先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
腕時計型カメラで公衆浴場の裸男性盗撮 動画投稿で逮捕
裸の男性が写った動画をインターネットサイトに投稿したとして、京都府警生活安全対策課と中京署は4日、わいせつ電磁的記録媒体陳列の疑いで、京都市南区久世中久町、派遣社員の男(43)を逮捕した。
同署によると、男は動画について「公衆浴場の男性用脱衣場で、腕時計型のカメラを使って盗撮した」と供述しており、府迷惑行為防止条例違反(盗撮)容疑でも調べる。
逮捕容疑は9月9日~10月29日、全裸男性が写った動画計11本を動画販売仲介サイトに投稿して、不特定多数が閲覧できるようにした疑い。
中京署の説明では、公衆浴場の経営者らが自分の浴場の動画がネットで公開されていると気付き、脱衣場で不審な動きをしていた男を見つけて同署に相談した。動画は1本当たり約550円でダウンロードされ、男は「約60万円をもうけた」と話しているという。
引用元 : 京都新聞 2017年12月4日 22時17分配信
ちょうど前回の記事で指摘していましたが、男性が男性を盗撮し、その動画を販売サイト上で売っていたという事件です。
迷惑防止条例違反の疑いでも調べるとされているようにこの事件の逮捕容疑も捜査のきっかけも盗撮行為ではなく盗撮動画を販売していたことにありますが、盗撮自体も何度か繰り返していたと見られるものの腕時計型のカモフラージュカメラという点と男性→男性の盗撮という点で現場では気付かれることなくノーマークだったのではないでしょうか。
なお、わいせつ電磁的記録の公然陳列ですので動画には局部へのモザイク処理等を施していなかったと見られます。ちょうどこちらの記事で取り上げている通りです。
また、入浴施設の経営者らが動画販売に気付き、挙動不審だった男を見つけて警察に相談したことがきっかけとなっていますが、防犯カメラの記録なども決め手となって被疑者の特定に至っていると見られますので、動画販売からの後日逮捕としてはこちらの記事で取り上げている事件とも共通点があると思われます。
新品価格 ¥16,480から
一部の報道では盗撮動画が投稿されていた販売サイトをボカシ入りで放送するなどしています。そうした放送が流れる前から一部の愛好家らの間ではどのサイトで販売していたのか話題になっていたものの当初から概ね推定されていた模様です。
男性が被写体の盗撮動画を無修正で販売することができ、そうした動画を約2か月で約60万円売り上げることができるサイトはあそこしかない、と言った具合です。案の定、販売サイトをボカシ入りで放送した映像でそれが確定していますがサイト名については控えさせていただきます。
当の一部愛好家らの間で問題となっているのはこの事件によってその販売サイトがクローズアップされたことで、そのサイトは無修正モノはもちろん児童ポルノなど、陳列や販売自体が違法となる動画が多数掲載されている無法地帯と化しており、もともと摘発待ったなしと言われていたところで今回の事件があったため利用者が戦々恐々としているようです。
海外の企業が海外で運営しているサイトということでこれまでは警察の手が及ばなかったように言われていましたが、今回の事件によって風向きが変わる可能性もあります。違法な利用をしている人は心しておいた方が良いかもしれません。
盗撮 教室も対象へ 長崎の事案 立件困難 県条例改正で規制強化
長崎県警は4日までに、「公共」空間でみだらな行為を禁じる県迷惑行為等防止条例の一部を改正する方針を固めた。長崎市内の小学校の教室で先月、男性教諭(61)が女子児童のスカート内を盗撮する不祥事が発生したが、現行条例で教室は「公共」空間とはみなされず立件が困難な見通し。県警は条例改正で「公共」空間以外にも取り締まり対象を拡大する意向。
長崎新聞は、同市内の市立小学校で11月、男性教諭が2年生の男女を1人ずつ教室に呼び出し、掛け算の九九の個別指導をした際、タブレット端末で女児のスカートの中を動画盗撮したと報じた。同校から相談を受けた長崎署が調べているが、捜査関係者は「教室は条例で規定する『公共の場所』に当たらず、立件は難しい」という。同校の保護者は「なぜ逮捕できないのか。この憤りはどこに向ければいいのか」と不満を口にする。
条例は「公共の場所」または「公共の乗物」での「卑わいな行為」を禁じ、その行為に盗撮も含まれる。公園、駅、飲食店、電車、船舶などは不特定多数が利用するため「公共」空間に当たるが、教室は原則として、教師と子どもしか出入りしない閉鎖的な空間とみなされ、条例の対象外という。条例改正について県警は「なるべく早く県議会に改正案を提出したい」としている。
警察庁によると、同様の動きは全国的にあり、4月1日現在、13道府県が既に条例を改正。規制対象に「特定かつ多数の者が利用」(宮城県など)、「公衆の目に触れる」(京都府など)といった表現を条例に加え、教室や会社事務所などでの盗撮を摘発できるようにした。
九州・沖縄では福岡、宮崎、鹿児島、沖縄の4県で改正を終え、佐賀県警は開会中の県議会に改正案を提出している。熊本県警は来年の改正を目指しており、大分県警は「改正に向け作業中」としている。
引用元 : 長崎新聞 2017年12月5日 10時20分配信
こちらも前々回の記事で指摘していた通り、やはり迷惑防止条例違反での事件化は難しかったようです。
なぜ逮捕できないのかという問いに対しては、盗撮の現場となった教室が公共の場所ではなく、長崎県の条例では公共の場所で行われた盗撮しか処罰できないためということになります。
付け加えるなら、教諭としての職務を考えると教室への立ち入りを建造物侵入に問うことも難しいと思われ、罰があって無いようなものである軽犯罪法違反くらいでしか立件できない、といったところでしょうか。
この憤りはどこに向ければいいのかと言われても盗撮した本人と条例を定めている長崎県が悪いとしか言えませんが、県が違えば逮捕・処罰されているだろうと思われますので被害者や保護者が納得できないと言うのも大いに理解できるところです。
こうした声が大きくなったことを受けたのか、あるいはもともと検討はしていたのか、長崎県でも盗撮に対する規制強化のための条例改正を行う意向のようなので、上記の記事に挙げられているような表現を加えるなどして公共の場所以外での盗撮や、盗撮の準備行為や前段行為も処罰されるようになるのではないでしょうか。
記事で触れられているように、盗撮に対する規制強化のための条例改正はすでに13道府県で実施済み、条例改正の作業中や検討中の都県もこれに加わりますのでまさに全国的な動きと言えるでしょう。
スカート内盗撮 容疑の男再逮捕 神奈川
駅構内で女子高校生のスカート内を盗撮したとして、海老名署は6日、県迷惑行為防止条例違反容疑で、平塚市中原の会社員(43)=同条例違反罪で起訴=を再逮捕した。容疑を認めている。
再逮捕容疑は、8月28日午前7時45分ごろから10月17日午前7時45分ごろまでの間、JR相模線南橋本駅の上りエスカレーターで、複数回にわたり、通学途中の高校2年の女子生徒(16)=ともに相模原市南区在住=2人のスカート内をスマートフォンで撮影したとしている。
同署によると、容疑者は11月9日、別の同条例違反事件で現行犯逮捕されており、その後の調べで、容疑者のスマホ内から女子高校生のスカート内を盗撮した映像が見つかったという。容疑者のスマホからは盗撮映像が50点以上見つかったといい、同署は余罪があるとみて調べを進めている。
引用元 : 産経新聞 2017年12月7日 7時55分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
盗撮したデータを残していたことで余罪が発覚する典型的なパターンです。
スマホやエスカレーターといった、毎日のように掃いて捨てるほど出てくる逮捕報道で散々取り上げられている手口や場所での犯行に加えてデータも残していたという数え役満のお粗末事案と言えるでしょう。
やや気になるのは盗撮(迷惑防止条例違反)で起訴されている点と再逮捕までされている点でしょうか。過去の記事でも触れているように迷惑防止条例違反で公判請求されるということはすでに何度か事件を起こしているのではと窺えます。
また、スマホから盗撮映像が50点以上見つかったとのことで、おそらく再逮捕容疑もこれらの映像から調べを進めたものと思われますが、スマホの記録などは現行犯逮捕した11月9日の時点で確認していたでしょうから再逮捕容疑の調べにずいぶん時間をかけた印象を受けます。
11月9日の現行犯逮捕から勾留期限が11月29日だとするとこの程度の内容であればまとめて起訴できそうなところ、勾留期限から1週間も経ってから再逮捕というのは、調べに時間をかけたというより再逮捕を食らわすつもりだった警察の厳しい意図も感じられます。
こちらの記事でも触れていますが、複数の盗撮があっても1つの事件として起訴するなり、再逮捕はせずに余罪を追起訴するなりできるところをわざわざ再逮捕しているのはかなり犯情が悪いのではと見られます。
余罪にしても同じ女子高生に対して複数回盗撮していたと思われる内容ですので、11月9日に現行犯逮捕された事件も含め常習盗撮となる事件かもしれません。
11月9日の事件を非常習として起訴していると、8月28日から10月17日に行われた余罪を常習として追起訴することができないと思われますので、この場合は検察官が訴因変更して両罪を常習とするなどの形になるでしょうか。