先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
<法廷の小窓>異常な執着 バルーン会場で「100人くらい盗撮」、猶予期間中に再犯
狙われたのは、昨年11月に佐賀市で開かれたバルーンフェスタの会場だった。「スマホを靴に固定し、レンズがある側は黒い紙を貼った。動画モードにして100人くらい盗撮した」。検察側は法廷で、県迷惑防止条例違反の罪に問われた介護士の40代男性被告の供述内容を説明した。
被告はバルーン会場で20代女性の後方から近づき、スカートの下に靴のスマホを差し向けて下着を撮影した。不審に思った男性客が警察に届け出た時には、既に同様の手口で犯行が何度も繰り返されていた。
以前も盗撮行為で罪に問われ、約4年半前に執行猶予付き判決を受けていた。だが1年後には盗撮を再開、まだ猶予期間中だった。今回の事件まで犯行を繰り返してきた被告。身体障害や難病を抱える家族と同居し、一家を支える「大黒柱」だったにもかかわらず、歯止めが利かなかった。「結局は性欲。職場のストレスもあり、解放の仕方を間違えた」と動機を述べた。
盗撮に関しては「窃視障害」という病があり、有識者は適切な治療を受ける重要性を説く。被告は4年半前の判決後、専門施設に行くつもりだったが「近くになかった」ため、結局は行かなかった。佐賀地裁は犯行を「常習」と認定、実刑判決を言い渡した。(判決=懲役5月)
引用元 : 佐賀新聞 2019年6月6日 11時51分配信
こちらは既に逮捕起訴されていて判決まで出ている盗撮事件について裁判の内容を報じたもののようです。事件を起こしたのは昨年11月とのことですが、裁判は最近行われたのでしょうか。よくよく見てみると裁判いつだったのかは書かれていません。
盗撮の手口としてはいわゆる靴カメに近いスタイルと見られ、スマホを靴に固定して上から黒い紙を貼ってカモフラージュしていたようです。それでも不自然に見えるだろうという想像を裏切らず現場でバレて通報されていますが、「動画モードにして100人くらい盗撮した」という程度には盗撮を繰り返すことができていたと見られます。
検察官による冒頭陳述に触れられていることからわかるようにこれは盗撮で公判請求されている事件です。盗撮の前科があったようで約4年半前にも公判請求されて執行猶予付き判決が出ているということは、さらにその前にも盗撮で捕まって罰金刑を受けていることが窺えます。
そして今回はついに懲役5月の実刑判決となっています。ただし、前回の執行猶予は既に満了していると思われ(猶予期間中だったというのは盗撮を再開した時期のことであって前回判決はわからないものの4年半も経っていれば満了しているのでは)、いわゆる弁当持ちでの実刑判決ではなく今回の5か月だけになるのではないでしょうか。
なお、今回の盗撮については常習として起訴されていると見られ、裁判官もそれを認定しているようです。常習盗撮として起訴されると法定刑が倍になることが各都道府県の迷惑防止条例に規定されており、佐賀県においてもそれは同様です。
佐賀県 迷惑防止条例 第3条
- 衣服その他身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から又は直接人の身体に触れること。
- 衣服等で覆われている人の下着又は人の身体をのぞき見すること。
- 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、公共の場所等又は特定多数の者が使用する場所等(事業所、学校その他の特定かつ多数の者が使用する場所又は貸切バスその他の特定かつ多数の者が使用する乗物をいう。次項において同じ。)において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
- 衣服等で覆われている人の下着又は人の身体を写真機、ビデオカメラ、携帯電話その他の機器(以下「写真機等」という。)を使用して撮影すること。
- 衣服等で覆われている人の下着又は人の身体を撮影する目的で写真機等を向け、又は設置すること。
何人も、正当な理由がないのに、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所であって、次に掲げる要件のいずれかに該当するものにおいて、当該状態でいる人の姿態を写真機等を使用して撮影し、又は当該姿態を撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。
- 公衆が利用することができること。
- 特定多数の者が使用する場所等にあること。
佐賀県 迷惑防止条例 第11条
常習として第3条又は前条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
前回が通常盗撮での起訴、今回が常習盗撮での起訴と考えると今回罰則の上限を求刑されているわけではないでしょうから、懲役6月程度の求刑が判決で5月になったといったところでしょうか。ごく短期ではありますが受刑者として服役することになり、また、一度常習盗撮ということになると出所後にもし再犯して捕まると高い確率でまた常習盗撮として起訴されてしまうことになるでしょう。
ここまで何度も繰り返してしまうようだと、根っこは性欲ではありますがもはや何らかの治療を受けないと出所後に再犯に及ぶ可能性は高いと考えられます。前回の裁判でもそうした治療に言及していたようですが、アルコールや薬物の依存症治療のクリニック等ならあっても性依存についてはほとんどが都市部にあるようなので佐賀県では「近くになかった」ということなのではないでしょうか。
これは個人的な想像ですが、短期の服役でも周囲にいるのは年単位の受刑者ばかりなわけで、最初は後悔や反省があっても出所する頃には他と比べても相当短くて済んだと考えてしまうかもしれません。もしそう考えているようだと、再び盗撮に及んでしまうのも時間の問題かもしれません。
市役所のトイレに小型カメラ 野洲市職員に有罪判決/滋賀
市役所の女子トイレに盗撮目的で小型カメラを設置したとして、県の迷惑防止条例違反などの罪に問われていた野洲市の職員の男に対し、大津地裁は7日、懲役5カ月・執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。
判決を受けたのは、野洲市の職員の男27歳です。
被告は、去年12月6日、自分が勤務する野洲市役所の女子トイレの個室内に動画が撮影できる状態で小型カメラを設置したとされ、県の迷惑防止条例違反などの罪に問われていました。
判決で、大津地裁の高橋孝治裁判官は、「盗撮で2回の罰金刑の前科があり、今回も予めカメラを購入するなど計画的で卑劣」などとして被告に懲役5カ月・執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。野洲市は、判決を確認し、早々に処分を検討するとしています。
引用元 : BBCびわ湖放送 2019年6月7日 19時31分配信
今年2月と3月に取り上げていた公務員によるトイレ盗撮事件の続報で、迷惑防止条例違反と建造物侵入の罪で公判請求された事件について判決が出たようです。公判請求されたからには罰金刑では済まされないだろうと述べておりましたところ、やはり懲役5月に執行猶予3年となりました。
また、先の記事でこの事件が公判請求された理由について被告人に前科がある可能性を挙げていましたが、案の定「盗撮で2回の罰金刑の前科」があったようです。これまで取り上げていた記事では被告人の前科について触れられていませんでしたが、今回明示されたことで何故公判請求までされたのかという点について合点がいきました。
盗撮目的でトイレ等にカメラを仕掛けて迷惑防止条例違反と建造物侵入で捕まるという事件は少なくなく、とりわけ最近はよく目にするようにもなってきていますが初犯では罰金というケースが多いので、そうした中で公判請求されるということはやはり相応の事情があったということになります。
本記事1件目の事件は執行猶予付き懲役刑の判決の後に再犯に及んで実刑、というケースなので何度も捕まった場合の量刑相場としても格好の事例になっています。盗撮に関する量刑の傾向でも述べているように、盗撮だけを繰り返すという条件なら2回目までは罰金、3回目で執行猶予付きの懲役、4回目で実刑というのがお定まりのコースではないでしょうか。
盗撮の悪質性や常習性などによってはこれより早く実刑に至る場合もありますが、少なくともこの被告人においては順調にこのコースを歩んでいっており、本記事1件目の事件により実刑判決を下された被告人が彼の未来の姿ということになってしまうかもしれません。
執行猶予付きとはいえ懲役刑を科されて前科3犯ともなればさすがに市としても懲戒免職せざるを得ないと思われますが、被告人の年齢が27歳とまだ若いことを考えると、今後自棄になってさらなる再犯に及び合計4件の前科と共に20代の内に刑務所へ行くことになる可能性も十分あります。
そこまで転がり落ちてしまうとさらに落ち続けるのは容易な一方で人生を立て直すのは非常に困難と言えますので、この被告人にとってはこれを機に踏み止まれるかどうかで今後の一生が決まると言っても過言ではないのではないでしょうか。
奈良市立小教諭の48歳男をスカート内盗撮容疑で再逮捕
京都府内で女子高生のスカート内を盗撮したとして、奈良県警奈良西署は7日、京都府迷惑行為防止条例違反(卑わいな行為の禁止)容疑で、奈良市立小学校教諭の男(48)を再逮捕した。「身に覚えがない」と容疑を否認している。
男は6日朝、奈良市内の市道で、通行人に「車の中からビデオカメラを外に向けている人がいる」と110番され、駆けつけた同署員の職務質問を受けた。その際に車を急発進させてこの署員の足をひいたとして、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕されていた。
再逮捕容疑は5月31日夕、京都府木津川市の商業施設で、座っていた京都市内に住む高校1年の女子生徒(15)のスカート内をビデオカメラで撮影したとしている。
同署によると、男が所持していたビデオカメラから盗撮したとみられる動画が見つかったという。
引用元 : 産経新聞 2019年6月7日 22時7分配信
小学校の教員による女子高生のスカート内盗撮事件です。経緯を見た感じでは接近してスカートの下にカメラを差し入れたのではなく、座っていた女子高生のスカート内を少し離れた場所からビデオカメラで撮っていたということでしょうか。
発覚のきっかけはこの盗撮行為を現場で通行人に怪しまれて通報されたことのようですが、駆け付けた警察官による職務質問から逃げようとしたのでしょうか、その際の悶着によって公務執行妨害の現行犯として先に逮捕されています。そして当初の盗撮行為について改めて再逮捕したということのようです。
逮捕容疑は6日午前8時20分ごろ、奈良市中登美ケ丘の路上で職務質問中に、普通乗用車を発進させ、右側後輪で巡査の右足をひいた疑い。巡査は軽傷だった。車は約5メートル進んだ所で、警察官の制止を受けて停止した。
容疑者は「車を発進させたが、足をひいたかは分からない」と容疑を一部否認している。
引用元 : 共同通信 2019年6月6日 18時40分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
盗撮については否認、公務執行妨害についても一部否認ということで争う構えのようですが、盗撮だけならまだしも警察官が怪我を負った公務執行妨害まであると今後の調べでは徹底的にやられてしまうのではないでしょうか。否認したままでは当然示談もできず、反省や謝罪の言葉も出てこないのでこのままでは2つ揃えて公判請求ということもあり得ます。
所持していたビデオカメラから盗撮動画が見つかっているので「身に覚えがない」と言っても説得力が無く、職務質問を行った警察官の「足をひいたかは分からない」というのも診断書等が出てしまえばお終いでしょう。公務執行妨害については盗撮などよりはるかに罰則が厳しいので、下手な入れ知恵や意地などから否認し続けていると当初は単純な盗撮だったものが思わぬ重罰に発展しかねません。
刑法 第95条
公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
否認したままだと初犯でも公判請求が見えてきそうな事件ですが、認めて頭を下げれば罰金で済む程度までは見込めるのではないでしょうか。しかし、認めたとしても警察官との示談は絶望的に難しいので公務執行妨害の方では無理でしょう。
仮に被疑事実を認め、盗撮の被害者とは示談ができたとしても不起訴となるのは難しく、示談できなければいずれの処罰も免れません。示談の成否からも影響しそうですが、否認から一転して認めても30万円から50万円程度の罰金は覚悟しておいた方が良いのではないでしょうか。