先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
女子高生のスカート内を盗撮 容疑で宗教法人職員を逮捕
女子高校生のスカート内をスマートフォンで盗撮したとして、京都府警下京署は29日、京都府迷惑行為防止条例違反(卑わいな行為)の疑いで、真宗興正派(こうしょうは)本山興正寺の職員(47)=奈良県橿原市=を現行犯逮捕した。容疑を認めているという。
逮捕容疑は同日午前8時ごろ、京都市下京区のJR京都駅構内のエスカレーターで、私立高校2年の女子生徒(17)のスカート内をスマホで動画撮影したとしている。
同署によると、警戒中の鉄道警察隊員が生徒の後ろからスカート内にスマホを差し入れる容疑者を発見した。盗撮がばれないよう、スマホの画面上で別のアプリが動作しているように見せかけるカメラアプリを使用していたという。
アプリ内にはスカート内を盗撮したとみられる動画40点が保存されていた。
引用元 : 産経新聞 2018年1月29日 20時22分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
宗教関係にはあまり明るくないので現在の日本の仏教界におけるこの宗派の位置付けなどはわかりませんが、こういった職業の人が盗撮などの事件の被疑者として報道されることはあまり多くないと思いますので、そう考えると全体としては本当に品行方正な世界なのかもしれません。
それだけにひとたび事件を起こして報道されてしまうと珍しくて目立ってしまうので残念なところです。カモフラージュ用のアプリを使いつつエスカレーターでスカート内にスマホを差し入れるという古典的な手口にも同様の思いがあります。
京都駅のエスカレーターなどはトップクラスに警戒が厳しい場所として知られていますが、俗世のそうした事情はリサーチ不足だったのでしょうか。あるいは、盗撮動画が40点保存されていたとのことなので、成功体験を重ねるうちに警戒を甘く見るようになっていたのでしょうか。
なお、京都府の迷惑防止条例では盗撮目的でスカート内にスマホを差し入れるだけでアウトとなりますが、少なくとも盗撮の疑いを持たれる段階までにはこうしたアプリはカモフラージュの用を為さない場合があることが窺えます。
京都府 迷惑行為防止条例 第3条 第2項
- みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影すること。
- みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。
- みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を撮影すること。
他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法
被疑者は「スマホの画面上で別のアプリが動作しているように見せかけるカメラアプリを使用していた」とのことですが、警戒していた鉄道警察隊員がこれを確認した上で見抜いていたのか、逆にカメラアプリが起動している状態の画面でなければスルーするのかというと疑問があります。
スマホの画面の状態はどうあれ「後ろからスカート内にスマホを差し入れる」という動作で疑いを持ったと思われますので、このタイミングまでにそうしたアプリのカモフラージュは役に立たず、その後に声を掛けられた際の言い逃れに利用できるかどうかということになるでしょう。
残念ながらこの事件のケースでは問い質されて白状してしまったのか、またはシラを切っていたもののアプリの特性を見抜かれてバレてしまったのか、結局あまり役には立たなかったようです。
盗撮目的でセンター試験会場のトイレへ 男を逮捕/岩手・盛岡市
岩手大学の大学入試センター試験会場の女子トイレに盗撮目的で侵入したとして会社員の男が30日、建造物侵入の疑いで逮捕されました。
逮捕されたのは盛岡市上堂の会社員24歳です。警察と岩手大学によりますと、容疑者は大学入試センター試験前日にあたる今月12日の午前8時すぎから試験2日目の14日午後5時20分ごろまでの間に、岩手大学のセンター試験会場の女子トイレに盗撮目的で侵入した疑いがもたれています。
14日に、試験会場のトイレで盗撮用の機器が見つかったことから発覚し、岩手大学が警察に被害届を出していました。試験前日の12日に機器は見つかっていませんでした。
容疑者は容疑を認めていて、警察が詳しい経緯を調べています。
引用元 : IBC岩手放送 2018年1月30日 19時39分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
センター試験が行われる日においては、遅刻できないと考える学生を狙って道中の痴漢を企てる輩もいるようですが、この事件では学生が集まる現場に赴いてそこのトイレに盗撮用のカメラを仕掛けています。
カメラが見つかったのが1月14日とのことなので当日から2週間ほど経ってからの後日逮捕ということになりますが、被疑者の特定のきっかけは盗撮用のカメラに映り込んでいたのか、あるいは大学構内の防犯カメラ等の記録でしょうか。
この事件では建造物侵入のみでの逮捕となっていますが、迷惑防止条例違反が適用できないのかどうかはちょっと考えが分かれるところです。
岩手県 迷惑防止条例 第8条
- みだりに他人の胸部、臀(でん)部、下腹部等(以下「胸部等」という。)の身体の一部に触れること(着衣の上からこれらの身体の一部に触れることを含む。)。
- みだりに着衣で覆われている他人の下着等(胸部等の身体の一部を含む。以下同じ。)をのぞき見すること。
- みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影し、若しくは撮影する目的で当該下着等を撮影することができる位置に写真機等を差し出し、又は写真機等を使用して着衣で覆われている他人の身体を透視する方法により、裸体(その一部を含む。)の映像を見、若しくは撮影すること。
まず、岩手県の迷惑防止条例では盗撮を規制する場所が「公共の場所又は公共の乗物」に限定されているところ、国立大学構内のトイレが公共の場所かどうかという点です。
高校までと異なって大学では犯罪の目的でなければ部外者が立ち入っても咎められることはありませんが、公共の場所として、この事件のケースではトイレなので公衆便所として解釈できるかどうかは微妙なものがあります。
また、岩手県では2014年に条例を改正しており、盗撮に関しては「若しくは撮影する目的で当該下着等を撮影することができる位置に写真機等を差し出し」という文言が加えられていますが、表現として十分なのかどうかという点も気になります。
他県でも同様の改正内容は見られるところ、その多くでは写真機等を「差し向ける行為」と「設置する行為」を区別した上で併記していますが、この事件のケースでは後者に該当すると見られる一方、岩手県の改正条例では設置という表現は使われていません。
先に建造物侵入だけで逮捕しておいて迷惑防止条例違反での逮捕が今後待っている可能性はありますが、もしかすると上述したような点から迷惑防止条例違反が適用できなかったということも考えられます。
警察署女子トイレにスマホ、盗撮容疑で巡査長を書類送検
勤務する警察署の女子トイレにスマートフォンを仕掛けて盗撮したとして、警視庁は2日、目白署刑事組織犯罪対策課の男性巡査長(26)を建造物侵入と東京都迷惑防止条例違反(盗撮)の疑いで書類送検し、発表した。巡査長は同日、停職1カ月の懲戒処分を受け依願退職した。「普段見ることができない同僚の姿を見たかった」などと供述しているという。
人事1課によると、巡査長は昨年11月下旬~12月上旬に計3回、署内の女子トイレ個室内に侵入。天井の換気口の鉄格子を外して動画撮影状態にしたスマホを設置し、複数の女性署員を盗撮した疑いがある。人がいない隙にスマホを設置し、1~2時間後に回収していたという。
3回目で女性署員がスマホに気づいて上司に報告。スマホカバーの特徴などから巡査長のものと判明し、聴取に対して行為を認めた。巡査長は「新宿区の居酒屋のトイレで同じことをしたことがある」とも話しているという。警視庁の土屋暁胤・警務部参事官は「警察職員としてあるまじき行為であり厳正に処分した」としている。
引用元 : 朝日新聞 2018年2月2日 16時47分配信
普通そんなことしないだろうという人が普通そんなところに仕掛けないだろうという場所にスマホを設置して盗撮、そして発覚した事件です。警察官が盗撮事件を起こすことはもはや珍しいことではなくなりましたが、自らが勤務する場所、即ち警察署のトイレにカメラを仕掛けるというのはちょっと驚きを感じます。
当時配属されていたのは刑事組織犯罪対策課とのことで盗撮事件は扱わない部署だと思いますが、盗撮で捕まった人らを署内で見る機会などはあったはずで、ああいう風になるかもしれないとは考えられなかったのでしょうか…。
なお、この事件は前回の記事や前々回の記事で取り上げていた事件のように、迷惑防止条例違反と建造物侵入のダブル適用となっています。
盗撮目的で女子トイレに立ち入る行為を建造物侵入とする点については特に触れることはありませんが、下記のように現在は公共の場所など誰でも出入りできる場所でないと適用できないと思われる東京都の迷惑防止条例違反がやや気になります。
東京都 迷惑防止条例 第5条 第1項 第2号
警察署内のトイレで職員しか使えないトイレだったとすると規制場所として該当しなくなるので迷惑防止条例違反が適用できないと思われます。となると、この事件の場合は誰でも使えるところに配置されているトイレだったのではないでしょうか。
用が無ければ誰も行かないでしょうが警察署も基本的にはお役所なので、立ち入りが制限されているエリアでない場所にあるトイレは「公衆便所」または「公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所」に該当すると考えられます。
「普段見ることができない同僚の姿を見たかった」とのことですが、普通は来客が頻繁に出入りするような施設でもありませんのでそうしたトイレでもそれなりに狙いは付けられたのかもしれません。