先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
出身校の女子トイレに侵入 容疑の市職員停職6カ月 横浜市
横浜市は6日、出身高校の女子トイレ内に侵入し、個室内を盗撮したなどとして警察に逮捕された鶴見区戸籍課の男性職員(22)を同日付で停職6カ月の懲戒処分にした。
市によると、男性職員は今年1月31日、恩師に会うため東京都内の出身高校を訪れた時に女子トイレに侵入。女子生徒が入って来たため個室に身を隠したという。個室内からスマートフォンでトイレ室内や女子生徒が入った個室内を撮影したところを女子生徒に見つかり、東京都迷惑防止条例違反(盗撮)と建造物侵入の疑いで現行犯逮捕された。
男性職員は市などに対し、「興味本位でトイレに入った。撮影は(生徒が出て行ったか)確認する目的で、生徒を撮影する意図はなかった」と説明している。
引用元 : 毎日新聞 2019年8月6日 18時12分配信
区役所に勤める公務員による建造物侵入及び盗撮の事件です。恩師に会うために母校を訪れ、その際に女子トイレへ侵入した後に入ってきた女子生徒を盗撮したとされていますが、女子生徒を盗撮する意図は無かったと弁解しているようです。
トイレへ入ってきた女子生徒が出て行ったか確認する目的であって盗撮目的ではないというのは誰が聞いても苦しい言い訳ですが、トイレへの立ち入り自体は良からぬ目的だったことを認めています。興味本位とは言うものの何かしら性的な興味があったことが窺われます。
しかし、他の報道によると既に不起訴で刑事処分としては決着しているようです。
発見した女子生徒から連絡を受けた高校が通報し、職員は現行犯逮捕された。2月25日に同条例違反と建造物侵入の罪で書類送検され、3月12日に不起訴処分となった。
引用元 : 神奈川新聞 2019年8月6日 19時30分配信
1月31日に現行犯逮捕されているものの2月25日に書類送検ということは、その間が勾留期限より長いのでおそらくすぐに釈放されて在宅事件になっていたのではないでしょうか。
送検容疑としても迷惑防止条例違反と建造物侵入となっていますが、本当はトイレ盗撮の意図がありスマホからもそうした証拠が出てきていれば不起訴にはしづらい事件内容と思われますので、これで不起訴になっているのは被害者と示談できたのか、あるいはトイレ盗撮の意図があったというには微妙なデータしか出てこなかったのかもしれません。
良からぬ目的があってトイレへ侵入したことは認めていてこれは確実なので、迷惑防止条例違反については証拠不十分、建造物侵入については罰金にしても上限が低いのでこれへのお叱りのみで不起訴になったということもあり得るところです。
刑法 第130条
仮にそうだとしても、本当に女子生徒のトイレ盗撮をする目的は無かったのか、偶々うまく撮れなかったことで結果的に有利に事が運んだのか、疑問は尽きないところですが、盗撮被害者が高校の女子生徒ですのでトイレ盗撮していれば児童ポルノの製造として30万円から50万円程度の罰金を科されていた可能性もあります。
高校時代を過ごした母校の女子トイレに性的な興味があったのかもしれませんが、トイレ盗撮の意図が無かったのなら尚更女子トイレに侵入するなどといった行為は慎むべきでしょう。
女子高生盗撮容疑で逮捕の男、名誉毀損容疑で追送検 京都府警中京署
電車内で盗撮した女子高生のスカート内の動画を、被害者が同意したと偽りインターネットサイトに掲載したとして、京都府警中京署は8日、大阪府高槻市月見町の無職容疑者(36)を名誉毀損(きそん)容疑で追送検した。府警によると、押収したパソコンには盗撮したとみられる動画が約1000本保存され、約60本をサイトに掲載。1本500円で販売し、今年2月までの1年3カ月で約800万円の収益を得たという。
容疑者は昨年5月5日、京都市などを走る電車内で16歳の女子高生2人のスカート内をスマートフォンで撮影したとして、先月30日に京都府迷惑行為防止条例違反容疑で逮捕されていた。追送検容疑は、撮影した動画をネットの販売サイトに掲載する際、2人が撮影に同意したかのような記載をして名誉を傷つけたとしている。
府警によると、容疑者は容疑を認めているという。主に京都府内の電車で女子中高生を狙っていた。
引用元 : 毎日新聞 2019年8月8日 20時0分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
前回の記事で取り上げていた女子高生のスカート内盗撮及び盗撮動画の販売に関する事件の続報のようです。その動画を販売する際に被害者が撮影に同意していたとする記載をして被害者の名誉を傷付けたという名誉毀損の疑いで追送検されました。
掲載を避けたいフレーズとしても以前の記事で触れているように盗撮動画の販売に絡んだ名誉毀損事件は過去にも同様のケースがあります。要するに、被写体同意の上で撮影したと言うことでそれを見た人に被写体(被害者)が盗撮動画に「出演」するような人物であるという誤解を生じさせることで被写体(被害者)の社会的な名誉を傷付けたという理屈です。
刑法 第230条
- 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
- 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
被写体が撮影に同意していればそれが盗撮モノだろうと痴漢モノだろうと強姦モノだろうと、いわゆるヤラセや仕込みということになります。市販されているAVなどは、実行すれば法に触れるような内容であってもヤラセだろうと想像がつくところですが、ネット上で個人撮影、個人販売と称して売られている動画の中で盗撮モノにおいては違法な盗撮によるガチのものも含まれています。
しかし、盗撮という犯罪やそうした動画等を好んで視聴する愛好家の性質を考えるとヤラセよりガチの方が売れるはずです。違法な盗撮というリスクを負ってガチで撮っていながら何故わざわざヤラセと思われかねない被写体同意という文言を記載するのかというと、これは販売サイトで動画を売るにあたって適法性を示すためのものと思われます。
販売サイト側も違法な動画を売らせるわけにはいきませんのでそれぞれ禁止事項などを設けており、盗撮動画はそうした禁止事項に抵触するので被写体同意の文言を入れて禁止事項に違反していないということを示すのでしょう。
ところがそこまで細かく記載を読んでいる視聴者もほとんどいないと思われ、逆にそれによって名誉毀損という盗撮とは別の罪を犯す可能性が出てきてしまうのは皮肉なことです。
なお、前回の記事でも触れているようにスカート内を盗撮したいわゆるパンチラや逆さ撮りの動画については、その販売を直接処罰するための法律や条例等が無く、覚せい剤等のように販売や営利の目的があると罰則が重くなるといった規定もありません。そのため、この事件においては販売していようがしていまいが迷惑防止条例違反だけだとせいぜい罰金30万円から50万円程度に留まっていたのではと考えられます。
警察としては盗撮動画を販売していたという部分もどうにか罰したいという考えがあったのでしょうか、それで理屈としてはやや強引にも思えますが名誉毀損を持ち出してきて追加したのかもしれません。
今回の追送検によって罰金で済むのか、あるいは公判請求されるのか、際どい状況になってきたように思えます。罰金で済まされるにしても50万円は下らないでしょうし、公判請求されて執行猶予付きの懲役刑という可能性も出てきたのではないでしょうか。
中学女子サッカーコーチが盗撮か 脱衣所にカメラ設置し...
中学生女子サッカーチームのコーチが、合宿先の脱衣所に盗撮目的でカメラを設置したとして逮捕された。
逮捕されたのは、NPO法人代表理事で、女子サッカー指導者の容疑者(29)。
容疑者は、8日午後6時ごろ、自身がコーチを務める中学生女子サッカーチームの合宿先である栃木・那須塩原市の旅館で、盗撮目的で浴場の脱衣所の壁に小型カメラを設置した疑いが持たれている。
カメラを発見した生徒たちが容疑者を問い詰めると、容疑を認め、警察に出頭したという。
容疑者は、ウェブサイトで「サッカーを愛する少女たちに最高の環境を」と参加を呼びかけていた。チーム関係者は、「信頼しているコーチに裏切られた選手のケアをしていきたい」とコメントしている。
引用元 : フジテレビ 2019年8月9日 16時29分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
NPO法人の代表理事による脱衣所の盗撮事件です。ただし、逮捕容疑を見たところでは盗撮するには及んでおらず盗撮目的で脱衣所にカメラを仕掛けたまでに留まっているようです。
被疑者は中学生女子のサッカーチームでコーチを務めていたとのことですが、指導をしていく内に女子生徒らに対する盗撮などの興味が出てきていたのでしょうか、または最初からそうした目的もあってコーチを務めていたのでしょうか。
現場となった那須塩原市がある栃木県の迷惑防止条例には、盗撮目的でカメラ等を差し入れたり設置したりするだけでアウトになる規定がありますのでこの被疑者の行為も迷惑防止条例違反として処罰の対象となります。
栃木県 迷惑防止条例 第3条
- その性的羞恥心を害し、又は嫌悪の情を催させるような方法で、衣服その他の人が身につける物(以下この条及び第八条において「衣服等」という。)の上から、又は直接に、他人の身体に触れること。
- 衣服等で覆われている他人の下着若しくは身体(以下この条において「下着等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、又はこれらの行為をしようとして他人の衣服等をまくり上げ、若しくは手鏡、写真機等を他人の衣服等の下に差し出す等下着等をのぞき見し、若しくは撮影することができる状態にすること。
- 衣服等を透かして見ることができる写真機等を使用して、下着等の映像を見、又は撮影すること。
- 前三号に掲げるもののほか、その性的羞恥心を著しく害し、又は不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること。
何人も、みだりに、公衆浴場、公衆便所、公衆が使用することができる更衣室その他の公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態の他人の身体を撮影し、又は撮影する目的で、写真機等を設置し、若しくは当該状態の他人に向けてはならない。
何人も、みだりに、教室、事務所その他の特定かつ多数の者の用に供される場所又は貸切用のバスその他の特定かつ多数の者の用に供される乗物における下着等をのぞき見し、若しくは撮影し、又は当該下着等を撮影しようとして写真機等を他人の衣服等の下に差し出す等当該下着等を撮影することができる状態にしてはならない。
この事件では現場が旅館の脱衣所とのことですので第2項に該当していると考えられます。
なお、盗撮の対象が女子中学生で現場が脱衣所でしたので、彼女らの裸や着替えを実際に盗撮できていれば児童ポルノの製造となっていたことでしょう。おそらく盗撮を開始する前にバレてしまったことでカメラの設置行為だけで逮捕されているのだろうと思われますが、バレたのが撮った後だったら児童ポルノ禁止法違反になっていた可能性があります。
盗撮目的でのカメラ設置による迷惑防止条例違反と児童ポルノの盗撮製造では罪の重さが違います。被疑者においては後者が成立する前にカメラを見つけた女子生徒らに感謝した方が良いのではないでしょうか。
しかし、今後の捜査で余罪が発覚することも考えられます。被疑者の立場を考えると普段のサッカー指導に際して更衣室などにカメラを仕掛けて盗撮していたかもしれませんし、今回は偶々バレただけで過去の合宿先でも脱衣所の盗撮を行っていたかもしれません。
そのような余罪が無ければ盗撮目的でのカメラ設置のみですので良ければ不起訴、悪くても10万円から30万円程度の罰金と見られますが、児童ポルノ製造の余罪が出てくれば罰金50万円程度から、件数によっては公判請求される可能性もあるのではと思われます。