先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
盗撮目的で侵入 元神奈川新聞支社長、起訴内容認める /神奈川
盗撮目的で女性宅へ侵入したなどとして、住居侵入と県迷惑防止条例違反の罪に問われた元神奈川新聞横須賀支社長(59)に対する初公判が24日、横浜地裁横須賀支部(植村幹男裁判官)であり、被告は起訴内容を認めた。
起訴状によると、被告は2016年11月18日、無施錠だった横浜市内の女性宅に盗撮目的で侵入し、17年10月14日には横須賀市内の飲食店トイレに盗撮目的で小型カメラを設置するなどしたとされる。
検察側は冒頭陳述で、今年1月には被告が毎日のように盗撮を繰り返していたことなどを明らかにした。
引用元 : 毎日新聞 2018年4月25日配信
※被告人の氏名部分を修正しております。
以前の記事で逮捕されたときのニュースを取り上げていた事件の続報です。どうやら罰金では済まされず起訴されていたようで、公判の概要が報道されています。
おそらく初犯と見ていましたが、単純な盗撮事件ではなく態様が悪質で常習性も窺われ、また、迷惑防止条例違反だけではなく住居侵入の事実もあったことから公判請求されたものと思われます。常習性については冒頭陳述でも「今年1月には毎日のように盗撮」として強調されています。
この記事では公判の概要に触れられているだけなので事件の詳細が読み取れませんが、もともとは腕時計型やペン型などのカモフラージュカメラを複数所持して使い分け、盗撮した画像や映像が数万点も15台のHDDに保存されていたという、強い悪質性と常習性が窺われる事情があります。
神奈川県 迷惑行為防止条例
第3条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(中略)
常習として前条第1項の違反行為をした者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(中略)
実際に常習として起訴されているかどうかはわかりませんが、もしそうであっても検察官の求刑で懲役2年とまではいかないと思いますので懲役1年前後に執行猶予3年程度といったところでしょうか。
住居侵入罪の法定刑が3年以下の懲役なのでそちらの方が重いですが、盗撮目的での住居侵入または建造物侵入と迷惑防止条例違反がセットになっている過去のケースと照らすとそこまで住居侵入罪の法定刑に引っ張られているわけでもないので、事件の内容的にも盗撮の方が主になろうかと思われます。
女子高生盗撮試み 容疑の40歳男逮捕 神奈川
盗撮目的でスマートフォンを女子高校生のスカート内に差し向けたとして、相模原署は県迷惑行為防止条例違反の疑いで、相模原市南区西大沼の自称会社員(40)を逮捕した。容疑を認めている。
逮捕容疑は、24日午前6時50分ごろ、同市中央区のJR横浜線矢部駅構内の上りエスカレーターで、高校3年の女子生徒(17)=横浜市磯子区=のスカート内にスマホのカメラレンズを差し向けたとしている。
同署によると、犯行を目撃した男性会社員(41)が容疑者を取り押さえたという。
引用元 : 産経新聞 2018年4月26日 7時55分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
スマホ+エスカレーターという古典的で稚拙な手口による盗撮事件です。記事に掲載されている内容には何の変哲もありません。
その中でも触れる点としては逮捕容疑が女子高生のスカート内にスマホのカメラレンズを差し向けたということで、見出しでも「盗撮試み」とされていることからおそらく実際に撮影を行う前に取り押さえられたと見られます。
消音アプリ等を使ってスカートの下でシャッターボタンを押そうとしていたのか、あるいは動画で録画状態にしたままスカートの下へ持っていこうとしていたのか、いずれにしてもスカート内の下着等が盗撮できていれば通常そのように発表されますので、この事件ではスマホを構えて試みた段階で取り押さえられたのでしょう。
神奈川県の迷惑防止条例でも盗撮目的でカメラなどを向けるだけでアウトになる規定ですので、まだ撮影に至っていない段階でも盗撮目的でスマホを向けていれば逮捕される場合もあります。
神奈川県 迷惑行為防止条例 第3条
- 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から、又は直接に人の身体に触れること。
- 人の下着若しくは身体(これらのうち衣服等で覆われている部分に限る。以下「下着等」という。)を見、又は人の下着等を見、若しくはその映像を記録する目的で写真機その他これに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置し、若しくは人に向けること。
- 前各号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、人を著しく羞恥させ、若しくは人に不安を覚えさせるような方法で住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服等の全部若しくは一部を着けないでいるような場所にいる人の姿態を見、又は、正当な理由がないのに、衣服等の全部若しくは一部を着けないで当該場所にいる人の姿態を見、若しくはその映像を記録する目的で、写真機等を設置し、若しくは人に向けてはならない。
この段階で取り押さえられるとなると、エスカレーターに乗る前から動きや仕草が怪しかったなどよほど挙動不審だったのではないでしょうか。それに気付いて注視していた男性が、被疑者がスマホを構えて女子高生に向けたところで捕まえたということなのかもしれません。
捕まるニオイがプンプンする手口と場所ですが、それどころか盗撮自体する前に取り押さえられて逮捕というのは何ともマヌケな話です。
「着替えるところを見たかった」施術室にカメラ設置し女性患者盗撮した整体師逮捕
整体院の施術室に取り付けたカメラで女性患者の着替えを盗撮したとして、奈良県警生駒署などは25日、県迷惑防止条例違反の疑いで、奈良市松陽台の整体師の男(45)を逮捕した。「着替えるところや裸をみたかった」などと容疑を認めているという。
逮捕容疑は今年1月12日ごろ、奈良県生駒市内で経営する整体院の施術室内に小型カメラを設置し、30代女性が着替える様子などを盗撮したとしている。
同署によると、「整体院で盗撮が行われている」と110番があったため、男を任意で聴取。所持していたカメラに、複数の女性が着替える姿が写っていたという。同署は余罪を調べている。
引用元 : 産経新聞 2018年4月26日 8時55分配信
事件の内容としては過去の記事で取り上げた事件と似ており、整体院と整骨院なので業種としても似通っていますがそれはたまたまかと思います。
先の記事の事件では盗撮が発覚した経緯に触れられていない後日逮捕事案で、患者にバレて通報されたか従業員からの内部告発かといったところでしたが、この事件では110番通報がきっかけとなっています。
内部告発の場合はまず警察署などへ行って相談するのではと思われますので、いきなり110番通報しているということは施術室内に仕掛けていた小型カメラが患者に見つかって即通報、という流れなのかもしれません。
自らが経営し勤務している整体院内での盗撮が迷惑防止条例違反なのかという点については、奈良県の迷惑防止条例ではこれを禁止する規定があります。
奈良県 迷惑防止条例 第12条
- 他人の胸部、 臀部、下腹部、大腿部等(以下「胸部等」という。)の身体に触れる行為(着衣その他の身に着ける物(以下「着衣等」という。)の上から触れる行為を含む。)であつて卑わいなもの
- 着衣等の全部若しくは一部を着けないでいる他人の姿態若しくは着衣で覆われている他人の下着若しくは胸部等の身体をのぞき見し、又は写真機等を使用して、その映像を記録する行為であつて卑わいなもの
- 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動
何人も、みだりに卑わいな行為であつて次の各号に掲げるものをしてはならない。
- 公共の場所及び公共の乗物以外の場所から、写真機等を使用して、透視する方法により、公共の場所にいる他人若しくは公共の乗物に乗つている他人の下着若しくは胸部等の身体を見、又はその映像を記録すること。
- 写真機等を使用して、住居、浴場、更衣室、便所その他の人が着衣等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所(公共の場所及び公共の乗物を除く。)に当該状態でいる他人の姿態の映像を記録すること。
女性患者の着替えを盗撮したとのことですので、括弧書きで「公共の場所及び公共の乗物を除く」とされているようにこの事件では第2項第2号が適用されていると見られます。
逆にこの条例の規定では整体院内で「着衣等の全部又は一部を着けない状態」ではない状態、例えば完全着衣状態のままスカート内の下着を盗撮したという事案だったとしたらこの条例違反には問えなかったのではと思われます。