先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
駅ホームで盗撮か 目撃した複数の乗客の証言から奈良・川西町の総務課長を逮捕 本人は容疑を否認
18日、奈良県川西町の総務課長の男が、女子中学生のスカートの中をスマートフォンで盗撮した疑いで逮捕されました。
迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されたのは、川西町の総務課長(53)です。
容疑者は18日午後10時すぎ、橿原市の近鉄大和八木駅のホームで電車を待っていた女子中学生(15)のスカートの中を、スマートフォンで盗撮した疑いがもたれています。
警察によると、スマートフォンには盗撮した画像などは残っていませんでしたが、犯行を目撃した複数の乗客の証言などから、容疑者を逮捕したということです。また、容疑者は当時酒を飲んで家に帰る途中で、知人ら一緒に駅のホームにいたということです。
調べに対し、容疑者は「身に覚えがない」と、容疑を否認しています。
引用元 : 関西テレビ 2019年9月19日 12時9分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
町役場に勤める公務員によるスカート内盗撮事件です。しかし、被疑者は盗撮行為を否認しているようですが、「酒を飲んで家に帰る途中」とのことなので酒に酔っていた状態だったことが窺われます。
逮捕容疑は女子中学生のスカートの中をスマホで盗撮した疑いとされていますが、スマホには盗撮した画像などが残っていなかったとのことです。乗客など複数の目撃者の証言から被疑者が盗撮したと判断したと思われますが、目撃者が傍から見てわかるのは女子中学生のスカートの中にスマホを差し入れたことであって撮ったかどうかは確認できていないのではないでしょうか。
奈良県の迷惑防止条例では盗撮目的でスマホやカメラをスカートの中に差し入れるだけの行為を処罰できないので、「女子中学生のスカートの中をスマホで盗撮した疑い」と言うからには現に盗撮した証拠が無いと検挙できないのではと思われるところ、何がそれに当たるのかちょっと定かではありません。
奈良県 迷惑防止条例 第12条
- 他人の胸部、臀部、下腹部、大腿部等(以下「胸部等」という。)の身体に触れる行為(着衣その他の身に着ける物(以下「着衣等」という。)の上から触れる行為を含む。)であつて卑わいなもの
- 着衣等の全部若しくは一部を着けないでいる他人の姿態若しくは着衣で覆われている他人の下着若しくは胸部等の身体をのぞき見し、又は写真機等を使用して、その映像を記録する行為であつて卑わいなもの
- 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動
何人も、みだりに卑わいな行為であつて次の各号に掲げるものをしてはならない。
- 公共の場所及び公共の乗物以外の場所から、写真機等を使用して、透視する方法により、公共の場所にいる他人若しくは公共の乗物に乗つている他人の下着若しくは胸部等の身体を見、又はその映像を記録すること。
- 写真機等を使用して、住居、浴場、更衣室、便所その他の人が着衣等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所(公共の場所及び公共の乗物を除く。)に当該状態でいる他人の姿態の映像を記録すること。
現行犯逮捕ではないようですが、おそらく現場で取り押さえられて任意同行後に逮捕されていると思われ、盗撮したデータを削除する余裕も無かったように思われます(逆に現行犯逮捕なら尚更削除する暇は無いでしょう)。
酒に酔って気が大きくなり、スカートの中にスマホを差し入れて盗撮するフリをしたのかもしれませんが、奈良県においてはそれだけで迷惑防止条例違反に問える規定がありません。実際にスマホで盗撮したという証拠が必要なところデータが無いという状況なので何をもって盗撮したと判断したのか気になります。
又は第1項第3号に掲げる卑わいな言動として逮捕した可能性もありますが、「女子中学生のスカートの中をスマホで盗撮した疑い」と言うからにはその証拠が示されたいところです。複数の乗客による目撃証言もありますので何か決定的な証拠があるなら罪は免れないと思われますが、データの復元等を行っても証拠が出ず本人も否認しているという状況では立件は難しいかもしれません。
データの復元等によっても盗撮したデータなどの証拠が無く被疑者が否認したままならおそらく不起訴にせざるを得ず、何か動かぬ証拠があるならば30万円程度の罰金といったところになるのではないでしょうか。
民泊で盗撮されていた…女児の裸、風呂場にカメラ 沖縄の50代男
沖縄本島の民泊施設の風呂場で複数人の女子児童の裸を盗撮したとして、児童買春・ポルノ禁止法違反の罪に問われた50代男の判決公判が19日、那覇地裁沖縄支部であり、安重育巧美裁判官は懲役1年8月、執行猶予4年(求刑2年)を言い渡した。
起訴状や判決文によると、男は今年5月、当時の交際相手が営む民泊施設の風呂場に小型カメラを設置し、裸を撮影して保存した。昨年10月ごろから同様の犯行を繰り返していたという。
引用元 : 沖縄タイムス 2019年9月20日 5時40分配信
民泊施設の風呂場における児童ポルノの盗撮製造事件ですが、過去既に検挙されていた事件で起訴され今回判決が出たという報道で、懲役1年8月に執行猶予4年となっています。
児童ポルノの製造では罰金に留まっている事件も少なくない中、これは割と厳しめの判決のように感じます。初犯で罰金では済まされずに公判請求されるとしても懲役1年前後などもう少し下から始まっても良さそうなものなので、もしかすると被告人に同種前科があるのかもしれません。
「昨年10月ごろから同様の犯行を繰り返していた」とのことなので常習性などが加味されているかもしれませんが、事件として起訴されているのは今年5月の盗撮製造のみのようです。その際に複数の被害者がいたとしても初犯でこれだけ厳しくはならないように思えますので、やはり盗撮や児童ポルノ関係の前科があってその影響なのではないでしょうか。
逆に罰金以上の刑を科された前科があるならこれくらいの判決になることは妥当と感じますので、スカート内の下着盗撮等と比較すると児童ポルノ製造の罰則の重さが際立ちます。次があればおそらく実刑、しかも盗撮を繰り返した場合では3回4回でやっと1年未満の短期の懲役となるところが児童ポルノの場合では2年3年という長さになってきます。
以前の記事でも触れているように、スカート内の下着盗撮等と異なり、トイレや着替え、風呂での盗撮は被害者が18歳未満の児童かどうかで大きく変わってきます。一口に盗撮と言っても捕まったときの結果が全く違ってくる点には注意が必要です。
盗撮目的で高校侵入容疑の47歳男を逮捕 高崎
盗撮目的で高校の敷地内に侵入したとして、高崎署は19日、建造物侵入の疑いで、高崎市聖石町の会社員(47)を逮捕した。容疑を認めている。
逮捕容疑は6月1日午後2時10分ごろ、高崎市内の公立高校の敷地内に女性のスカート内を撮影するために侵入したとしている。
当時、高校では文化祭が開かれていた。職員が「敷地内で女性を盗撮している男を見つけたが、逃げられた」と同署に通報した。目撃情報や、盗撮のため靴に装着し、逃走中に落としたとみられる小型カメラのデータなどから容疑者を割り出した。同署が余罪などを調べている。
引用元 : 産経新聞 2019年9月20日 7時55分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
盗撮目的で高校の敷地内に立ち入ったという建造物侵入事件です。「敷地内で女性を盗撮している」とのことですが、現場の高校では文化祭が催されていたようなので女子高生のスカート内を狙って繰り出したものでしょうか。
おそらく現場で盗撮に気付かれた被疑者はどうにか逃げることはできたようですが、盗撮はいわゆる靴カメで行っており、靴に仕込んでいた小型カメラを逃走中に落としていてそれにより特定された後日逮捕の事件でもあります。事件発生から今回の逮捕に至るまでに3か月以上かかっていますので得物を落としていたものの被疑者は逃げ果せたと思っていたかもしれません。
なお、逮捕容疑は建造物侵入のみであり、迷惑防止条例違反は含まれていません。群馬県の迷惑防止条例では盗撮目的でカメラ等を向けたり設置したりする行為も処罰の対象になる規定がありますので、現場で盗撮に使用されていたカメラを証拠として押さえているならスカート内の盗撮に成功していても失敗していても迷惑防止条例違反の裏付けはできそうに思われます。
群馬県 迷惑防止条例 第2条の3
- 人の身体に、衣服その他の身に付ける物(以下「衣服等」という。)の上から、又は直接、触れること。
- 衣服等で覆われている人の下着若しくは身体をのぞき見し、若しくは撮影し、又はこれらの行為をしようとして、鏡、写真機等を衣服等の下に差し出し、置くなどすること。
- 写真機等を使用して透視する方法により、衣服等で覆われている人の下着又は身体の映像を見、又は撮影すること。
- 前各号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所において当該状態でいる人の姿態を、のぞき見し、又は撮影してはならない。
この事件では行為としては第1項第2号の規制に該当していると考えられますが、もし迷惑防止条例違反にならないとしたら理由として考えられるのは現場が「公共の場所又は公共の乗物」ではないと解釈される点でしょうか。
学校の敷地内というと確かに誰でも立ち入ることができる公共の場所とは言えないかもしれませんが、公立高校における文化祭という場を考えると当日は公共の場所だったと解釈しても良さそうに思えます。勿論、必ずしも迷惑防止条例違反にならないというわけではなくまずは建造物侵入で逮捕しておいて今後迷惑防止条例違反を追加するということもあり得ます。
警察は余罪についても調べているようですが、現場で盗撮に気付かれて逃走しその際にカメラを落としているということを考えると、余罪の証拠となりそうな盗撮データ等は今回逮捕されるまでの3か月以上の間に処分していてもおかしくありません。そうなれば余罪で立件するということは難しいでしょう。
また、迷惑防止条例違反が今後追加できるかどうかによって最終的な刑事処分にも違いが出てきます。もし被疑者が初犯なら公判請求は無いと思われますので、建造物侵入のみに留まれば罰金の上限でも10万円ですが、迷惑防止条例違反が追加されれば30万円からの罰金ということになるのではないでしょうか。