先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
当時15歳の女性を元交際相手が隠し撮り…性的な動画拡散した同学年の女性らに約27万円の賠償命令
自身の性的な動画をLINEで拡散され精神的な苦痛を受けたとして、当時15歳の愛知県内の女性が同学年だった女性らに損害賠償を求めていた裁判。名古屋地裁はおよそ27万円の賠償を命じました。
訴状によりますと、愛知県内の女性は当時15歳だった2016年春ごろ、元交際相手の少年に性的な動画を隠し撮りされ、その動画を同学年の女子生徒らがLINEなどで拡散したということです。
女性は当時通っていた高校の転校を余儀なくさせられるなど、精神的な苦痛をうけたとして、示談が成立した元少年以外の同学年だった女性3人と保護者に対し、あわせて627万円の損害賠償を求めていました。
判決で名古屋地裁は「動画は他人に見られたくない場面を撮影したものであり、プライバシー侵害は極めて大きい」などとして、同学年だった女性3人と保護者にあわせておよそ27万円の賠償を命じました。
引用元 : 東海テレビ 2020年3月26日 15時56分配信
刑事事件ではなく盗撮絡みの民事の損害賠償請求訴訟に関するニュースです。約4年前高校生だった女性が当時交際していた彼氏に性的な動画を隠し撮りされて拡散されたとのことですが、LINE等で拡散させた元同級生に対して慰謝料などの損害賠償を請求したようです。なお、実際に盗撮した元彼氏については示談が成立しているとのことです。
当時高校生だったのであれば盗撮した元彼氏は児童ポルノの盗撮製造や提供、拡散させた元同級生らも同じく提供や陳列などで刑事事件になっていてもおかしくないところです。民事で損害賠償を請求するのであれば刑事事件にしてから同時にやってしまうのがセオリーですが、当時は刑事事件にしなかったのでしょうか。
「通っていた高校の転校を余儀なくさせられるなど」とありますのでもしかすると当時は大ごとになるのを避けたくて事件化することを求めなかったのかもしれませんが、前科前歴が付く事とお金を引き換えにできる状況だからこそより多く請求できるものですので後からやっても思うような額にはならないケースは珍しいことではありません。
実際にこの訴訟でも判決ではたったの27万円、被告の元同級生は3人ですので1人頭で割ると10万円にも満たない損害でしかないというのが裁判所の見解ということになります。これでは訴訟に要した手間暇を考えると足が出ていると言って良いかもしれません。
これは交際関係にあった男女の性的な行為を隠し撮りした動画を拡散したという内容でしたが、面識の無い人にスカート内やトイレ、着替え等を撮られてその動画をネット上で公開されたり販売されたりといった事にも通じてくる内容です。
本人や本人に近しい人がネット上にそうした動画が流れていることに気付くケースではいつ誰に盗撮された物なのかわからないことが非常に多く刑事事件にするための要件が揃わないものですが、警察や弁護士などが調べに入ることでネット上に公開又は販売したのが誰なのかを突き止めることは可能です。
しかし、具体的にいつ盗撮したのかがわからずに刑事事件にはできなくてもネット上での公開や販売等の証拠は押さえられますのでこの記事で報じられている訴訟のように慰謝料等の損害賠償を請求することはできますが、それでも数十万円程度にしかならないという現実は知っておいた方が良いかもしれません。
盗撮目的で児童養護施設に侵入 小学校臨時職員(22)を逮捕 <福島県福島市>
福島県福島市の小学校の臨時職員が盗撮目的で児童養護施設に侵入したとして逮捕された。
建造物侵入の容疑で現行犯逮捕されたのは福島第一小学校の臨時職員の男(22)。警察などによると容疑者は3月25日の夜、福島県福島市内の児童養護施設に侵入したところを施設の職員に発見された。
警察の調べに対して容疑者は「盗撮目的だった」と供述しているという。
福島市教育委員会は「逮捕は大変遺憾。心よりお詫びします」とコメントしている。
引用元 : 福島テレビ 2020年3月26日 20時0分配信
小学校の臨時職員による盗撮目的での建造物侵入事件です。事務職員や用務員などであって教員ではないということなのでしょうか。なお、盗撮の目的ではあったようですが実際に盗撮に及ぶどころかカメラを向けたり設置したりといった行為に及ぶ前に見つかって捕まったようです。
学校などと同様に部外者が入り込んでいたらすぐに騒ぎになるような場所ですので、忍び込むまでは良かったものの何かする前に見つかって捕まったという非常に間抜けな事件です。
アパートやマンションの共用部分などでも正当な理由が無ければ勝手に立ち入るのは建造物侵入となりますが、そうした場所ならまだうまく言い訳して逃れることもできるところ、児童養護施設へ侵入したのではなかなかうまい言い訳も出てこないでしょう。素直に「盗撮目的だった」と供述したようで、勿論それは正当な理由ではないので建造物侵入で逮捕となりました。
刑法 第130条
しかし、目的はどうあれ侵入して何かする前に捕まっているのであれば、現行犯逮捕までは仕方ないとしても初犯ならすぐに釈放されて在宅事件となっていてもおかしくはありません。また、在宅事件として調べが進むにしても前科前歴や今回の事件以外の余罪が無いのであれば不起訴ということもあり得るでしょう。
法定刑を見てもわかるように初犯と仮定すると初回から公判請求されるのは厳しすぎるのでほぼ無く、罰金にしても上限が少額です。盗撮に及んだ証拠を押さえていても迷惑防止条例違反が適用できずに建造物侵入で処罰するというケースならわかりますが、何もしない内から捕まっている点は被疑者の有利に働くと思われます。
初犯で事件がこれだけならばおそらく厳重注意の上で不起訴、厳しくても10万円までの罰金で済むのではないでしょうか。
<北海道>公立芽室病院で女子トイレ盗撮 医師の男に有罪判決
十勝の公立芽室病院で、医師の男が盗撮目的で女子トイレにカメラを設置した事件で、男に有罪判決が言い渡されました。
公立芽室病院の外科診療部長だった被告59歳は去年9月、病院の職員用の女子トイレに侵入し、盗撮目的で小型カメラを設置した道迷惑行為防止条例違反などの罪に問われています。
きょうの判決公判で、釧路地裁帯広支部の小西慶一裁判官は「犯行は巧妙で手慣れていて悪質」としたうえで、「病院を懲戒処分になり一定の社会的制裁を受けている」などとして、被告に懲役6ヵ月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。
引用元 : HTB北海道テレビ 2020年3月27日 11時56分配信
※被告人の氏名部分を修正しております。
以前の記事で取り上げていた医師によるトイレ盗撮未遂事件の続報ですが、盗撮目的でトイレにカメラを設置したという盗撮準備行為に留まるのであればせいぜい10万円から20万円程度の罰金かと思っていたら罰金では済まされず公判請求されていたようです。
調べが進んで盗撮目的でのカメラ設置のみならず実際に盗撮した行為など他の余罪も追加されたのだろうかとも思いましたが、記事を見る限りでは起訴事実は女子トイレへの侵入と盗撮目的でのカメラ設置くらいのようなので建造物侵入と盗撮準備行為による迷惑防止条例違反と見られます。
それでもその程度であれば略式起訴されて罰金で終わっても良さそうな内容ですが、公判請求されて執行猶予付きの懲役刑という判決にまでなっているのは被告人に同種前科などがあるのかもしれません。盗撮既遂になっていても初犯ならほぼ罰金ですのでこの内容で初回からいきなり公判請求されるのはややバランスを欠いていると思われます。
尤も、この事件で逮捕されたのが昨年10月ですのでそこから身柄事件になっていたとすると判決までに約半年というのは比較的長く、記事で触れられていないだけで他の盗撮の余罪でも立件されているのかもしれません。少なくとも今回の女子トイレ侵入と盗撮目的でのカメラ設置のみの事件且つ初犯ということではないように感じます。
仮に被告人に同種前科があったとすると今回の事件の前に既に二度三度と捕まっているのだろうと思われますが、これを機に止めないと次は執行猶予を満了した後であっても実刑判決で服役することになる可能性があります。被告人は59歳とのことで間もなく還暦を迎えるのですからいい加減足を洗わないと刑務所で老後を過ごすことになりかねません。