって以来、男女そろって決勝戦に進出したのは初めてのこと。愛媛のジュニア環境が整ってきた片鱗が結果となって表れた。
「この場所があったから、ですね。屋内ですから、学校が終わってから夜間でも活動できる。雨や雪が降っても活動ができます。あとは小学生を対象にしたビーチバレースクールも国内コートで開いているのは、日本全国を見ても少ないのではないでしょうか。愛媛では高校女子の全国大会(マドンナカップ)も長年開催されている。ビーチバレーを理解し応援してくれる人がたくさんいるのも強みですね」 この環境を強固なものとしていくには、縦と横の広がりやつながりも重要だと考えている。佐伯は「B-sport」の運営以外にも、他クラブチームやパーソナルのバレーボールスクール講師、ビーチ・マリンスポーツの普及を目指す『NPO法人日本ビーチ文化振興協会』の代表理事を務めるなど、コートの外でのネットワークも意識している。
「できる限り、自分ができると思うことには挑戦しています。求められたら断れないタイプというのもあるんですけどね。なかにはボランティアに近いものもありますが、収入は度外視。それについて家族から言われることもありますけど(苦笑)、私自身は実際に何かがどこかでビーチバレーの強化につながっていると思っていて、今はそんな日々が楽しいと思えています」
Number Web - 2025/09/06 11:05