北海道・釧路湿原国立公園周辺の大規模太陽光発電所(メガソーラー)建設で環境破壊の危機感が高まり、国が規制強化などの検討に入った。急展開のきっかけは、SNSで公開された現場の空撮動画と、それに反応したアルピニストの野口健さんのX(旧ツイッター)での発信だった。
■「届け出より広いのではないか」 「届け出上の森林開発の面積より広いのではないか」。8月26日、釧路市農林課の職員は建設現場を捉えたテレビの映像、新聞の写真をみて、ひっかかりを感じた。北海道釧路総合振興局からも、森林区域の開発状況の確認を打診され、市と道の職員8人が同29日、現地調査に入った。
衛星利用測位システム(GPS)装置を背負って歩くなどして敷地内の森林区域の面積を測定。届け出面積の2・5倍超に相当する0・86ヘクタールで、知事の許可が必要だったことが判明し、道はこの区域の工事の中止勧告に踏み切った。
9月9日には自民党国会議連が視察。自民総裁選でも焦点の一つになり、候補者からは補助制度の見直し、規制の必要性などへの言及がある。国も動き出し、24日には政府の関係省庁連絡会議が発足して初会合を開いた。
地元でくすぶり続けた問題が急展開したきっかけは、地元で希少猛禽類の保護に取り組む「猛禽類医学研究所」(釧路市)の斉藤慶輔代表が8月13日に公開した現場の空撮動画だった。
■動画には重機が樹木を倒す様子も 約3分間の動画では緑地の中で広い範囲にわたって土が露出し、重機が樹木をなぎ倒す様子などを伝えていた。翌14日に野口さんがXで動画に触れて「この凄(すさ)まじく愚かなメガソーラー計画に限らず日本中で悲鳴が上がっている」と批判。その後、現地視察に言及した投稿では閲覧数が1800万を超えた。
「(メガソーラーが)ど真ん中で話題になっていることに感謝しているが、政治家が(規制強化を)実行に移すかどうか監視しないといけない」。今月2日の視察を終えて開いた記者会見で、野口さんはこう強調した。(札幌支局長 坂本隆浩)
産経新聞 – 2025/10/03 07:31