もはや盗撮の定番ツール
スマホが普及してすでに久しく、以前まで主流だった折りたたみ式などの携帯電話は最近では珍しいものとなりました。過去の携帯電話にもカメラは付いていたので当時から携帯電話を用いた盗撮事件は見られていましたが、スマホに搭載されているカメラの高性能化も影響して報道される事件も増えています。
今回はスマホを用いた盗撮の危険性やリスクについて触れてまいります。なお、今回はスマホで比較的容易に実行でき、かつ事件性があるものとしてスカート内盗撮に関する話とします。
スマホによる盗撮事件は実際に多いのか?なぜ多いのか?
盗撮事件が報道される際、撮影に使用されたものとして挙げられていることが最も多いのがスマホやカメラ付き携帯電話です。平成27年版犯罪白書でも認知件数・検挙件数・検挙人員等の推移の節で以下のように報告しています。
(6)迷惑防止条例違反の盗撮事犯
(中略)
供用物では,スマートフォン・カメラ付き携帯電話が70.9%(2,312件)と最も高く,次いで小型(秘匿型)カメラが11.0%(359件)であった(警察庁生活安全局の資料による。)。
検挙されたもののうち7割がスマホやカメラ付き携帯電話による盗撮であり、次点の小型カメラの約6.45倍という圧倒的なシェアを占めています。これらのことからスマホによる盗撮は間違いなく多いと言って差し支えないでしょう。
なぜこれだけ多くの盗撮事件でスマホが使用されるのか考えますと、まず第一に常に持ち歩いていて生活必需品となっていることが挙げられます。料金や仕事の都合などでいわゆるガラケーを使用している人もまだ多くいますが、消費動向調査によると普及率はスマホの方が多数派となっています。
動機はどうあれ盗撮を行うにあたっては新たに盗撮用の機材を用意するより手元にあるものを使った方がお手軽なのは明らかです。手に持って歩いていても違和感がないことからも万が一の場合の言い訳を狙っている人もいるでしょう。
また、最近のスマホに搭載されているカメラは4K撮影ができるものも珍しくなく、ヘタなビデオカメラより高画質な画像や映像を撮影することができます。
身近にあるもので高画質に撮影できるのであれば、わざわざ専用のカメラを別途購入して盗撮しようと考える人が少ないのは当たり前とも言えます。
しかし、逮捕される件数も報道される件数も最も多いという状況はここ数週間、数か月間で始まった話ではありません。以前からスマホやカメラ付き携帯電話による盗撮事件が頻繁に報道されている中で、いわば最もリスクが大きい方法が依然として採用されているのは上述したもの以外にも理由が存在しています。
スマホで盗撮する人の心理
2ちゃんねるなどの掲示板において「盗撮するならスマホか小型カメラか」のような議論が行われることがたまにあります。これについても今になって始まった話ではなく、頻繁ではないものの以前からある議論です。
こういった議論に寄せられている意見を総合するとスマホを盗撮に使い続ける人には以下のような考えがあることが浮かび上がってきます。
なぜスマホを使い続けるのか
- そもそもスマホによる盗撮で捕まりやすいことを知らない
- スマホによる盗撮でも自分は捕まらないと思っている
- 盗撮用のカメラを用意するほど深みにハマりたくないと思っている
- スマホによる盗撮なら大目に見てもらえると思っている
元々が犯罪なのでいずれもまとも理由ではないのですが、当人らにとっては一応の筋は通っているようなのでこれらについて1つずつ検討してみます。
捕まりやすいことを知らない or 自分は捕まらないと思っている
念のため記載しておきましたが、これら1と2についてはほとんど論外と言えます。後者についてはこちらの記事でも触れているような自らへの過信と捕まるリスクの無視または矮小化というだけの状態です。
これらについてはスマホだろうが小型カメラだろうが、または盗撮以外の犯罪であろうが時をおかずして捕まることでしょう。
盗撮の深みにハマりたくないと思っている
こうした考えの人は少なくなく、盗撮という犯罪に手を染めるにあたって盗撮にしか使わないような専用のカメラを用意するほどの深みにハマりたくないから、そこまで堕ちたくないから、といった理由でスマホを使い続けているようです。
これは賛同はしませんが心情としては理解できるところで、確かに最も多く使用されて(捕まって)いるスマホではなく、より悪質なイメージのある小型カメラ等の使用では明らかな犯罪者然とした印象があるので意識して避け、スマホを使い続けるのはわからないでもありません。
しかし一般社会から見ればどちらも盗撮犯として違いはありません。シンナーや大麻を使用している人が「シャブ(覚せい剤)とかコカインとかまでやったら終わり」と言っているのを見てどう感じるでしょうか。
要するに目くそが鼻くそを笑っているだけで、どちらにも関わりがない人にとっては同じ薬物犯罪であり、同じ性犯罪でしかありません。自分の中で納得したいための言い訳というだけでしかなく、捕まってしまえば等しく盗撮犯です。
その一方で「そこまで堕ちたくないから」という理由に着目すると、万が一捕まって現実を見たときに前科が付いた状態が「堕ちたくないと思っていた状態」と捉える人も出てくるでしょう。そうなると、もう「そこまで堕ちてしまった」のであればと開き直り、小型カメラの使用などで手口が巧妙化した上で再犯に及ぶリスクにもつながる可能性があると考えています。
スマホなら大目に見てもらえると思っている
こういった理由も根強く残っているようですが、これは実態を知らないまま警察をナメている考えです。確かに小型カメラなどを鞄や靴に仕込んで盗撮するのでは大ごとになりそうで、スマホならちょっとしたイタズラで済まされそうというのはイメージとしては理解できなくもありません。
しかし、立件に必要十分な証拠が押さえられていればスマホであろうと何であろうと警察が大目に見ることはありません。証拠が揃っているのに「スマホだから」でお目こぼしするほど警察は甘くなく、その後の捜査方法や処分結果に違いはあれど温情を期待するのは希望的観測としか言えません。
この場合の「大目に見る」にも幅があると思いますが、まず「逮捕されずに厳重注意等で済む」といったような展開を考えるとこれが一番甘く考えているケースでしょう。このような処分で済むのは「被害者が立ち去っていてどこの誰だかわからない」だったり「被害者が(その場で)寛大な処分を望んだ」だったり「データがなくそもそも盗撮だったのかどうかも不明」などといったような場合です。これはスマホでも小型カメラでも違いはありません。
被害者が被害届をもって厳しい処分を望み、動かぬ証拠としてデータが押さえられているような状況で「スマホだから」という理由で見逃したとき、警察は被害者や市民にどう説明するのでしょうか。これは警察や被害者の温情に期待しているだけの希望的観測であってスマホを使用し続ける合理的な理由にはなりません。
次に「勾留されずに在宅事件で済む」や「軽い罰金で済んだ」という展開では、これは「スマホだから」で期待できるケースではあろうと考えます。しかしながら捕まったときにまず避けたいのは実名報道されることであるはずです。
上述したように盗撮で捕まっている件数も報道されている件数も一番多いのがスマホです。そんな状況の中、実名報道されてしまった後に「スマホだったから勾留されなくて良かった」「スマホだったから罰金が(小型カメラ等だったら30万円だったかもしれないところ)20万円で良かった」と思えるのでしょうか。
実名報道までされたらその後の捜査方法や処分結果がどうあれ大ダメージのはずです。それでも「良かった」と思えるのであればそれ以上言えることはありませんが、一番避けたいことが避けられていない時点でスマホを使用し続ける理由としては成立していません。
まとめ
スマホによる盗撮の危険性とともに、それでも盗撮にスマホを使い続ける心理について触れてまいりましたが、危険やリスクが大きいからスマホではなく別の方法にしろということではありません。
いかに危険な考えのもとでスマホをスカート内に差し向けているかが少しでも伝わり、今以上に同様の盗撮事件が増えない結果になれば幸いと考えています。