先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
“警官にかみつき”男を逮捕 新幹線車内で盗撮疑われ 駅で待ち受けた警官ともみ合い暴れる 北九州市
23日夜、JR小倉駅の新幹線ホームで、盗撮の疑いがある男が逃走を図って警察官にかみつき、現行犯逮捕されました。
警察によりますと23日午後11時半ごろ、博多から小倉に向かっていた新幹線の車内で、「盗撮を目撃した」と110番通報がありました。警察が小倉駅のホームで待ち受け、盗撮が疑われる男に事情を聴いていたところ…。
【記者】「逃げ出そうとした男と警察官はもみ合いとなり、一緒にこちらの線路に転落しました。その後男は暴れ、警察官の左太ももを噛んだということです」
公務執行妨害の現行犯で逮捕されたのは、北九州市小倉北区の自称会社員(35)です。容疑者は酒に酔っていたということで、「間違いありません」と容疑を認めています。
警察は盗撮の容疑についても裏付けを進めています。
引用元 : テレビ西日本 2020年2月24日 20時0分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
盗撮を疑われた被疑者が逃走しようとしたところ警察官ともみ合いになった末に警察官の太ももを噛んだという事件です。この時点では盗撮の事実が確認できていなかったと思われますが、警察官ともみ合いになって暴れて噛んだことで逮捕容疑としては公務執行妨害となっています。
新幹線の車内というと余程混雑していなければ基本的に着席しているでしょうからあまり盗撮ができそうな環境では無さそうに思えますが、中央の通路を歩く人を狙ったということなのでしょうか。在来線と違って対面からスカート内を狙うこともできなさそうです。言い方を変えると盗撮に執着しているような人であっても無理に盗撮しようと思える程のメリットが無いように感じますが…。
「間違いありません」と容疑を認めているというのはおそらく公務執行妨害の件と思われ、盗撮に関する認否が不明なので勿論否認するという可能性もありますが、盗撮を疑われて警察官から逃げ、暴れた上に噛んだというのは一般的に見てクロだからこその往生際だという風に思えます。
盗撮の罪から逃れようとしてより重い罪を犯してしまう例はたまに見られますが、この事件も正にそうしたケースであって公務執行妨害という軽くない罪に発展してしまっています。しかも警察官に対して怪我を負わせている可能性もありますのでかなり厳しい取り扱いになるでしょう。
刑法 第95条
公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
ここからさらに盗撮まで追加される可能性がありますので50万円までの罰金で済めば御の字ということになるかもしれません。厳しければ公判請求されることもあり得るのではないでしょうか。
カメラ仕込んだ靴を女子高校生のスカートの下に…62歳男「下着が見たくて盗撮した」 列車内で警戒中の警察官が現行犯逮捕 香川
小型カメラを仕込んだ靴を女子高校生のスカートの下に差し入れた疑いで、62歳の男が逮捕されました。
香川県迷惑行為等防止条例違反の疑いで逮捕されたのは、三豊市高瀬町の会社員の男(62)です。
警察によると、男は2月25日の午前7時半すぎJR多度津駅から善通寺市の金蔵寺駅に向かう列車内で、小型カメラを仕込んだ靴を女子高校生のスカートの下に差し入れた疑いが持たれています。
警察にはこの2週間前に、別の女性から、「列車内で盗撮をしているような男がいる」と通報がありました。そして、警戒していた警察官が男の犯行を目撃し現行犯逮捕しました。
警察の調べに対して男は、「下着が見たくて盗撮した」と容疑を認めています。
引用元 : KSB瀬戸内海放送 2020年2月25日 14時32分配信
いわゆる靴カメによる女子高生のスカート内盗撮事件です。被疑者は還暦を過ぎた男性で、本人の1/4程の年齢の女子高生のスカートの中を盗撮しようとして捕まったと思うと物悲しく感じてしまいます。
この事件で得物として実際に使用していたと思われる靴と小型カメラが公開されていますが、靴カメと言っても小さな穴を開けてレンズだけ出すような凝った細工が施された得物ではなくボイスレコーダーのような形の薄いカメラをスニーカーの紐で足の甲部分に固定しただけのようでした。
つまりレンズどころかカメラ自体も丸見えなのでスマホを足の甲に付けているのと大きな違いはありません。「列車内で盗撮をしているような男がいる」との通報があって警察官が張り込んでいたようですが、これでは通報されても何も不思議ではないと思える雑な手口なだけに高齢の被疑者というのが余計悲しく思えます。
なお、この事件の逮捕容疑は「小型カメラを仕込んだ靴を女子高校生のスカートの下に差し入れた疑い」とされており盗撮準備行為に留まっていることが窺われますが、香川県の迷惑防止条例では盗撮目的でカメラ等を向けたり設置したりといった行為への規制が明記されておらず、どの規定に違反したことで逮捕したのか判然としません。
香川県 迷惑行為等防止条例 第3条
- 公共の場所又は公共の乗物において、人の性的しゅう恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服の上から又は直接、人の身体に触れること。
- 人の性的しゅう恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又は公共の乗物にいる人の衣服で覆われている下着又は身体を見、又は撮影すること(次号に規定する方法により行われる場合及び第4号に規定する場所にいる人に対して行われる場合を除く。)。
- 正当な理由がないのに、写真機等を使用して衣服を透かして見る方法により、公共の場所又は公共の乗物にいる人の衣服で覆われている下着又は身体を見、又は撮影すること(次号に規定する場所にいる人に対して行われる場合を除く。)。
- 正当な理由がないのに、公衆が利用できる場所であり、かつ、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所の人の姿態を撮影すること。
- 前各号に掲げるもののほか、公共の場所又は公共の乗物において、公衆に対し、人の性的しゅう恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること。
実際に盗撮にまで及んでいて盗撮準備行為に留まっていないということならそれまでですが、例えば東京都では「人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。」として明記されているような盗撮準備行為への規制が香川県の迷惑防止条例にはありません。
事件の現場となった電車内が公共の場所に当たりますので卑わいな言動として第5号の違反ということは考えられるかもしれません。実際に盗撮しているのであればそのまま第2号に該当しますので可能性としてあり得るのはこのどちらかでしょうか。
ちなみに香川県では盗撮準備行為への規制も含めた盗撮に関する規制強化のための条例改正に向けて動いているようなので遅くとも年内には改正条例が公布施行されるだろうと思われます。
この事件については実際に盗撮したのかどうかによって微妙に変わってくるかもしれませんが、靴カメという手口でも初犯なら厳しくても30万円までといったところではないでしょうか。靴や鞄を用いるなど手口が悪質で常習性も窺われたりする場合は50万円などの高額になるケースもありますが、この事件ではそこまでに至らないように感じます。
電車の座席にいた女子高生3人のスカート内盗撮の疑い…逮捕の22歳法務局職員が不起訴処分に
列車内で女子高生のスカート内にスマートフォンのカメラを向けたとして逮捕された名古屋法務局津島支局の22歳の男性職員について、名古屋地検は28日付けで不起訴処分としました。
不起訴処分となったのは、名古屋法務局津島支局の22歳の男性職員です。
男性職員は去年12月、朝と夜、2回に分け名鉄尾西線の列車内で座席に座る女子高生(当時18)3人のスカート内にスマホのカメラを向けた疑いで逮捕されていました。
これまでの調べに対し、男性職員は容疑を認めた上で「スカート内の下着が見たかった」と供述していました。
名古屋地検は28日付けで男性職員を不起訴処分としました。地検は、不起訴の理由を明らかにしていません。
引用元 : 東海テレビ 2020年2月28日 20時35分配信
以前の記事で取り上げていた法務局職員による盗撮未遂事件の続報です。どうやら罰金でもなく不起訴となったようですが、地検が不起訴の理由は明らかにしていないとのことです。
容疑自体は認めており、盗撮するまでには至っていなかったとしても愛知県の迷惑防止条例では盗撮目的でスカート内にカメラを向ける盗撮準備行為だけで処罰の対象になりますので単純にお咎め無しになったわけではないかもしれません。
愛知県 迷惑行為防止条例 第2条の2
- 人の身体に、直接又は衣服その他の身に付ける物(以下「衣服等」という。)の上から触れること。
- 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
- 前号に掲げる行為をする目的で、写真機、ビデオカメラその他の機器(以下「写真機等」という。)を設置し、又は衣服等で覆われている人の身体若しくは下着に向けること。
- 前三号に掲げるもののほか、人に対し、卑わいな言動をすること。
何人も、学校、事務所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用することができる場所又は乗物(公共の場所又は公共の乗物に該当するもの及び次項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
- 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
- 前号に掲げる行為をする目的で、写真機等を設置し、又は衣服等で覆われている人の身体若しくは下着に向けること。
何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
- 人の姿態をのぞき見し、又は撮影すること。
- 前号に掲げる行為をする目的で、写真機等を設置し、又は人の姿態に向けること。
この事件の場合は第1項第3号に該当していることが明らかなのでそれでも不起訴になっている理由としてあり得るのはまず被害者と示談ができたということでしょうか。盗撮絡みの迷惑防止条例違反は非親告罪ではありますが、被害者と示談ができれば不起訴が見込まれる罪でもあります。
ただ、成人していると言っても被疑者が22歳とまだ若く初犯と思われ、スカート内にスマホを向けただけで盗撮まではしなかったということなら謝罪や反省の態度次第では示談が無くてもお咎め無しで済ませてもらうことはあり得るかもしれません。
示談ができたとしてもこの年齢だと示談金を用意したのは親などでしょうし不起訴になっても逮捕歴は残っているので再犯したら次は今回のようにはならないでしょう。これが当たり前と思わず懲りて足を洗わなければなりません。スカート内にカメラを向けただけの盗撮準備行為で罰金を科されているケースはありますので甘く見ない方が良いのではないでしょうか。