盗撮などの性犯罪での逮捕やその前後に関する情報を配信してまいります。

盗撮で逮捕される日

ニュース考察

先週の盗撮事件ニュース(12月31日~1月13日)

更新日:

先週までに報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。

社長が社長室で盗撮…摘発できず? 追い付かない「私的場所」の規制

「私的な場所での盗撮は条例では摘発できないケースがある」。全国の弁護士有志でつくる「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」は指摘する。福井県をはじめ各都道府県の迷惑防止条例の規制対象は広がりつつあるが、私的な場所での盗撮や画像拡散の被害は深刻だという。同フォーラムは被害抑止に向け、より重い規制をすべきだと主張し、刑法に「盗撮罪」を新設するよう訴えている。

福井県は昨年12月、改正した条例で規制対象を拡大した。ただ、条例は「通常衣服を着けない場所」「公共の場所」「特定多数の人が利用するような場所」が対象。裏を返せば「通常衣服を着ている、特定少数しか利用しない、私的な場所」は該当しない。

例えば次のようなケースだ。▽社長が社長室で▽女友達を自宅に呼びリビングで▽個人指導の先生が訪問宅の部屋で▽タクシー内で-スカートの中を盗撮されても摘発できない可能性が高い。現場が盗撮者の自宅などなら住居侵入罪や建造物侵入罪にも問えず、通常衣服を着ている場所での盗撮は「のぞき見」を禁じた軽犯罪法違反にも当たらない。同フォーラムによると、摘発できなかった例が実際に全国で起きている。

(中略)

「盗撮罪」の新設を訴える同フォーラムは9月、条文案を発表した。「他人を著しく羞恥させる態様」で「裸や下着などを同意や正当な理由なく撮影した場合」などを想定しており、立法化に向け法務省に働き掛けていく予定だ。

迷惑防止条例の目的は“社会秩序の維持”にあるため、その規制範囲は「私的な場所」の全てはカバーできていない。川上弁護士は「被害は深刻になっていて、盗撮を狙う場所もさまざま。盗撮自体がアウトだという刑罰法規があるべきではないか。個人の『見られたくない権利』そのものを守るべきだ」と訴える。
引用元 : 福井新聞 2018年12月31日 12時21分配信

盗撮が行われた現場によっては各都道府県が定める迷惑防止条例の規制に該当せず摘発できない事例があるというのはその通りで、全国共通の基準で取り締まりができる盗撮罪を新設して厳しく規制すべきとのことです。

犯罪被害者支援弁護士フォーラムが発表した盗撮罪の条文案は以前の記事でも取り上げており、さらに前に当サイトで盗撮動画の販売の取り締まり方として挙げた案にも近い内容になっています。しかし、これが実現するかどうかについては疑問点もあります。

まず、この記事で挙げられているような、迷惑防止条例違反が成立しない私的な場所での盗撮はごく一部と見られ、大多数の盗撮行為は既存の条例で摘発され、処罰されています。記事で指摘されているように事件化できないから報道されていないという面もありますが、明らかに盗撮なのに事件化できないということで殊更大きく報じられる場合もあります。

ごく一部の事例にフォーカスした新法制定というのはなかなか厳しいように感じます。

厳罰化についてももちろんそれなりに効果はあるでしょうが、最大で懲役30年にもなる危険運転致死傷罪の要因の1つである飲酒運転が未だに無くならないことを考えれば効果が限定的なのはわかるでしょう。

犯罪は基本的にバレないこと、またはバレても逃げ切れることが前提で行われることがほとんどで、盗撮などは特にその傾向が強いものです。もちろん厳罰化されたから止めるという人もいるでしょうが、バレない前提なので逆に厳罰化は効果が無いという考えも成立します。

また、全国共通の法律ではなく迷惑防止条例によって規制されている違法行為は盗撮以外にも存在します。盗撮のように地域差があるものもあります。そんな中で盗撮への規制だけを「格上げ」できるかとするとどうでしょうか。

盗撮罪が新設されればそれ相応の効果は当然出てくると思われますが、新設までのハードルは低くないと考えます。結局は盗撮に関して迷惑防止条例が規制する場所や行為をなるべく拡大し、都道府県ごとの条例による違いをなるべく小さくするというのが現実的なのかもしれません。

津商業高校の54歳教師の男 駅で少女のスカート内盗撮し罰金60万円の略式命令

去年9月と10月の2度にわたり、10代の女性2人のスカートの中を盗撮したとして、津簡易裁判所は三重県立高校の54歳の教師の男に罰金60万円の略式命令を出しました。

三重県立津商業高校の54歳の教師の男は去年10月、津駅のエスカレーターで女子高生(17)のスカートの中をスマートフォンで盗撮したとして逮捕されていました。その後、男はこれとは別に去年9月と10月の2度にわたり、いずれも同じ津駅のエスカレーターで10代の女性2人のスカートの中を盗撮したとして追送検されていました。

津地検は12月26日付で女子高生に対する盗撮事件については起訴猶予処分としました。一方で、津区検は残りの女性2人に対する盗撮事件については略式起訴し、津簡易裁判所が12月27日付で罰金60万円の略式命令を出しました。

津地検の小島達朗次席検事は「証拠関係を総合的に考慮し略式命令請求と不起訴の処理をした」とコメントしています。
引用元 : 東海テレビ 2019年1月7日 19時17分配信

高校の教員による盗撮事件で、学校の中ではなく外での事件のようです。また、被害者の内の1人は女子高生とされていますが勤務先の高校の生徒かどうかはわかりません。何となくですが他校の生徒なのかなという気がします。

盗撮の手口としてはスマホ+エスカレーターという典型的なスマホ君でまず昨年10月に逮捕されていたようですが、おそらく余罪が発覚したのでしょうか、9月と10月の別の盗撮も事件化されていたようです。

最初に逮捕された事件と日があまり違わないようなので、盗撮に使用されたスマホに保存されていた画像や動画から裏付けを進めて9月と10月の2件を事件化したということなのかもしれません。手口が間抜けなだけではなく余罪の証拠まで携帯するという間抜けっぷりです。

最初の事件については起訴猶予ということで不起訴に、余罪として追送検した2件で略式起訴となっています。次席検事がわざわざコメントを出していますが、不起訴になった分については単に示談が成立したということなのではないでしょうか。

なお、三重県の迷惑防止条例では盗撮に関する罰則を「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」と定めています。

三重県 迷惑防止条例 第2条

(第1項略)
第2項
何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
  1. 人の身体に、直接又は衣服その他の身に着ける物(以下この条において「衣服等」という。)の上から触れること。
  2. 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
  3. 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
第3項
何人も、みだりに、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態にある人の姿態を撮影してはならない。

三重県 迷惑防止条例 第15条

次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
  1. 第二条第二項又は第三項の規定に違反した者
  2. 第九条第一項の規定に違反した者
(第2-5項略)
第6項
常習として第一項又は第二項の違反行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

罰金の上限が50万円とされているところ、この事件の略式命令では罰金60万円となっていますが、もちろん常習の規定が適用されていれば上限が倍になりますのであり得ない話ではありません。

しかし、「常習として」という規定は一般的にはそれまでに2回3回と何度も捕まっているような常習犯が想定されており、特別な事情が無ければ初犯でいきなり適用されるものではありません。

余罪として事件化されて不起訴にならなかった盗撮としては2件ありましたので、それぞれで30万円の罰金と考えれば妥当なところではないでしょうか。

スカート内を盗撮容疑で消防士逮捕 通勤中バスで 京都

京都市中京区を走行中の市バス内で高校1年の女子生徒(16)のスカート内を盗撮したとして、京都府警は11日、中京消防署消防士の容疑者(21)=同市北区=を府迷惑行為防止条例違反(ひわいな行為)の疑いで現行犯逮捕し、発表した。「間違いない」と容疑を認めているという。

中京署によると、逮捕容疑は11日午前7時35分ごろ、世界遺産の二条城近くを走行中のバス内で、座っていた生徒の下着をスマートフォンで撮影したというもの。乗客の男性が気づいて取り押さえ、署は動画を確認したという。容疑者は通勤途中だった。
引用元 : 朝日新聞 2019年1月11日 13時57分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。

バスについて「世界遺産の二条城近くを走行中の」という形容は必要なのか疑問に感じますが、バスで席に座っていた女子高生の下着を盗撮したということは対面の座席から撮ったということでしょうか。

おそらく女子高生が座席で脚を開いてしまっていて、対面から下着が見えていることに気付いた被疑者がスマホで盗撮、そしてそれに気付いた乗客が取り押さえたということでしょう。

撮影や消音アプリなどの有無に関係なく、人にカメラを向けるようにスマホを持っているだけで神経質になる人は少なくありません。スマホの向く方に女子高生などがいようものならひと際怪しくもなるでしょう。

それ以前の問題として不自然な体勢やスマホの構え方、または撮影中の画面が横から丸見えということもあり得ますがこれらはもはや論外でしょう。

以前似た状況を取り上げた記事でも触れているように、下着が見えていたとしてもスカート内を撮影するのはアウトです。この被疑者は認めているようなので言い訳したのかどうかはわかりませんが、見えていたことが有利な事情にもなりません。

被疑者はまだ若いので前科等は無いのではと思われ、余罪の疑いが無ければ場合によっては既に釈放されているかもしれませんが、特筆すべき悪質性なども無さそうですので厳しくても罰金30万円というところではないでしょうか。被害者との示談が成立すれば不起訴も見込めると思います。

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