販売者にとって最も重要なポイントの1つ
こちらの記事の最後で触れたことで、盗撮動画を扱っていた大手販売サイトで昨年から制服姿の女性が被写体になっている盗撮動画を締め出すなど自主規制を強めています。
このことでそういった動画を販売していた人たちの一部は海外を拠点にしていると見られる比較的規制の緩いサイトへ移っていますが、そうした販売サイトから販売者へはどのように売上金が支払われているのでしょうか。
販売者にとっては重要なポイントとなるキャッシュアウトについて、これに絡む問題と最近の事情を踏まえて見てまいります。
一般的な支払方法は銀行振込による月払い
上述の海外拠点と見られる外貨建て決済のサイトでも国内で運営されている日本円決済のサイトでも、販売者への売上金の支払いで一般的なのは銀行振込による月払いです。実際の支払日はサイトによって早かったり遅かったりしますが、概ね月末締めで1か月分の売上金がまとめて支払われています。
必然的に販売者はサイト側へ金融機関の口座を知らせることになりますが、販売者からの話を聞く限りでは概ね本人名義の口座を知らせているようです。これまでにそういった販売サイトから個人情報が漏洩といった話もなく、サイトによってはそもそも支払先の口座を、提示を求められる身分証と同一名義の口座に限っているといった事情もあります。
盗撮動画という背景があるので販売者としても個人情報はできるだけ知らせたくないところですが、他人名義の口座を使用すると犯罪による収益の移転防止に関する法律などで余計な腹を探られることになりかねません。
海外からの送金が止められる事例が出てきた
海外に拠点を置いていると見られるサイトでは海外の銀行等から国内の金融機関の口座への送金となります。この場合、通常の銀行振込とは取り扱いが異なる被仕向送金ということになりますが、このとき外国為替及び外国貿易法に基づいて「貿易に関する支払規制」と「資金使途規制」に該当しないかどうかを確認されることがあります。
要は北朝鮮やイランなどと関わっている資金ではないかどうか(ほとんどのケースで該当しない)の確認なので金融機関によってはなおざりになっていますが、最近これとは別にどういったお金なのか説明を求める金融機関が一部で出てきています。
具体的なエビデンスを求めている例もあり、適切に説明した後に着金した資金が入金されるといった形になりますが、盗撮動画の販売で得た売上金となるとなかなか説明が難しいところです。無修正動画や児童ポルノなどでなければ販売すること自体は国内法に違反しないとはいえ、販売サイトや盗撮動画のキャプチャーなどでもって銀行の担当者に説明するというのはハードルが高いことでしょう。
実際にこうした説明を求められた販売者も出てきており、適切な説明ができなかったことで口座への入金ができなかったとのことです。
販売者は泣き寝入りするしかない
仮に法的拘束力の無い説明要求であっても販売者としては銀行と揉めてもキャッシュアウトできなくなるだけなので得はありません。真正直に説明するとしても警察への情報提供や通報といった可能性がチラつくのでなかなか難しいでしょう。
一般的な印象としても海外の動画販売サイトからの売上金と言われると違法な動画ではなかろうかと思われるのは無理もないので、銀行が説明を求めることについてはそれほど不思議なことではありません。
こうした説明要求はまだ一部の金融機関に留まっており、銀行が取り扱う被仕向送金も日々膨大な件数があるのですべてチェックするというのは現実的ではありませんが、海外から国内向けに運営されている販売サイトはまだそれほど数が多くありません。
警察からの指導などで特定の送金元に限ってチェックするようになる可能性もないとは言えず、もしそうなれば泣き寝入りして送金を諦める販売者も出てくることでしょう。
国内の金融機関を介さない送金
こうした状況を見越してか、個人撮影の動画販売サイトとしては国内最大手のFC2が昨年後半から新たな送金手段を提供しています(ただしFC2コンテンツマーケットではガチモノの盗撮動画などを規約違反として締め出しています)。
FC2での動画販売による売上金と言われるとやはり違法の文字がチラついてしまうのは仕方ないですが、FC2としては以下のようなニュース報道もあり、口座を凍結されてから状況を打開したい考えがあったのかもしれません。
動画投稿サイト「FC2」の違法公開事件で、京都府警の要請に基づいて凍結されていた大阪市内の運営会社に関係する金融口座(約5億円)の一部が解除されていることが2日、関係者への取材で分かった。
会社側が「不当な措置だ」として、金融機関や府警側を相手取り、凍結解除を求めて京都地裁に提訴していた。府警は11月、これまでの方針を撤回し、各金融機関に解除するよう伝えた。口座凍結が裁判で認められないと判断したとみられる。
府警などは昨年、同サイトを運営し、わいせつな映像をライブ配信したなどとして、公然わいせつとわいせつ電磁的記録媒体陳列の疑いで、大阪市のインターネットサービス会社の社長(41)らを逮捕し、京都地検が同罪で起訴した。
府警は昨春、同社の関係する約40口座について、「公序良俗に反する収益だ」として凍結するよう複数の金融機関に求めていた。口座は凍結され、会社側は1年半あまり約5億円を引き出せない状態だった。
引用元 : 京都新聞 2016年12月3日 8時59分配信
FC2が新たに提供している送金手段では、販売者は海外に拠点が置かれた別のデビットカード運営会社に登録し、FC2での売上金は日本円でも米ドルでもなくポイントとして各販売者のデビットカードウォレットへ移されます。
そしてデビットカードウォレットに貯まっているポイント分を中国銀聯(UnionPay)対応のATM(コンビニATMなど多数対応)から引き出して現金化することができます。FC2がポイント分として出金するときは海外の銀行からなので、ここまでの間に国内の金融機関を介さないことになります。
FC2自体はアメリカで納税していて日本の税務当局に支払調書を出していないと思われますので、この送金手段だと販売者の収入のトレースも困難になるように見られますが、上述したような金融機関による説明要求も入らないので販売サイトからのキャッシュアウト手段としては優れているように感じられます。
対策するとしても今さら中国銀聯を非対応にすることは現実的ではないので、こういったビジネスにおいてFC2はまだまだやる気を失っていないと思わされました。
まとめ
国内の販売サイトの自主規制強化により販売者が海外の販売サイトに移っていっている状況と、海外からの被仕向送金において金融機関から売上金の説明を求められてキャッシュアウトできなくなることがある事情について触れてまいりました。
キャッシュアウトできないなら誰も販売しようとは考えないのでこうした金融機関からのチェックも有効であるように感じます。
一方で、FC2が提供しているデビットカード送金やビットコインなど仮想通貨による決済も増えてきているので、こうしたことはイタチごっこなのかもしれません。