先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
盗撮繰り返した教諭 懲戒免職 島根
松江市の小学校の教諭が、児童が着替える様子をスマートフォンで繰り返し盗撮していたとして、島根県教育委員会はこの教諭を懲戒免職にしました。
懲戒免職となったのは、松江市内の小学校に勤務する教諭(23)です。
県教育委員会によりますと、教諭はことし2月以降勤務先の小学校の教室にスマートフォンを設置し、女子児童の着替えを盗撮する行為を繰り返していたということです。県教育委員会の聞き取りに対し盗撮したことを認め「女子児童の下着姿を見たかった。はじめは罪悪感があったが、成功するともっと見たいという気持ちが抑えられなくなった」と話しているということです。
盗撮行為は3か月で11回確認されたということで、県教育委員会は教職員の信頼を損ねたとして、12日づけで懲戒免職の処分としました。
県教育委員会学校企画課の木原和典課長は「教員の信頼を失墜したことは極めて遺憾で、県民の皆様に心からおわび申し上げたい」と陳謝しました。
引用元 : NHK 2019年6月12日 18時47分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
4月の記事で取り上げていた小学校の教員による児童の着替え盗撮事件の続報で、被疑者の教員が懲戒免職されたと報じています。なお、当初の逮捕容疑は盗撮目的で教室内にスマホを設置した疑いとされており、実際に盗撮できていたのかどうかには触れられていませんでした。
小学生の児童の着替えですので実際に盗撮できていたのであれば児童ポルノ禁止法違反の可能性もありますが、結局うまくいかなくて盗撮できていなかったなら当初の逮捕容疑のまま盗撮目的でのスマホ設置に留まると考えられるところです。
ちなみに島根県の迷惑防止条例では盗撮目的でカメラ等を設置する行為や学校内におけるそうした行為でも処罰される規定がありますので、仮に後者だとしても迷惑防止条例違反であることには変わりありません。
島根県 迷惑行為防止条例 第4条
- 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から又は直接に人の身体に触れること。
- 人の下着又は身体(これらのうち衣服等で覆われている部分に限る。以下この条において「下着等」という。)をのぞき見ること。
- 写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を使用して、人の下着等を撮影すること。
- 前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、正当な理由がないのに、衣服等を透かして見ることのできる写真機等を使用して、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗っている人の下着等を見、又は撮影してはならない。
何人も、正当な理由がないのに、写真機等を使用して、住居、浴場、更衣室、便所その他の人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態の人の姿態を撮影してはならない。
何人も、正当な理由がないのに、写真機等を使用して、集会場、事務所、教室、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所又は乗物(公共の場所又は公共の乗物を除く。)において、人の下着等を撮影してはならない。
何人も、第1項第3号又は前3項の規定による撮影の目的で写真機等を人に向け、又は設置してはならない。
また、「盗撮行為は3か月で11回確認された」ということでこれが被疑者の自己申告によるものなのか、あるいは警察による捜査でスマホやPC等を押収し盗撮データの作成日時などを調べた結果を受けてのものなのか、いずれかによっても違ってくるところです。
しかし「成功するともっと見たいという気持ちが抑えられなくなった」という被疑者の供述からすると盗撮そのものも成功していて盗撮目的でのスマホ設置には留まらないことが窺え、おそらくは後者であろうと考えられます。
仮に前者だとしても児童の着替え盗撮を何度も企て、現に逮捕までされていて行為も認めているということは事実ですので、最終的な刑事処分を待たなくても小学校の教員という点を踏まえると教育委員会が懲戒免職に踏み切るのは理解できるものでもあります。
一方で刑事的には盗撮目的でのスマホ設置に留まらない可能性から盗撮データが押さえられている可能性、そして児童の着替えを盗撮したデータがあるということは児童ポルノの製造となる可能性までが濃厚となってくると、過去の事例のように迷惑防止条例違反での逮捕後に児童ポルノ禁止法違反での再逮捕というコンボをキメられることも予想されます。
盗撮目的でのスマホ設置に留まる可能性が小さくなって不起訴の見込みが無くなってきたとなると、児童ポルノ禁止法違反が追加されることが無ければ30万円程度、もし追加されれば50万円までの罰金刑は覚悟しておいた方が良いのではと思われます。
「エスカレーターで盗撮100回超」神奈川県職員を停職6か月
神奈川県は、31歳の男性職員が駅のエスカレーターで女子高校生のスカートの中を盗撮したとして、停職6か月の懲戒処分にしました。県の聞き取りに職員は「長いエスカレーターのある駅で100回以上繰り返した」と話しているということです。
懲戒処分を受けたのは神奈川県公共住宅課の主任主事をつとめる31歳の男性職員です。
県によりますと職員はことし4月、出勤途中に東急東横線の反町駅の上りエスカレーターで、女子高校生の背後からスカートの中をスマートフォンで撮影したとして、県の迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕されました。
職員は、先月末に罰金30万円の略式命令を受けたということです。
県の聞き取りに対し「仕事のストレスを発散するため、2年くらい前から長いエスカレーターのある駅で100回以上、盗撮を繰り返した」と話しているということです。神奈川県は常習的に盗撮をしていたとみて、14日、この職員を停職6か月の懲戒処分にしました。
県は「職員としてあるまじき、信頼をゆるがす行為でおわび申し上げます」として、全職員に行政職員としての自覚を求める通知を出しました。
引用元 : NHK 2019年6月14日 18時37分配信
こちらも4月の記事で取り上げていた県職員による盗撮事件の続報ですが、教員ではないので懲戒免職には至らず停職6か月ということで済んだようです。
刑事処分も既に出ているようで先の記事で述べていた通りこれは30万円の罰金刑、余罪の証拠等が押さえられていたのかどうかわかりませんが、おそらく過去の分を深堀りして裏付けることまではせずに逮捕された事件のみでのだったと思われます。初犯でスマホ盗撮なら余罪の掘り起こしをしない場合もあり、この内容なら勾留期限前に釈放されていたということもあり得ます。
しかし懲戒処分を行うのはこの場合は司法機関ではなく県なので、ある意味で証拠(捜査や裁判における文脈での証拠)に基づかない処分を行うこともできます。
事件の経緯や刑事処分の内容等を見る限りでは少なくとも警察や検察官、裁判所は法定刑が概ね倍になるいわゆる常習盗撮だとはしていないわけですが、約2年前から100回以上盗撮を繰り返したというような世間一般では常習的と思える頻度を本人が認めているとして6か月という比較的厳しい停職処分を下しています。
もっとも、一発で懲戒処分もあり得る教員と比べると停職で済んでいるのはまだ恵まれているとも言えます。こうした発表では定番の依願退職にも触れられていないので県職員という公務員の地位にしがみつくつもりなのかもしれませんが、今後の職場での人間関係などに耐えられるのであれば、ここはしがみつくのが正解でしょう。
しがみつくとは言ってもこれを機に足を洗わなければいずれ再犯に及んでまた捕まり、今度はしがみついてもいられない状況に陥るかもしれません。これに懲りて盗撮を辞めなければならないところですが、少なくとも100回以上スマホを使った盗撮を繰り返していた程度にはハマり込んでおり、次は鞄や靴などにカメラを仕込むような巧妙な手口ならバレないのではと考えて再犯する素地があるかもしれません。
ここでキッパリ辞めることができるでしょうか、あるいは前回の記事で取り上げていた盗撮で何度も捕まっている野洲市職員のようになってしまうでしょうか。
秋田・女性のスカート内盗撮の元臨時講師 罰金刑の略式命令
秋田県潟上市の体育施設で女性の下着を盗撮したとして、秋田簡易裁判所は14日、中学校に勤務していた男性臨時講師に罰金30万円の略式命令を出した。
略式命令を受けたのは、秋田市の秋田西中学校に勤務していた28歳の男性臨時講師。元臨時講師は1月、潟上市の体育施設で10代の女性の下着を盗撮したとして、警察に逮捕され、秋田区検察庁が14日、秋田県迷惑防止条例違反の罪で略式起訴した。元臨時講師は容疑を認め、罰金30万円を即日納付した。
元臨時講師を巡っては、勤務先の中学校で女性職員のスカートの中を盗撮したとして懲戒免職の処分を受けているが、秋田県警は条例の対象外として、立件を見送っている。
また、元臨時講師は建造物侵入の容疑でも追送検されていたが、秋田地方検察庁は14日付けで不起訴処分としている。処分の理由は明らかにしていない。
引用元 : 秋田テレビ 2019年6月14日 19時0分配信
こちらも先月、先々月と取り上げていた中学校の教員による盗撮事件の続報です。学校内での盗撮行為が秋田県の迷惑防止条例が定める公共の場所に該当しないため立件を見送ったとして話題になっていました。
学校で同僚のスカート内を盗撮した件については迷惑防止条例違反での立件が見送られていたものの、先の記事で指摘していた通り別件の余罪があったので、今回その余罪の方で罰金30万円の刑事処分が下されたということになります。
なお、学校内での盗撮はお咎め無しだったわけではなく警察は建造物侵入で追送検していたようですが地検が不起訴としています。建造物侵入は懲役刑が選択肢に入らないケースでは罰則が軽いので、今回は別件の余罪で処罰できることから建造物侵入の方はお目こぼししたということではないでしょうか。
刑法 第130条
別件の余罪が無かったらと考えると建造物侵入だけでどうにか処罰することを検討したかもしれませんが、その場合でも上限が10万円の罰金程度の罪のみとなると本人の謝罪や反省の態度次第では不起訴になることは十分あり得るところです。
逆に警察としては盗撮で処罰するために余罪を見つけに行ったようにも思えます。一連の経緯としては、まず学校内での盗撮があって学校側が警察へ被害について相談し、その後被疑者の自宅待機中に警察が家宅捜索を行って余罪の証拠を押さえています。
警察は、学校側から被害の相談を受けた時点で学校内での女性職員に対するスカート内盗撮を処罰することが困難だとわかっていたはずなので、逮捕前に家宅捜索を行って秋田県の迷惑防止条例で処罰可能な余罪を見つけに行ったのではないでしょうか。
そうした余罪が発覚したからまだ良かったですが、何も出てこなければ結局不起訴の可能性もある建造物侵入しか無かったわけで、今回の盗撮行為の立件見送りによって全国ニュースにもなっていることから秋田県での条例改正が急がれることになるでしょう。
秋田県 迷惑防止条例 第4条
- 人の身体に、衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から接触し、又は直接接触すること。
- 衣服等で覆われている人の下着又は身体をのぞき見し、又は撮影すること。
- 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所において当該状態でいる人を撮影してはならない。