先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
店に「充電器型隠しカメラ」と書かれた箱 従業員の着替え盗撮、飲食店経営の男逮捕
従業員の着替えを盗撮したとして、兵庫県警生活安全特別捜査隊と生田署は17日、県迷惑防止条例違反の疑いで、神戸市灘区の飲食店経営の男(40)を逮捕した。
逮捕容疑は10月4~10日の間、同市中央区で経営する飲食店の事務所にカメラを設置し、着替え中の女性従業員=当時(21)=を、3回にわたって撮影した疑い。調べに容疑を認めているという。
同署によると、カメラはスマートフォンの充電器のような形状で、女性店長が「充電器型隠しカメラ」と書かれた箱とコンセントに差し込まれたカメラを見つけ、同署に届け出て発覚した。
引用元 : 神戸新聞 2020年11月17日 21時56分配信
飲食店の経営者が事務所にカメラを仕掛けて従業員の着替えを盗撮したという事件です。飲食店ではなくても経営者や店長などが同様の盗撮をしているケースは他にもありそうですが、発覚した経緯が驚きというか間抜け過ぎるのではないかと感じるところです。
着替えに使用されていた事務所に仕掛けられたカメラが偶々バレて発覚したといった事ではなく、女性店長が「充電器型隠しカメラ」と書かれた箱を見つけて気付いたようです。おそらくその箱だけ先に見つけて隠しカメラが仕掛けられているのではと探したところまんまとカメラが見つかったという事なのではないでしょうか。
せめて箱から出して仕掛けるだけの状態にして持ってくれば良かったものを何故箱のまま持ってきてその箱を現場に置いておいたのか理解に苦しみます。流石に箱はすぐに目に留まる場所に置いておいたのではなくゴミ箱に捨てていたとかそういう事だと思われますが、そんな箱があれば不審な充電器(型カメラ)が無いか探すに決まっていますので箱を持ってくる事自体普通は考えないでしょう。
飲食店の事務所との事ですので公共の場所ではないと考えられますが、兵庫県の迷惑防止条例では更衣室や不特定又は多数の者が利用する事業所などの公共の場所以外における盗撮行為も処罰の対象ですのでこの事件も当然アウトとなります。
兵庫県 迷惑防止条例 第3条の2
- 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
- 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
- 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
- 前項第2号に掲げる行為
何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
更衣室でなくとも事務所を着替えに使用していたのであれば第3項に掲げる更衣室と解釈できるでしょうし、そうでなくとも第2項に掲げる事業所に該当すると考えられます。
しかも10月4日から10日までの間に3回盗撮したとされていますので仕掛けっぱなしだったのではと思われます。1回毎に引き揚げるなどしていればカメラが見つかった際の1回だけで済んでいた可能性もありますが、この間に3回盗撮していた事が裏付けられるデータを残したままにしていたのも間抜けと言わざるを得ません。
被害者の女性と示談ができればまだわかりませんが、着替えを3回も盗撮していたという事と立場を悪用した犯行という事はそれなりに悪質と判断されるでしょうから罰金となれば30万円から50万円程度が見込まれる事になるのではと思われます。
女性の部下盗撮 62歳男を逮捕 千葉県改正条例を「営業車」に初適用
営業車の車内にカメラを設置し、部下の女性のスカートの中を盗撮したとして、千葉県警野田署は18日、千葉県迷惑防止条例違反(盗撮)の疑いで、元証券会社役員で無職容疑者(62)=茨城県常総市中妻町=を逮捕した。7月に施行された改正条例で追加された盗撮の規制場所のうち「不特定多数もしくは多数の者が利用できる乗物」での摘発は初めて。
逮捕容疑は、9月2日午前11時ごろ~午後0時5分ごろまでの間、千葉県野田市内を走行中の営業車に小型カメラを設置し、助手席に乗車していた女性社員(26)のスカートの中を盗撮したとしている。
捜査関係者によると、容疑者は、営業車での盗撮に用いたカメラを社内の女子トイレに設置し、盗撮しようとした。カメラに気づいた別の女性社員がデータを確認したところ、営業車での盗撮被害を発見。野田署に相談し、事件が発覚した。
改正前の条例では盗撮の規制場所は「公共の場所又は公共の乗り物」とされてきた。改正により、浴場や更衣室など衣服を身に着けない場所、学校やタクシーなど多くの人が利用する場所や乗物も規制対象となっていた。同署は営業車が「不特定多数もしくは多数の者が利用することができる乗物」と判断し、摘発に至った。
引用元 : 産経新聞 2020年11月19日 18時35分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
こちらは営業車に盗撮用の小型カメラを仕掛けてスカート内を盗撮したという事件です。助手席に乗っていた女性社員のスカート内を盗撮したという事はグローブボックスの下などに仕掛けていたという感じなのでしょうか。
しかし営業車に取り付けられていたカメラがバレたわけではないようで、そのカメラをトイレ盗撮に転用したところそれがバレて営業車での盗撮も発覚したとの事なのでデータを残したままだったのでしょう。営業車での盗撮はその時点ではバレていなかったようなので目の付け所はそれなりに良かったのかもしれません。
こちらもカメラを営業車から引き揚げた際にデータを移してカメラからは消去しておけば営業車での盗撮は発覚しなかった可能性がありますので、データを残したままにしておく事のリスクがわかろうというものです。
尤も、千葉県の迷惑防止条例は7月から改正条例が施行されており、記事で触れられている点以外にも盗撮目的でカメラ等を向けたり設置したりする盗撮準備行為が規制対象とされた事で、発覚のきっかけとなったトイレへのカメラ設置もアウトになっています。そのため営業車での盗撮行為が発覚しなかったとしても迷惑防止条例違反となる事は避けられなかったと思われます。
千葉県 迷惑防止条例 第3条の2
次のいずれかに掲げる場所又は乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器(衣服を透かした状態を撮影することができるものを含む。以下「写真機等」という。)を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を差し向け、若しくは設置すること。
- 浴場、更衣室、便所その他の人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所及び住居
- 公共の場所(イの場所を除く。)又は公共の乗物
- 学校、事務所その他の不特定若しくは多数の者が利用し、若しくは出入りすることができる場所(イ及びロの場所を除く。)又はタクシーその他の不特定若しくは多数の者が利用することができる乗物(ロの乗物を除く。)
公共の場所又は公共の乗物において、人の胸部、臀部、陰部、大腿部その他の身体の一部に直接又は衣服その他の身に着ける物の上から触れること。
前各号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。
なお、営業車を「不特定若しくは多数の者が利用することができる乗物」と判断して改正条例を適用したとされていますが、営業車は公道を走行していたはずで、車の中だから即座に公共の場所ではないと判断されるかというとそうでもないように感じます。条例改正が無くても従来の規定で迷惑防止条例違反となっていた可能性はあったかもしれません。
営業車での盗撮行為とは別に、女子トイレにおける盗撮準備行為も条例改正により処罰できるようになった行為ですので場合によってはそちらも立件される事が考えられます。そうなってくると罰金としても50万円程度が科せられる事もあるのではと思われます。
靴に隠した小型カメラで… コンビニ内で盗撮の疑い 男逮捕
香取署は20日、県迷惑防止条例違反(盗撮)の疑いで松戸市、会社員の男(44)を逮捕した。
逮捕容疑は20日午前8時10分ごろ、香取市佐原ハのコンビニ内で、買い物をしていたパートの女性(43)=茨城県=のスカート内に、背後から靴に隠した小型カメラを差し向けた疑い。
同署によると、容疑を認めている。盗撮に気付いた女性が110番通報した。
引用元 : 千葉日報 2020年11月21日 11時2分配信
靴にカメラを仕込んだスカート内盗撮事件ですが、逮捕容疑は小型カメラを差し向けた疑いとされており盗撮準備行為での逮捕に留まっていると見られます。ただし、データなどで実際に盗撮した事が裏付けられれば被疑事実は変更されるかもしれません。
スマホを靴に乗せたりサンダルに挟んだりといったものではなく小型カメラを仕込むのであれば注意して見ないと気付かないと思われますが、不自然な挙動で周囲の人にバレるならともかく被害者本人に気付かれるというのは余程動きが不審だったのでしょう。
普通コンビニで足元などなかなか注意して見ないでしょうがそれでも気付かれる程に露骨に足の間に靴を入れようしてきたとか、店内を不自然についてきたとか、バレても仕方ないだろうと思えるようなくらいに挙動不審だった事が想像されます。
上述しているように千葉県では盗撮に関する規制が強化された改正条例が7月から施行されていて、盗撮目的でカメラ等を差し向ける盗撮準備行為も新たに処罰の対象になっています。この事件の現場はコンビニ店内という公共の場所ですので第1号(ロ)に該当していると考えられます。
靴に小型カメラまで仕込んでいては盗撮目的ではないと言い逃れする事はほぼ不可能と思われ既に本人も認めていますが、実際に盗撮に移る前に被害者に気付かれていて盗撮には至っていなかったのであれば盗撮準備行為に留まりますのでその場合は罰金としても10万円から20万円、しかし実際に盗撮に至っていてそれが裏付けられれば30万円といったところではないでしょうか。