先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
盗撮60回疑い、堺市の消防士を書類送検 大阪府警
駅などで約60回盗撮を繰り返したとして、大阪府警東住吉署は19日、府迷惑防止条例違反容疑などで、堺市消防局南消防署の消防士(26)=大阪府松原市天美東=を書類送検した。
書類送検容疑は平成29年3月~昨年9月、大阪府内や兵庫県内の駅などで、スマートフォンを女性のスカート内に繰り返し差し入れたなどとしている。
東住吉署によると、スマホには、10~40代の女性のスカート内を盗撮したとみられる動画66点が保存されており、同署はうち58件の盗撮被害を裏付けた。
昨年9月、大阪市東住吉区内の駅で、被害に気付いた女性が駅員に申告したが、同署の任意の調べに対し、消防士は当初「靴ひもを結び直そうとし、スマホがぶつかっただけ」と関与を否定。ところが同署がスマホを押収して捜査を進めると、「ストレスを解消するためにやった」と関与を認めたという。
堺市消防局によると、消防士は昨年9月、職場に「盗撮と間違われた」と報告したため、書類送検された19日朝まで消防士として勤務を続けていた。20日から自宅待機とするという。同消防局は「事実関係を詳しく調査した上で厳正に対処する」としている。
引用元 : 産経新聞 2019年2月19日 18時50分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
消防士による盗撮事件ですが、盗撮60回と見出しから常習性が強調されています。真の常習者ともなると1日に何度も、それを毎日のように繰り返すものですのでそうした例と比べると決して頻繁というようにも思えませんが、これは捜査の経緯に影響したものかもしれません。
被疑者から押収したスマホには盗撮動画が66点保存されており、その内58件の盗撮被害が裏付けられたとされています。盗撮に使用したスマホに保存したままだったのであれば動画の作成日時などから盗撮を行った日時を特定するのは難しくなかったと思われますが、裏付けたというのがどこまでを指しているのかハッキリしません。
さすがに58件全てで被害者を探し出してきてそれぞれ立件できるということを言っているのではないと思いますが、押収したスマホやPC等に保存されていたデータから常習性が疑われてもそれらを片っ端から洗って余罪となり得る盗撮を全て特定するということまでは通常なかなかやりません。
そこを、少なくともいつどこで盗撮したのかというところまでは特定したということで60回以上も盗撮を繰り返したと強調する発表になっているのかもしれません。
なお、勤務先の消防局では刑事処分の結果を見てから懲戒処分を行う方針なのでしょうか、現在は被疑者を自宅待機にして今後事実関係を詳しく調べるとしていますが、被疑者は現場で嘘を吐いて否認した上、消防局にも「盗撮と間違われた」と嘘の報告をしているので、懲戒処分の検討においてこれは厳しく見られるのではないかと思われます。
被疑者は盗撮を認めても現在のところ逮捕はされていないようで書類送検に留まっていますが、警察発表では被害者の年齢を10代~40代と特定しており、書類送検した事件の中に被害者の特定が済んでいるものも含まれているのかもしれません。
全て被害者不詳のままであれば起訴猶予ということもあり得るかもしれませんが、被害者が特定されていて被害届等が出ているとすると逮捕されていなくても30万円程度の罰金は科されるのではないでしょうか。
卒業旅行中に友人女性を盗撮 脱衣場でカメラ4台を駆使…のはずが
宿泊施設の脱衣場を盗撮したとして兵庫県警洲本署は20日、県迷惑防止条例違反の疑いで、津市内の大学生の男(22)を逮捕した。
逮捕容疑は19日午後9時半ごろから20日午前7時ごろの間、洲本市内の貸別荘の浴室脱衣場に、火災報知器型や煙探知器型、置き時計型、フックハンガー型のカメラ4台を設置し、一緒に宿泊していた友人の女性らを撮影した疑い。容疑を認めているという。
同署によると、大学生は友人の男女計15人で卒業旅行中だった。貸別荘1棟を利用し、女性が入浴中に煙探知器型のカメラが落下。女性らが問い詰めたところ犯行を認めたため同署に通報したという。
引用元 : 神戸新聞 2019年2月20日 21時28分配信
火災報知器や置き時計などを模したカモフラージュカメラを多数使用した盗撮事件です。卒業旅行中に貸別荘の脱衣場に4台ものカメラを仕掛けていたとのことですので友人ら皆で旅行を計画している段階から盗撮を企てていたのでしょう。
全員で15人ということですので場合によっては男子学生ら複数がグルだったことも考えられますが、逮捕されたのが1人なので単独犯ということでしょうか。1人に押し付けようとしていたのであればその場で揉めた末にまとめて連行されるでしょうし、万が一の場合には罪を1人で被る算段があったとはさすがに考えにくいところです。
それにしても友人女性らを盗撮するにあたって随分と多様なカモフラージュカメラを用意したものです。火災報知器型や煙探知器型で天井から、置き時計型でやや下から、フックハンガー型で目線の高さから、といった風に狙っていたのかもしれません。
しかし、入浴中に湿気で接着が弱くなってしまったのでしょうか、煙探知器型のカメラが外れて落下したことがきっかけで盗撮が発覚したようです。女性らが入浴する前に被疑者が脱衣場に行っていた背景でもあったのか、問い詰められた末に盗撮を認めてお縄となりました。
逮捕容疑が「友人の女性らを撮影した疑い」とされており、煙探知器型のカメラが落ちて女性らが気付いたのが入浴中とのことなので脱衣場で裸になった姿は既に盗撮できていたと思われますが、兵庫県の迷惑防止条例では盗撮目的でカメラを設置する行為自体が処罰の対象ですので脱衣場で気付かれていたとしても迷惑防止条例違反は成立すると考えられます。
兵庫県 迷惑防止条例 第3条の2
- 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
- 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
- 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
- 前項第2号に掲げる行為
何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
この事件では現場が浴場や更衣室に当たると思われますので第3項に該当するでしょうか。
せっかくの卒業旅行がこの盗撮事件によって台無しにされていますので女性らの処罰感情も強いと見られ、しかも複数が被害を受けていますので全員との示談も難しくなってくるでしょう。4台ものカモフラージュカメラを用意して使用する悪質性や計画性が厳しく見られれば前科前歴無しの初犯でも罰金50万円といった処分はあり得るかもしれません。
市役所トイレで盗撮か 職員逮捕 滋賀
去年12月、野洲市役所の女子トイレのごみ箱に小型カメラが取り付けられているのが見つかった事件で、警察は、20日、このトイレのすぐ近くの部署で働く26歳の主事を県の迷惑防止条例違反などの疑いで逮捕しました。
逮捕されたのは、野洲市環境課の主事(26)です。
警察や市によりますと、主事は去年12月6日、野洲市役所別館の2階にある女子トイレの個室に忍び込み、盗撮目的で小型のビデオカメラを設置したとして、建造物侵入と県の迷惑防止条例違反の疑いがもたれています。
事件当日の午後4時半ごろ、個室トイレを利用した女性職員がごみ箱の中で光が点滅しているのに気付き、知らせを受けた別の職員が詳しく調べたところ、カメラが取り付けられていたことがわかったということです。市からの被害届を受理した警察が捜査を進めた結果、目撃者の証言などからこのトイレと同じ階にある環境課で働く主事が事件に関わっていた疑いが強まったとして20日、逮捕しました。
警察の調べに対し「事実に間違いありません」と供述し、容疑を認めているということです。
警察によりますと、カメラ本体には映像や画像が残されていなかったものの、無線を使ってデータを送る機能がついていることから、主事の自宅などを捜索して現場で撮影されたものがないか調べることにしています。
主事の上司にあたる環境課の西村拓巳課長は「市の信頼を著しく損なう行為で市民の皆様に対し深くおわびします。市全体の綱紀粛正を図って、信頼回復に努めます」とコメントしています。
引用元 : NHK 2019年2月20日 23時43分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
市役所職員の公務員による盗撮事件です。昨年末頃に取り上げている事件のように市役所職員による盗撮事件では勤務先の市役所庁舎内にカメラを仕掛ける事例がやや目立ちます。
もっとも、教員が勤務先の学校内で盗撮する場合も然り、民間企業の場合も然り、勤務先と全く関係無い場所では普段の出入りの様子を把握しづらかったり下見しづらかったり盗撮用のカメラを仕掛けるにはリスクが大きくなると思われますので、勝手知ったる勤務先の方がまだ安全となれば勤務先に仕掛けるのは必然的と言えるかもしれません。
発覚のきっかけはカメラを仕掛けたと見られる女子トイレ内のゴミ箱の中で光が点滅しているのを女性職員が発見したことのようです。おそらくカメラが作動中でLEDが点滅するなどしていてレンズを出す隙間から点滅するLEDが見えていたのか、あるいは光がゴミ箱から漏れていたのだろうかと思われます。
盗撮目的で仕掛けるのにLEDが点滅するなどの動作は明らかに不要だと思われますので点滅しないようにするか、塞ぐなどして光が漏れないようにしておけばまた違った結果になっていたかもしれません。リサーチ不足だったということになるでしょうか。
盗撮に使用されていたカメラは本体にデータを記録するタイプではなく撮影した映像を無線で飛ばすタイプだったようで実際に盗撮できていたのかどうかは当初確認できていなかったと思われますが、滋賀県の迷惑防止条例では盗撮目的でカメラを設置するだけでアウトになりますのでこの事件では迷惑防止条例違反でも逮捕されています。
滋賀県 迷惑行為等防止条例 第3条
- 直接または衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から人の身体に触れること。
- 人の下着または身体(これらのうち衣服等で覆われている部分に限る。以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
- 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、公共の場所、公共の乗物または集会所、事務所、学校その他の特定多数の者が集まり、もしくは利用する場所にいる人の下着等を見、またはその映像を記録する目的で、みだりに写真機、ビデオカメラその他撮影する機能を有する機器(以下「写真機等」という。)を人に向け、または設置してはならない。
何人も、公衆または特定多数の者が利用することができる浴場、便所、更衣室その他の人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいる場所において、当該状態にある人の姿態を見、またはその映像を記録する目的で、みだりに写真機等を人に向け、または設置してはならない。
現場が女子トイレですのでこの事件では第3項に該当していると考えられます。
なお、その後の調べで押収した被疑者のPCから女子トイレの盗撮動画が見つかっているとのことで、無線で映像を飛ばすタイプのカメラを使用していたことを考えても12月6日に盗撮が発覚した時点で被疑者もバレたことには気付いていたと思われますが、逮捕までに2か月以上あって何故自宅のPCのデータをそのままにしていたのか疑問を感じます。
調べに対し容疑を認めている。警察が押収した容疑者のパソコンには女子トイレを盗撮したとみられる動画が複数保存されていたということで、警察は余罪を追及する方針。
引用元 : 読売テレビ 2019年2月21日 8時29分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
盗撮目的でカメラを仕掛けただけでアウトなので当日の分はどうしようも無いとしても、データを削除したりPCを処分したりなどしておけば余罪に延焼することは避けられたはずです。自分が仕掛けたことまではわからないだろうと高を括っていたのでしょうか。
無線で映像を飛ばすタイプのカメラを使用するなど盗撮の手が込んでおり、余罪についても立件される可能性がありますので不起訴などの甘い見通しは持てないだろうと思われます。30万円から50万円程度の罰金は覚悟しておいた方が良いかもしれません。