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真実でない供述

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正直に話しても罪は軽くならない、むしろ重くなる

ドラマや小説において取り調べを行う刑事が、なかなか落ちない被疑者に対して

正直に話せば罪が軽くなるぞ

と諭すシーンがあったりしますが、現実にはそんなことはありません。

取り調べにあたって近いニュアンスのことは言ったとしても、最近では取引や利益供与となりかねないことに厳しくなっていますので、正直に話せば罪(処分)が軽くなるといったことにダイレクトに言及することはフィクションの世界の話と言えます。
そもそも刑事に罪(処分)を軽くする権限はありませんので、仮に言っていたとしても口から出まかせに近いものがあります。

犯行動機から余罪に至るまですべてを正直に話したところで刑事が「正直に話したからこれは勘弁してやろう」などと考えるわけはなく、別個に証拠固めされて新たに立件されるケースも出てくるでしょう。

しかし、取り調べにおいて嘘ばかり言っていても状況が悪化するだけですのでそういうわけにもいきません。

ではどうするか?

捜査の初期段階において全容を把握しているのは自分だけ(共犯関係等がある場合は除く)ですので、その内容と質問ごとに「どこまで開示するか?」といったことをその都度熟慮して回答する必要があります。

具体的には以下となります。

回答基準

  1. 処分内容に影響する事実で、調べてもわからないことは最初から真実を言わない。
  2. 処分内容に影響する事実で、調べればわかることは(少なくとも)最初は真実を言わない。
  3. 処分内容に影響しない事実は真実を言う。

 処分内容に影響する事実で、調べてもわからないこと

若干誇張していますが、厳密には「調べて裏取りするのが(客観的に考えて)困難なこと」となるでしょうか。

例えば「毎日のように盗撮していたがデータとして残していたのは週に1,2回分程度」といったケースで考えますと、それを正直に話したら非常に強い常習性があるとされ、データがなくとも自白した部分が強調されて処分内容に影響してくるでしょう。
(週に1,2件でも常習性はあるのではという議論もありますがここでは比較例としています)

このケースでは後日家宅捜索によりPCやハードディスクなどが押収されて調べられたとしても週に1,2回分程度のデータしか出てこないので、はじめからその頻度で供述しておけばデータによって裏付けられて終わる話です。

調べてもわからないことを正直に話して不利な状況を招くようなことをする必要はありません。

ただし、このケースに関して補足すると、Suica等のIC乗車券の利用履歴などから常習性を立証するといったこともできますので、そういったものの利用には注意が必要です。

処分内容に影響する事実で、調べればわかること

これも厳密には「調べれば後日わかることだが初期段階ではわからないこと」となるでしょうか。

例えば「盗撮して記録した画像や映像をネット上で公開(または販売)している」といったケースで考えますと、これも正直に話したら結構なニュース性のある事件ということになって報道されかねません。
弁護士にはすぐに相談できないの記事で触れたように、最初に作成された供述調書の内容が報道に影響してくることも考慮するとはじめから正直に話すのは難しいと言えます。

しかし、最近ではこういったケースも珍しくなくなったことで取り調べでは必ず質問されることと言えますが、一方で公開(または販売)しているデータを常に持ち歩いているという人はいないでしょうから、後日PCやハードディスクなどを押収して調べてみないことには判明しにくいものです。

こういう場合、「公開(または販売)はしていない」と答えれば少なくとも最初に作成される供述調書にはニュース性のある内容を盛り込んでしまうことは避けられますが、PCやハードディスクなどが押収されて調べられた際にネット上での公開(または販売)が判明したときに最初の供述は嘘だったということになってしまいます。

そのとき被疑者が「転載(または転売)であって自分で撮影したものは公開(または販売)していない」という意味だと言った場合、刑事はどう感じるでしょうか。

もちろん「お前が撮影したものだろう」と疑うことでしょうが、そうであることを立証するのは自分たちの仕事ですので、証拠が押さえられなければ転載(または転売)ということにするしかありません。

また、そこまで捜査が進んでいたら改めて報道されるといった可能性は少なくなっていると言えます。

なお、このケースに関しても補足しておくと、この対応は自分で撮影したものを公開(または販売)しているという証拠が押さえられないことが前提になっており、それらのマスターデータ等は立証に十分な証拠になりますのでこの点については別の機会に触れたいと思います。

処分内容に影響しないこと

これはそのままで、わざわざ嘘を言う意味はありませんので正直に話しましょう。

例えば「盗撮に使用したカメラはどこで買ったのか」といった質問に対して、本当は家電量販店で買ったのにネット通販だと話しても両者にたいした違いはありません。

素直に応じる姿勢が重要

上述したように「刑事に罪(処分)を軽くする権限」はなく、実際に処分を決めるのは検察官となりますが、最初に作成された供述調書を含めた書類や記録をその検察官に送る際に、刑事から送致意見(処分意見)というものが付けられます。

厳重処分・相当処分・寛大処分・しかるべき処分、と送致意見には濃淡があり、罪状や情状などが悪いほど厳しい意見になりますが、最終的に処分を決めるのは検察官とはいえこの意見もなかなか無視できたものではありません。

とすればなるべく寛大な意見を付けてもらいたい側からしたら、その意見を考える刑事の心証を最初から悪化させることは望ましくなく、少なくとも最初は素直に取り調べに応じていると思ってもらうことが重要になります。

その点を考慮しなくてよいのであれば黙秘でも何でもすればいいのですが、逮捕の根拠となっている被疑事実に争いがなく、なるべく寛大に済ませてほしい場合が多い盗撮事件の場合は黙秘して得られるメリットはあまりありません。

とはいえすべて正直に話すばかりではデメリットが大きくなりますので、捜査の進捗に応じてダメージを減らすことをその都度考慮していくことが必要になってきます。

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