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『痴漢犯罪の実態、「動機が性欲」は少数派だ』に感じる疑問

更新日:

動機は性欲以外という人が多数派なのか?

昨日東洋経済のウェブサイトにて以下の記事が公開されました。

痴漢犯罪の実態、「動機が性欲」は少数派だ
引き金は「上司」や「同僚」であることが多い

現在までに寄せられている記事へのコメントに懐疑的な見方のものが散見されることからもお察しですが、個人的にもこの記事の内容にはいくつか疑問を感じる部分があります。

直接的な動機は性欲でしょう

あらかじめ申し上げておきますと、動機と性欲が直結しておらず、「捕まるかもしれない中で人を支配するスリルとリスクに興奮し、非日常的な達成感を得てスキルアップしていく」といったタイプの人も、特に常習者の中には確かに存在していると思います。

ただ、そういった特殊な例をさも多数派かのように一般化し、動機から犯行までのプロセスをすっ飛ばして性欲が動機ではないとするのは無理があると感じます。この記事で挙げられているように仕事のストレスがきっかけになって痴漢へつながるにしても、仕事のストレスを抱える→ムシャクシャする→ストレスを解消したい→痴漢したい→痴漢したという流れであろうと考えられます。

このプロセス自体はある程度理解できますし犯行に至るシナリオとしてもありがちですが、問題になってくるであろう部分はストレスを解消したい→痴漢したいの点のはずであり、認知の歪みから発生するこの性的嗜癖行動を治療しましょうという話だけならわかるのですが、ストレスを解消したいの前のプロセスの一部(仕事のストレスなど)をことさら取り上げて何か意味があるのでしょうか。

ストレスを解消したいの前のプロセスは十人十色でしょうし、仕事上のストレスを抱える→痴漢したいのように間をすっ飛ばした話をしても懐疑的なコメントが寄せられているように賛同は得られないだろうと感じます。

上述のようにストレスを解消したい→痴漢したいという部分の間に性欲が介在していないケースが存在するとしてもそれは常習者など一部の特殊な例であって、多くは性欲が起因して痴漢という行為に及んだと考える方が自然です。

プログラムを受けている男性らに調査すると、痴漢の間接的な引き金(慢性トリガー)として「上司」や「同僚」と申告する例は少なくない。決算期などの繁忙期に必ず痴漢をする例もある。「妻」との関係を引き金と考える人もいる。家庭内で居場所がないことが孤独感を助長し、それがストレスにつながっているのだろう。

もっとも、このように記事の中でも「間接的な」と言ってしまってますね。間接的な引き金の話ならいくらでもできますし、上司や同僚、妻などから受けるストレスなどは誰にでも当てはまる話です。そのストレスから最終的に痴漢につながるのが問題なのであって、そのストレスに焦点を当ててもキリがないでしょう。

そもそもなぜ動機の話を鵜呑みにするのか?

たぶん、痴漢で捕まった男が、警察の取り調べで、「何でこんなことしたんだ?」と聞かれたときや、この記事に出てくる福祉従事者のような人が、仕事上、痴漢常習者にヒアリングしたときに、痴漢者から「仕事のプレッシャーでストレスフルな日々を送っていて、ついやってしまった」と言うケースが多いのだろう。取り調べる警察職員が男ならなおさらだ。男なら仕事のプレッシャーといえば多少理解は得られると思うだろうから。
※2016/11/15 22:36のコメント

例えば、痴漢常習者たちの間で、
「初犯で捕まったときは、警察職員に『仕事のストレスが溜まってて、ついやってしまった。上司の締め付けが厳しく、同僚に負けられないという重圧もあった』って言えば、たいてい同情して、うまくいけば、痴漢された女にも責任があるっていう流れに持っていけるよ」
っていう情報が流通してる可能性はないでしょうか?
※2016/11/15 23:16のコメント

寄せられているコメントでもこういった形で指摘されていますが、仕事のストレスが原因という話をする方も、その話を聞く方にも問題があると思います。

仕事のストレスというのはいわば使い古された常套句で、取り調べを行う刑事からしても供述調書を作成するにあたってシナリオとして落とし込みやすいのか、そのまま採用されて報道される場合もこの点が強調されやすい面があります。

これを動機として話す側にしても、痴漢などの性犯罪に至るまでの、言ってしまえば恥ずかしい心理プロセスを詳しく説明しなくてもありがちな話として受け止めてもらえるのでありがたい常套句と言えるでしょう。

事件の取り調べの上での話ならまだいいかもしれませんが、専門家として取材を受けている社会福祉士がそれを鵜呑みにし、常套句として多数の人が仕事のストレスを原因として挙げるものだから「直接的な動機が性欲なのは少数派」とするのはお粗末としか言えません。

「駅のトイレなどでマスターベーションをして痴漢行為を完結させる人は、もちろん性欲という動機が背景にあると思われますが、実はこれは少数派。多くは行為中に勃起すらしていないという調査報告もあります」

男同士で飲みながら行う猥談の中でならともかく、取り調べやカウンセリングなどの場において素面で自らのこういった事情を説明するのは男にとってなかなか厳しいものがあります。駅のトイレでなくとも自宅に帰ってからしているかもしれませんし、人によってはそのときの記憶が長く保持されて数日後、数週間後でも思い出して「ネタとして使える」場合もあるでしょう。

「駅のトイレなどで痴漢行為を完結させる人は少数派」や「多くは行為中に勃起すらしていない」などと言いますが、そもそもこれらは自己申告でしかありません。確かにこういったケースも存在しますが、それを多数派として一般化するには根拠が脆弱すぎると感じます。

それ以前に「ストレスが原因だとしても何?」という話

仮にこの記事が言うように痴漢する人において「動機が性欲というのは少数派」で「仕事のストレスが引き金になっていることが多い」ということが事実だとしても、そこに焦点を当てて取り上げたところで「だから何?」と感じます。

「俺にストレスを与えると通勤中に痴漢するぞ(、だからストレスを与えるな)」ということでしょうか。残念ながらこういった脅しじみた主張が通用しようがしまいが幸せになる人は誰もいないことでしょう。

記事における煽り部分とも思えますが、仕事のストレスなどといった生きる上で避けがたいことを性犯罪のきっかけとして一般化し、また、強調することは性犯罪に及んだ人を過剰に甘やかす結果にしかならないと思います。

まとめ

痴漢したことで逮捕された人やその後カウンセリングなどにかかっている人よりも、まだ捕まっていない人や捕まっていても治療の網にかかっていない人の方がはるかに多いはずです。一部の例をもって性犯罪者を十把一絡げに病気とすることには疑問を感じます。

「小さな成功体験」でハマっていくの章など得心する部分もありますが、それ以外は手垢の付いた表面的な展開でしかないと思います。専門家の社会福祉士へ取材した記事でこれはないなぁというところです。

なお、この記事の次で具体的な取り組みについて触れていくようなので、次回記事が公開されたらそちらも見てまいりたいと思います。

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