女性の人権を踏みにじる最低のビジネス
本サイトでも何度か取り上げてきた盗撮動画サイトの摘発事件について、続報ではありませんが毎日新聞から関連記事が出ていましたので見ておきたいと思います。
この事件についてはもう少し続報が出てきそうな気がしていましたが、今回の記事からまとめ的な印象も少し感じられるので別件の再逮捕などがあれば続報が出る程度で、裁判や判決の内容などは出ずにニュースとしては終息していくかもしれません。
盗撮動画ビジネスの実態
今回の記事では盗撮した人から動画を買い取って有料配信するサイトのビジネスについて触れられています。
女性の盗撮動画などを有料配信するサイト運営会社が福岡県警などに摘発された事件は、インターネットを舞台にした動画ビジネスが、盗撮被害に拍車をかけている実態を浮き彫りにした。同社はサイトで動画の「高価買い取り」をうたい、200人以上からわいせつな動画を買い取っていたことが判明。著名人の盗撮動画の提供者に100万円以上の報酬を払ったケースもあった。ある県警幹部は「女性の人権を踏みにじる最低のビジネス」と捜査を振り返った。
「当初は自分で観賞する目的で盗撮していたが、動画の買い取りサイトを発見してからは月平均で約20万円の報酬を得ていた」
サイトに盗撮動画を提供したとして、リベンジポルノ防止法違反(公表目的提供)に問われた男について、10月20日に福岡地裁であった初公判。検察側は男が盗撮動画を売って多額の収入を得ていた実態を明らかにした。
引用元 : 毎日新聞 2016年11月21日 15時37分 配信
盗撮動画に関しては市販されているAVなどを始めとしたいわゆるヤラセとの区別が困難で、無修正や児童ポルノに該当するもの以外は第三者が見て即犯罪とはなりにくいため、ネット上では多数の盗撮動画が公開され、また販売されています。
しかし、映像が撮影されている状況などから見てヤラセと判断する方が不自然な、いわゆるガチモノも含まれており、そういった映像をお金を払ってでも見たいというユーザーがいることもまた事実です。
上記の供述内容にあるように、サイトへ動画を提供している人でも元々は自らの性的嗜好のために盗撮していたというのが普通です。ところがそれがお金になるとわかったらまさに一挙両得ですので、自らの性欲を満たした上で動画を販売して収入を得ようと考える人がいてもおかしくはありません。
盗撮という犯罪行為が前提に立っているリスクのあるビジネスと言えますが、映像の性質上、犯罪行為に及んでいる撮影者が映像に入らないことがほとんどだったり、上述したようにヤラセとの区別が難しかったり、また、いわゆるフェチのジャンルなので同様の性的嗜好を持つ人以外の目には留まりにくいといった要因があり、事実上野放しになっているといっても過言ではない実態があります。
盗撮動画の取り締まりの難しさ
今回の一連の事件ではサイト側は被害女性の氏名やプロフィールをほぼ公開していたと言えるような状態で販売していたことで被害女性本人が知るところとなったことがきっかけと見られます。
これはまさに氷山の一角でしかなく、他のガチモノの大多数においては被害者の知らないところで流通しています。さらに、この事件ではトイレや更衣室などでの様子が無修正で配信されていたり、リベンジポルノや名誉毀損に該当する販売方法だったりしたことなどで刑事事件として扱われていますが、これらに該当しない内容や販売方法だったとしたら被害者の知るところになっても警察は何もできなかった可能性があります。
また、毎日新聞の記事の中段からも網羅的な取り締まりの難しさが伝わってきます。
捜査関係者らによると、サイト運営会社は五つの動画配信サイトを持ち、盗撮を含む1万本以上のわいせつ動画を有料で配信。売り上げは14年以降のわずか約2年半で約10億円に上っていた。東京にある関係先から押収された動画提供者リストには、200人以上の名前や報酬の振込先となる口座番号が記載されていたという。
盗撮動画は、トイレや更衣室、温泉の脱衣場などで撮影されており、著名人を狙い撃ちしたとみられる映像もあった。インターネットで公開されると拡散を食い止めるのが難しいため、被害者の精神的被害は深刻で、ストレスによる体調不良で通院し、仕事にまで影響が出ているケースもあるという。映像の拡散を確実に防ぐ手立てはなく、ヤフーなどネット事業者でつくる「セーファーインターネット協会」は昨年、ネット上で見つけた盗撮動画や画像のうち1446件の削除を要請したが、実際に削除されたのは約半数の761件にとどまった。
引用元 : 毎日新聞 2016年11月21日 15時37分 配信
1万本以上のわいせつ動画の販売で売上はわずか2年半で約10億円、200人以上にのぼる動画提供者というのはセンセーショナルな内容ではありますが、視点を変えるとそれだけの内容でありながら一連の事件で対象になっているのはその中のわずか数件、動画提供者は1,2人といった状況です。仮に報道されていない分があるとしても全体の1割にすら満たないでしょう。
さらに、セーファーインターネット協会が行った削除要請の件数も紹介されていますが、盗撮動画や画像を自ら発見したにしろ通報を受けて確認したにしろ、何をもって違法な盗撮動画として判断するのかといった問題があります。市販されている盗撮AVの海賊版の削除要請も含まれているとしたら趣旨から外れてすぎていてお笑い種でしょう。
違法な盗撮動画や画像という何らかの根拠をもって削除要請したのでなければ上記の1,446件という数字に意味はありませんし、逆に被害者本人からの要請などそれなりの根拠があるならば1,446件のうちどれだけ刑事事件化できているのかという話になります。同種事件で報道されているのはその1%にも満たないのではないでしょうか。
まとめ
盗撮する人、それを販売する人、それを購入する人の三者がいて成り立っており、そこで行われていることは確かに被害者の人権を蔑ろにするビジネスです。しかし、表立って犯罪行為に及ぶ盗撮の段階を抜けてしまうと一般の目が届きにくいサイトへと潜り込んでしまうので被害者が一貫して気づきにくいビジネスでもあります。
盗撮に用いられるカメラの高性能化や小型化、さらにネット環境の向上もあるので何らかの対策を講じなければ今後増えることはあっても減ることはないと考えています。この辺りの法整備については難しい面もありますが、違法なものについては取り締まっていけるような対応が必要でしょう。
盗撮動画サイトにおける販売に関しては折を見て別の記事でも深堀りしていきたいと思います。