先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
官舎で盗撮 県職員を懲戒免職
先月、県職員の女性が住む南相馬市の官舎の部屋の合鍵を盗んで部屋に忍び込み、カメラを設置して盗撮したとして略式起訴された同僚の男性職員ついて、福島県は27日付けで懲戒免職の処分にしました。
懲戒免職の処分を受けたのは、県の相双地方振興局出納室に勤務していた元主任主査(42)です。
元主任主査は、先月、同僚の女性職員が住む南相馬市の官舎の部屋の合鍵を職場から盗み出し、女性の部屋に忍び込んでカメラを設置して盗撮したとして、県の迷惑行為等防止条例違反などの罪で、略式起訴されていました。
県が聞き取り調査を行ったところ、元主任主査は、「女性に一方的に好意を持っていた。自分が住む官舎の部屋の合鍵を担当の職員に貸してもらったときに、合鍵の入手方法を把握した。盗撮する目的で女性の部屋の合鍵を盗んだ」と話したということです。
これを受けて県では、27日付けで元主任主査を懲戒免職の処分にするとともに、鍵を管理する部署の管理職などに対し、訓告や厳重注意を行ったということです。
福島県人事課の沖野浩之課長は「今回のような官舎の鍵が盗まれて侵入される事案は女性職員に不安を与える大変悪質なもので、再発防止を徹底していきたい」と話していました。
引用元 : NHK 2018年6月27日 19時57分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
先月取り上げていた事件の続報で、捕まった元主任主査は懲戒免職となったようです。官舎で盗撮という見出しですが、実態は窃盗と住居侵入も加わっているので少し大きめの罰金を科されていました。
公務員に限らず行政処分や所属企業からの処分、社会的な制裁といったものは勤務中の、あるいは業務に関係する範囲での犯罪かどうかによって厳しくなる場合も多くあります。仕事中に社内で同僚や顧客等を盗撮したのと、勤務時間外に社外で一般の人を盗撮するのでは処分を決める責任者からの見え方が違ってくるのは当然です。
逆に刑事処分は、原則として犯した罪自体に対する罰ということになりますので、例えば同僚に対する盗撮だから罰金50万円、知らない人に対する盗撮だから罰金30万円といったようなことにはなりません。
もちろん犯罪に至る経緯は十人十色で、上の例で言う被害者が同僚か知らない人かという点以外の条件が全て同じといった比較はまずできないわけなので、結果として勤務中の犯罪だから罰が重くなった、被害者が同僚だから罰が重くなったということはあり得ます。
もっとも、この事件の場合は職場から合鍵を盗み出し、官舎とはいえプライベート空間である自宅内へ侵入した上で盗撮したということで、勤務中だったかどうかという点ではどちらも踏んでいるハイブリッドと言えます。ここまでやられては懲戒免職もやむなしでしょう。
「盗撮目的で侵入」 容疑で下関市職員を逮捕 福岡県警 /山口
福岡県警門司署は28日、下関市東観音町、下関市非常勤職員(33)を建造物侵入容疑で現行犯逮捕した。容疑は、同日午後6時20分ごろ、北九州市門司区の市立門司図書館新門司分館に正当な理由なく侵入したとしている。
同署によると、図書館職員から「スマートフォンをかざして女性を盗撮しようとしている行為を見た」と通報があり、署員が駆けつけると、同館駐車場にいた容疑者が「盗撮目的で図書館に入った」と話したという。
下関市は29日、記者会見して謝罪した。容疑者は市の放課後児童クラブ支援員で、今年4月から市内の王司児童クラブで勤務していた。勤務態度に問題は無かったという。
引用元 : 毎日新聞 2018年6月30日配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
盗撮絡みの事件ですが、容疑は迷惑防止条例違反ではなく建造物侵入のみでの現行犯逮捕とのことです。被疑者本人が盗撮目的で立ち入ったと認めているので建造物侵入には違いありません。
逮捕容疑に迷惑防止条例違反が含まれていないのは、福岡県の迷惑防止条例で定義される盗撮行為に該当していないためではないかと思われます。
市などによりますと容疑者はきのう夕方、女性を盗撮する目的で北九州市内の図書館に入った建造物侵入の疑いが持たれています。本人のスマートフォンから女性の足元が映った写真が見つかっていて、調べに対し容疑を認めているということです。
引用元 : tysテレビ山口 2018年6月29日 20時5分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
図書館職員からの通報は「スマートフォンをかざして女性を盗撮しようとしている行為を見た」とのことなのでスカート内などにスマホを差し入れるような盗撮の瞬間は見ていない可能性があり、被疑者のスマホに記録されていたデータでも足元の写真だけとなると少なくとも今回の事件で迷惑防止条例違反とするのは厳しいかもしれません。
福岡県 迷惑行為防止条例 第6条
- 他人の身体に直接触れ、又は衣服の上から触れること。
- 前号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、正当な理由がないのに、前項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。
- 通常衣服で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着をのぞき見し、又は写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下この条において「写真機等」という。)を用いて撮影すること。
- 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること。
何人も、正当な理由がないのに、第一項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。
- 公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影すること。
- 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること。
図書館は公共の場所と解釈できますので迷惑防止条例違反の適用を検討するにあたって有力なのは第2項第1号ですが、図書館職員の目撃証言や被疑者のスマホに記録されていたデータではこうした行為に及んでいたとは言えないということになるでしょうか。
もっとも建造物侵入は成立しているので、そこまでして迷惑防止条例違反の追加を狙うかどうかは今後の取り調べにおける被疑者の態度次第ということになるかもしれません。
初犯で建造物侵入のみなら公判請求は無いでしょうから上限でも罰金10万円、放課後児童クラブ支援員の非常勤職員という立場なので処分のハードルは低いと思われ、刑事処分より先に懲戒免職等の社会的制裁があればそれを踏まえて不起訴ということもあり得るでしょう。
女性のスカート内をスマホで盗撮、所沢のコンビニで 容疑の会社員を逮捕 スマホに別の女性動画も
埼玉県の所沢署は28日、県迷惑防止条例違反の疑いで、東京都練馬区豊玉中3丁目、会社員の男(27)を逮捕した。
逮捕容疑は、4月14日午前6時15分ごろ、所沢市内のコンビニエンスストアで、市内に住む20代女性の背後から、スカート内にスマートフォンを差し入れ、盗撮した疑い。
同署によると、盗撮に気付いた女性が店員に助けを求めると、男は立ち去ったが、店内の防犯カメラの映像などから割り出された。男は「盗撮は間違いない」と容疑を認めているという。男のスマートフォンには別の女性を盗撮したとみられる動画が残っており、同署で余罪を含め調べている。
引用元 : 埼玉新聞 2018年6月30日 0時11分配信
盗撮行為の実行から約1か月半後の逮捕となる後日逮捕事案です。後日逮捕の要因に関する記事でも挙げているような典型的なケースと言えるでしょう。
「盗撮に気付いた女性が店員に助けを求めると、男は立ち去った」という記述から被害者に気付かれたことは被疑者も知っていたと思われますが、この約1か月半は気が気ではない心境だったのでしょうか。あるいは、この程度で警察は動かないだろうと高を括っていたのでしょうか。
普通の神経ならばヤバいと思ったら余罪が発覚するきっかけになりかねないデータ等は削除するなり隠匿するなりしますので、逮捕されるまでそうしたデータをスマホに記録したままだったということはやはり甘く見ていたのかもしれません。
コンビニで女性の背後からスマホを差し入れる姿は誰が見ても盗撮犯そのものですが、午前6時15分という通勤通学の時間帯としてはやや早めの時間で店内には他に誰もいなかったのでしょうか、大胆にも実行に移してしまったようです。
残念ながらスカート内にスマホを差し入れる情けない姿や被害者に気付かれて立ち去る様子まで防犯カメラに捉えられていたと見られ、楽観視していたもののあえなく後日逮捕ということになりました。
盗撮に気付かれ、現場からは逃げ果せても甘い見通しが持てる時代ではないと認識するべきでしょう。場合によっては終始誰にも気付かれていないと思っていても、実は気付いていた人が密かに通報して知らぬ間に事件化していることも珍しくありません。
余罪の裏付けができて別途立件されると話が変わってきますが、現時点では悪質性その他で被疑者にとってさらに不利になる事情が無さそうですので、この事件の内容なら厳しくてもせいぜい罰金30万円程度といったところではないでしょうか。