先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
元教諭、別高校での盗撮画像を保存(山形新聞)
勤務していた村山地区の県立高校で女子生徒のスカート内を盗撮したとして、懲戒免職処分となった50代の男性元教諭が、別の勤務先の高校で盗撮したとみられる画像を保存していた疑いが浮上し、新庄署は児童買春・ポルノ禁止法違反(単純所持)容疑での摘発を検討していることが16日、捜査関係者への取材で分かった。盗撮に関する県迷惑行為防止条例違反での摘発は見送るとみられる。
元教諭は小型カメラをサンダルに忍ばせ、授業中などに複数の女子生徒の両足の間に差し入れるようにして盗撮したとして、県教育委員会から昨年11月、懲戒免職処分を受けた。被害に遭った生徒の保護者が県警に相談して発覚した。
新庄署は元教諭から任意で事情を聴き、自宅のパソコンに保存されていた画像などを調べた。10年ほど前から同様の盗撮を繰り返していたことを認めており、捜査の中で、盗撮が発覚した勤務先とは別の高校で隠し撮りしたとみられる女子生徒の裸の画像を発見した。児童買春・ポルノ禁止法違反に当たるとの見方を強め、捜査を進めている。
一方、学校内での盗撮については、県迷惑行為防止条例違反での摘発が検討されたが、県警は見送る考えだ。同条例は不特定多数の人が利用する「公共の場所」での盗撮行為などを禁じている。学校施設は基本的に、生徒や教員など特定の人が利用する施設のため、元教諭の行為はこの規定に該当しないと判断したとみられる。
引用元 : 山形新聞 2020年2月17日 7時49分配信
以前の記事で取り上げていた高校の教員による学校内でのスカート内盗撮事件の続報ですが、迷惑防止条例違反での立件は見送って別件の児童ポルノの所持容疑に切り替えるようです。先の記事で迷惑防止条例違反での検挙はできない可能性があると述べていたところ、やはりその通りになりました。
事件の現場となった山形県の迷惑防止条例ではスカート内盗撮は公共の場所における行為でないと処罰の対象にならないので、公共の場所に該当しない学校でのスカート内盗撮は検挙できないのではと見ていましたが、正にその理由で検挙を見送るようです。
山形県 迷惑行為防止条例 第3条
- 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から又は直接人の身体に触れること。
- 衣服等で覆われている人の下着又は身体をのぞき見し、又は撮影すること。
- 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、正当な理由がないのに、公衆が利用することができる浴場、便所、更衣場その他公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所において当該状態でいる人の姿態をのぞき見し、又は撮影してはならない。
なお、お咎め無しの可能性まで考えていましたが、捜査の過程で調べた元教諭のPCから児童ポルノと疑われる画像が出てきたようで、迷惑防止条例違反は諦める代わりに児童ポルノの所持に切り替えて検挙する方針のようです。
10年程前から盗撮を繰り返していたと供述しているようで捜査の中で見つかった児童ポルノと思しき画像も盗撮により製造したと疑われているようですが、その画像が児童ポルノと認められれば所持については現在進行形ですので検挙することが可能です。
ただし、盗撮による児童ポルノの製造を禁じる条文は2014年に新設されているので今回PCから見つかった画像がそれより前に盗撮製造した物である場合や、それより後でも3年の公訴時効を過ぎている場合は製造に関して罰することができないと思われ、容疑としては現在進行形だった児童ポルノの単純所持に留まると考えられます。
「別の高校で隠し撮りしたとみられる女子生徒の裸の画像」がもし割と最近の盗撮製造による物でそれが裏付けられれば公判請求される可能性も無くは無いと思われますが、そうでなければ児童ポルノの所持のみということで厳しくても50万円までの罰金といったところではないでしょうか。
徳島市で盗撮の元病院内科医に罰金60万円/徳島簡裁
徳島区検は、女性のスカート内を盗撮しようとしたとして、県迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕された徳島市北島田町の元病院内科医の男(38)を同罪で略式起訴した。簡裁は罰金60万円の略式命令を出し、19日までに納付された。
起訴状などによると、昨年9月29日午前1時55分ごろ、徳島市富田町の雑居ビルのエレベーター内で、市内の30代女性のスカートの中に小型カメラを入れ、下着や体を盗撮しようとした。同21~26日にも市内で女性のスカート内にスマートフォンのカメラを向けるなど、4件の盗撮行為に及んだ。
引用元 : 徳島新聞 2020年2月20日 10時0分配信
元医師によるスカート内盗撮事件について罰金の略式命令が出て納付したというニュースです。元病院内科医という肩書きなのは事件を起こした後に解雇されたためなのでしょうか。
昨年9月29日の事件については得物が小型カメラ、それ以外の日についてはスマホとわざわざ別に表現されているので前者は鞄や靴などに仕込んだのか、又は何かの形を模したカモフラージュカメラなどを使っていたのかといったことを窺わせますが、雑居ビルのエレベーターのような狭い密室でしかも深夜2時ともなれば女性としても警戒するのが当たり前でしょう。状況判断が杜撰だったのかもしれません。
徳島県の迷惑防止条例では通常の盗撮の罰則が「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされているので、この事件で科されている罰金60万円はこれを超えています。おそらく常習として、又は複数の事件で略式起訴されたのではと思われます。
徳島県 迷惑行為防止条例 第16条
- 第四条の規定に違反した者
- 第八条第一項の規定に違反した者
- 第十三条第一項の規定に違反した者
常習として第四条、第八条第一項又は第十三条第一項の規定に違反した者は、一年以下の徴役又は百万円以下の罰金に処する。
初犯でも余罪が大量だったりすると常習盗撮と判断されるケースがありますが、常習累犯窃盗などと同じように基本的には二度三度と捕まった末に常習となる例が多く、曲がりなりにも医師だったと思うとそれだけの前科があったとは考えにくいところです。
「起訴状などによると」がどこまでに掛かっているのか判然としませんが、「4件の盗撮行為」という表現があるのでこれら全て略式起訴されてトータルで60万円ということなのかもしれません。
逮捕されるきっかけとなった盗撮行為だけでなく、得物のカメラや自宅のPC等から余罪の証拠が見つかってそれらの日時や場所、被害者などが裏付けられれば初犯でも複数の事件で立件されるのはあり得ることです。そうした場合は30万円といった定番の罰金では済まされないことになるでしょう。
女子学生を盗撮した大学講師を逮捕‥トイレに小型カメラを設置 名古屋
自分が勤務する名古屋市内の大学の校舎の女子トイレにカメラを設置し、女子学生を撮影した疑いで、大学講師の男が逮捕されました。
逮捕されたのは、名古屋市中村区に住む大学講師(38)です。
警察によりますと、容疑者は、1月17日、名古屋市内にある勤務先の大学の女子トイレに小型カメラを設置し、19歳の女子学生を撮影した愛知県の迷惑行為防止条例違反の疑いが持たれています。カメラに気付いた女子大生が大学に相談し、職員が警察に通報、学校内の防犯カメラの映像などから、容疑者の関与が浮上しました。
警察の調べに対し、容疑者は、「間違いありません」と容疑を認めているということで、警察が動機などを追及しています。
引用元 : CBCテレビ 2020年2月21日 12時2分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
大学講師によるトイレ盗撮事件です。見たところ盗撮目的でトイレにカメラを設置した盗撮準備行為には留まっておらず被疑者が勤務している大学の女子学生を盗撮するまでに至っているようです。仕掛けられていたカメラに気付いたのもおそらくこの盗撮被害に遭った女子学生でしょうか。
被疑者特定の要因は大学内の防犯カメラ映像などとされています。トイレへの出入りがわかる位置に防犯カメラが無くても複数のカメラの記録を通してチェックすれば足取りは追えただろうと思われます。映っていたのが部外者だったら容姿が分かっても誰なのかわからなくて捜査が難航していたかもしれませんが、内部の犯行ならすぐに分かったことでしょう。
なお、愛知県の迷惑防止条例では盗撮目的でカメラを向けたり設置したりする盗撮準備行為も処罰の対象として規定していますので、女子学生が盗撮される前にカメラに気付いて盗撮に至らなかった場合でも迷惑防止条例違反は免れません。
愛知県 迷惑行為防止条例 第2条の2
- 人の身体に、直接又は衣服その他の身に付ける物(以下「衣服等」という。)の上から触れること。
- 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
- 前号に掲げる行為をする目的で、写真機、ビデオカメラその他の機器(以下「写真機等」という。)を設置し、又は衣服等で覆われている人の身体若しくは下着に向けること。
- 前三号に掲げるもののほか、人に対し、卑わいな言動をすること。
何人も、学校、事務所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用することができる場所又は乗物(公共の場所又は公共の乗物に該当するもの及び次項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
- 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
- 前号に掲げる行為をする目的で、写真機等を設置し、又は衣服等で覆われている人の身体若しくは下着に向けること。
何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
- 人の姿態をのぞき見し、又は撮影すること。
- 前号に掲げる行為をする目的で、写真機等を設置し、又は人の姿態に向けること。
この事件では現場がトイレで、風呂やトイレ、更衣室などでの盗撮においては公共の場所に限られていませんので第3項第1号に該当していると考えられます。もし盗撮する前に発覚したとしても盗撮準備行為として同第2号に違反します。
今後余罪の有無も含めて調べると見られますが、余罪や前科等が出てくるようなら別として、この事件だけで見れば罰金刑に留まると思われ額としては30万円から50万円といったところではないでしょうか。