盗撮などの性犯罪での逮捕やその前後に関する情報を配信してまいります。

盗撮で逮捕される日

逮捕される前に読む話

盗撮に関する量刑の傾向

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どういった処分になるのか?

盗撮の場合に適用される可能性がある罪は各都道府県の迷惑防止条例違反軽犯罪法違反住居(建造物)侵入児童ポルノ禁止法違反などが挙げられます。

迷惑防止条例違反

迷惑防止条例は各都道府県で定められている条例で、都道府県によって本来の名称に違いがありますが公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例としている都道府県が多いようです。

条文も都道府県によって若干違いがありますが、東京都の例では「公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。」に該当することによって成立します。

罰則もこれまた全国一律ではなく、東京都と神奈川県を除いては6月以下の懲役又は50万円以下の罰金と定められていますが、東京都と神奈川県に限っては1年以下の懲役又は100万円以下の罰金と他の道府県の倍になっています。また、常習性が認められた場合はいずれも懲役の上限がさらに倍になります。

適用されるケース

上述のように都道府県ごとに条文の微妙な違いがあることから適用されるケースにも違いが出る場合があります。例えば「後ろ姿を撮影しただけで逮捕された」といったものや「脚を撮影して逮捕された」といったようなものです。

これらについては都道府県ごとに運用が異なっている場合がありますので各都道府県における条例や実際に逮捕されて報道されている情報をあらかじめチェックしておくことが重要です。

また、最初に取り調べを担当する刑事の認識や裁量等によって違いが出てくる場合も実はあり、アウトになるケースでも微罪処分とされて厳重注意の上で事実上のお咎めなしということもあります。ただ、これについてはコントロールしようがない点なので期待しない方がよいでしょう。

盗撮といった場合に一般的に想定される「スカート内にカメラを差し向けて撮影した」といったケースではほぼ間違いなく適用されます。

なお、「公共の場所若しくは公共の乗物において」という条文によって学校内やオフィス内など公共の場所ではないところで盗撮を行った場合に適用できないケースがありますが、都道府県によっては条例を改正してそういった場所でも「公共の場所若しくは公共の乗物」と同じように適用できるようにする動きが見られています。

量刑の傾向

量刑については計画性や常習性、犯行態様や逮捕後の態度、前科の有無や被害者の処罰感情などによって総合的に判断されますが、微罪処分となる場合は犯情が悪くなく、被害者がすでに立ち去っていてどこの誰だかわからない(=被害届が出ていない)といったものや何のデータ(=証拠)も残っていないといった限定的なケースになるでしょう。

初犯の場合は概ね30万円程度、2回目ですと概ね50万円程度の罰金刑になることが見込まれますが、2回目でも常習性が見られたり手口が悪質だったりなど犯情が悪い場合は公判請求されて裁判になることもあります。

3回目ともなると公判請求されることが考えられ、裁判になるのが初めてであれば執行猶予付きで懲役4月程度が予想されます。公判請求されて裁判で罰金刑になるというケースはあまりありません。

なお、東京都と神奈川県では罰金刑の上限として一応100万円まで定められていますが、実際に100万円の罰金刑となっている判例はあまりなく、50万円の罰金刑では済まないと判断されたら公判請求されると考えておいた方がいいでしょう。「裁判が嫌だから100万円の罰金にしてくれ」と願っても受け付けられることはまずありません。

それ以上重ねると、前回の執行猶予期間中であればほぼ間違いなく実刑判決となり、前回分との合算で約1年弱の懲役刑として刑務所へ行くことになるでしょう。執行猶予が切れていても前回から期間が経っていなかったり犯情が悪かったりする場合は執行猶予が付かずに実刑判決が出ることがあります。

当然ながら回数を重ねるたびに罰が重くなっていきますが、前科がある場合はそれが盗撮以外であってもカウントには含めて考えておいた方がいいでしょう。さらに、盗撮を含めた性犯罪の前科ではなくとも過去に服役したことがある場合は1回目ないし2回目の盗撮で実刑になることは十分あります。

軽犯罪法違反

軽微な秩序違反行為に対して拘留または科料を定める法律で、懲役刑や罰金刑はありません。

条文としては「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」に該当することによって成立します。

罰則は1日以上30日未満の拘留または1000円以上1万円未満の科料と定められています。

適用されるケース

上述の条例改正による迷惑防止条例違反の適用や後述の住居(建造物)侵入が適用されるケースの方が多くなっていますが、「公共の場所若しくは公共の乗物」以外での盗撮に迷惑防止条例違反が適用できない場合に軽犯罪法違反が適用されるケースがあります。

量刑の傾向

罰則としては比較的軽微ですが、「1日以上30日未満の拘留」となることは稀で多くは「1000円以上1万円未満の科料」となります。

住居(建造物)侵入

刑法130条前段に定められており、条文としては「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した者」に該当することによって成立します。

罰則は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」と定められています。

適用されるケース

盗撮の目的で個人宅の敷地内に侵入した場合や、建物の浴場や更衣室、トイレなどに侵入した場合に適用されます。侵入したこと自体が罪に問われますので、実際に盗撮を行っていたかどうかは関係ありません。

「正当な理由がないのに」という条文が若干曲者で、先に正当な理由があって立ち入り、その後に盗撮の目的を持ったということになると適用できないケースがあります。ただ、そういったケースは稀で、正当な理由が先にあったという内面の問題を客観的に説明することが困難でもあり、刑事の方も「最初から盗撮の目的が(少しは)あっただろう」などと認めさせる方向に持っていきますので「正当な理由があった」と主張するのは難しいところです。

量刑の傾向

懲役刑の場合と罰金刑の場合との差が比較的大きい特徴があり、念のため触れておきますが「又は」というのはどちらか好きな方を選べるという意味ではありません。

前科がない初犯で、軽犯罪法違反以外で他に適用される罪がないといったような軽微な場合は不起訴や10万円以下の罰金刑で済むことも見込まれますが、それ以外の場合で軽い処分となるのは難しいでしょう。

前科がある場合は公判請求されることが予想され、その後は迷惑防止条例違反で触れたように情状によって執行猶予が付けられるかどうかが決まってきます。

他の罪とセットになった場合は罰金刑であったとしても額の大きい方が適用されますので、例えば迷惑防止条例違反とセットになる場合では30万円~50万円程度の罰金刑が見込まれます。悪質性や常習性によっては罰金刑では済まされず公判請求されることもありますが、懲役刑が選択されるケースでは迷惑防止条例違反よりも罰則が厳しいので思いのほか重い判決になることもあります。

また、侵入した場所が一軒家の個人宅以外の場合では示談が成立しにくくなる特徴があります。それは示談交渉の相手方が変わってくるためで、一軒家の個人宅では世帯主など個人との交渉になりますが、例えば学校の場合は校長や学長などになり、集合住宅の場合は管理会社などになります。

示談ではその人(または法人)の責任において行うことになりますので、不特定または多数の利用者がいる場所へ侵入したケースでは不要な責任を負わないよう示談交渉を拒否する傾向があります。それはそれで理解できる心情ですが、示談が成立しない場合はやはり量刑としては重くなってきます。

児童ポルノ禁止法違反

児童買春や児童ポルノに関する行為を規制し、児童の権利を保護するための法律で正しくは児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律と言います。

条文としては第7条に複数定められていますが、盗撮に関係するものとしては「児童ポルノを製造した者」に該当することによって成立します。

罰則は児童ポルノの製造の場合は「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」と定められています。

適用されるケース

まず、児童ポルノとは以下のように定められています。

児童ポルノの定義

  1. 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
  2. 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
  3. 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

ここで言う児童とは18歳に満たない者を指します。

したがって、盗撮の場合に適用されるケースとしては「浴場や更衣室、トイレなどで衣服の全部または一部を脱いでいる児童を盗撮する」といったものや、「児童との性交や性交類似行為の様子を盗撮する」といったものなどになります。

条文が若干ややこしく、また、法改正によって盗撮に関する規定が加わったことで誤解している人も多いのですが、盗撮といった場合に一般的に想定される「スカート内にカメラを差し向けて撮影した」といったケース、いわゆる「逆さ撮り」では(今のところ)適用されません。

上述の定義から、まず1と2が逆さ撮りの場合に該当しないことは明らかなので残っている3、いわゆる「3号ポルノ」が該当するか否かという議論は確かに存在します。ただ、逆さ撮りでは下から撮影しているだけで被害者は完全着衣なので「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」に該当しないということで(今のところは)児童ポルノではないという法解釈となっています。

また、第7条5項に「ひそかに」として隠し撮りに関して規定されましたが、対象が上述の定義に限られているため、結局児童ポルノに該当しないことには変わりありません。

そもそも児童を対象とした逆さ撮りによる下着等の撮影が児童ポルノの製造となるのであれば、日々報道されている盗撮事件では迷惑防止条例違反ではなく、より罰則が重い児童ポルノ禁止法違反で逮捕するはずですがそういった報道はありません。

ただし、これらはあくまで現時点での法解釈による運用なので、今後法改正や法解釈の変化などで逆さ撮りによる下着等の撮影でも児童ポルノの製造とされる可能性はあります。

量刑の傾向

盗撮の場合に適用される可能性がある罪の中でも比較的罰則が重くなっており、初犯であっても逮捕されるケースが目立っています。盗撮ではない児童ポルノ事案の場合はデータを破棄するなどした上で弁護士とともに自首等することで逮捕を回避できるケースがありますが、盗撮による児童ポルノ製造の場合はそもそもの動機や手口が悪質で犯情が悪いケースが多いので逮捕を回避して在宅事件とするのは難しいところです。

前科がない初犯の場合、情状によっては50万円~100万円程度の罰金刑が見込まれますが、最初から公判請求されることも珍しくありません。盗撮などの同種前科がある場合は間違いなく公判請求されると考えておいた方がよいでしょう。

公判請求されて裁判になることが初めてであれば執行猶予付きで懲役1年ないし1年6月程度が予想されますが、前科があって執行猶予期間中という場合はほぼ間違いなく実刑判決となるでしょう。その場合、もともとの罰則が重いので迷惑防止条例違反だけを繰り返して実刑となるよりも刑期が長くなります。

まとめ

盗撮で逮捕される場合はその多くが迷惑防止条例違反となりますが、都道府県によって適用されるケースや運用などが異なっている場合がありますので、各都道府県における条例の内容等を確認しておくことが重要です。

また、住居(建造物)侵入が適用されるケースでは迷惑防止条例違反とセットになって量刑が重くなる場合もあり、児童ポルノ禁止法違反に至っては単体でも罰則が重いので安易な判断には注意が必要です。

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