先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
“回収”に来たら無くなっていて自首…勤務先の市役所トイレに盗撮用カメラ 市職員の30歳男逮捕
豊田市役所の30歳の職員の男、あろうことか庁舎内のトイレに盗撮目的で小型カメラを設置したとして逮捕です。
逮捕されたのは豊田市役所生活福祉課の主事(30)で、6月26日、豊田市役所東庁舎4階の多目的トイレに、盗撮目的で小型のビデオカメラを設置した愛知県迷惑行為防止条例違反の疑いが持たれています。
警察によりますと、6月27日、市役所から「トイレに小型カメラが取りつけてある」と警察に通報があり、捜査を進めていたところ、カメラを回収する際に無くなっていることに気付いた容疑者が8日になって自首してきたということです。
調べに対し、容疑者は容疑を認めています。
職員の逮捕を受け、豊田市役所の佐藤英之人事課長は「本人への聞き取りをして事実関係を確認し厳正に対処したい」とコメントしています。
引用元 : 東海テレビ 2019年7月9日 17時28分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
市役所勤務の公務員によるトイレ盗撮事件ですが、逮捕容疑は市役所のトイレに盗撮目的で小型カメラを設置した疑いとされているので実際に盗撮できていたかどうかはさておき、現時点では小型カメラを設置した盗撮準備行為までの容疑となっているようです。
トイレから発見されたカメラは警察が押収してデータを調べていたはずで、6月27日の通報から7月8日の被疑者自首までに実際に盗撮できていたかどうかは確認できていたと思われます。盗撮できていたとすれば逮捕容疑は盗撮準備行為に留まらないと考えられますので実際には撮れていなかったのではないでしょうか。
6月26日にカメラを仕掛け、それが発見されて6月27日に通報となると早ければ仕掛けた当日には見つかっていた可能性があり、あるいは仕掛けた多目的トイレに誰も入らなかったということもあり得ますので本当に撮れていなかったのかもしれません。
なお、各社の報道では自首という表現が目立っているところ、一部では出頭とも表現されていてこの事件で自首が成立しているのかどうかやや気になるところです。
自首が成立するためには捜査機関に犯罪事実が発覚する前か、犯罪事実は発覚していても犯人が誰なのか発覚する前に自分が犯人だとして出頭しなければなりませんが、この事件においては小型カメラが見つかって通報があり、警察が既に捜査を始めていましたので前者はまず該当しません。
残る後者については、7月8日に被疑者が自首してくるまでに警察がこの被疑者を特定できていたかどうかによるわけですが、これは推測するしかありません。ただ、地元紙から全国紙まで軒並み自首という表現を用いているので自首は成立している(被疑者が出頭するまでに警察は特定できていなかった)のではなかろうかと思われます。
自首が成立している場合は罰が軽くなることが見込まれますが、盗撮目的でのカメラ設置については最近では先週の記事で取り上げている公務員による同様の事件で罰金20万円という事例があり、これを基準に自首の成立を加味すると不起訴という可能性もあるのではないでしょうか。
刑法 第42条 第1項
一方、自首が成立していない場合や、成立していてもその他の事情により罰を減じる判断に至らなかった場合は先の同様の事件のように20万円前後の罰金が科されるのではと思われます。
小型カメラでスカート内盗撮…法務局の元男性職員に罰金30万円【愛媛・四国中央市】
今年2月、女性のスカートのなかを盗撮した疑いで逮捕された松山地方法務局の元男性職員が、9日までに罰金の略式命令を受けました。
略式命令を受けたのは、松山地方法務局四国中央支局に勤務していた元男性職員(43)です。
起訴状などによりますと、元職員は今年2月、JR予讃線の電車内で左足の靴の甲の部分に小型カメラをつけ、女性の背後からスカートの下に足を差し出して、下着などを盗撮したとしています。
西条区検は先月28日に西条簡易裁判所に略式起訴し、裁判所は今月3日に罰金30万円の略式命令を出しました。
元男性職員は今年3月に松山地方法務局を依願退職しています。
引用元 : テレビ愛媛 2019年7月9日 18時30分配信
法務局に勤める公務員によるスカート内盗撮事件です。逮捕されたのは2月、そして今回略式命令が出て罰金30万円を納めたとされています。
靴の甲に小型カメラを仕込んだといういわゆる靴カメによる盗撮事件と見られますが、ポイントとしては在宅事件だったと考えられる点と罰金額が30万円という点からスマホによる盗撮と何ら変わりない処分になっているところでしょうか。
逮捕されたのが2月で略式起訴されたのが6月28日ということは被疑者が勾留された身柄事件ではないと考えられますので、おそらくは逮捕後に釈放されて在宅事件になっていたものと思われます(再逮捕を続けてずっと勾留していたなら別ですが罰金額を見る限りそこまでの事件ではない)。
また、鞄や靴などに小型カメラを隠し入れて盗撮する手口はスマホや携帯電話を使って盗撮するケースより比較的悪質と思われるところで、それが罰金の額や量刑に影響してくるとも言われますが、この事件においては罰金30万円というスマホによる盗撮事件と変わらない額になっており、このような手口でも必ずしも厳しくなるわけではないと言えます。
愛媛県の迷惑防止条例でも盗撮の場合の罰金の上限額は50万円(常習として起訴された場合は100万円)なので実際はまだ上値余地があり、この略式命令は手口によらず盗撮で初犯の場合のお定まりでしかない額です。
愛媛県 迷惑行為防止条例 第4条
- 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から、又は直接身体に触れること。
- 衣服等で覆われている下着又は身体(以下「下着等」という。)を見ること。
- 前号に掲げる行為をしようとして下着等をのぞき込み、又は下着等が見える位置に鏡等を差し出し、若しくは置くこと。
- 衣服等で覆われている下着等の映像を記録する目的で、写真機その他の撮影する機能を有する機器(以下「写真機等」という。)を置き、又は向けること。
- 前各号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、正当な理由がないのに、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所において当該状態でいる者の姿態をのぞき見し、又はその者の姿態の映像を記録する目的で写真機等を置き、若しくはその者に向けてはならない。
何人も、集会場、事務所、教室その他の特定かつ多数の者が利用するような場所にいる者に対し、第1項に規定する方法で、同項第4号に掲げる行為をしてはならない。
愛媛県 迷惑行為防止条例 第13条
常習として前項の違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
頑なにスマホで盗撮をし続けるスマホ君の中にはスマホで盗撮する人の心理として挙げている点を含め、もし捕まった場合に鞄カメや靴カメは悪質だから勾留される、罰金額が上がる、などとしてそうした手口を採用しない理由を挙げる人がいます。
しかし、逮捕勾留の判断や罰金額は盗撮の手口一つで決まるものではありませんので、実際にはこの事件のように勾留されず特に厳しいわけでもない罰金となったり、逆にスマホで盗撮していても勾留期限まで身柄を取られて罰金50万円あるいは公判請求となったりもします。
だから盗撮するならバレにくい鞄カメや靴カメを使えということではなく、スマホに固執するスマホ君が掲げる理由は理由になっていないということなので、早くそこに気付かないと今後も最も捕まりやすい手口で盗撮を続けて結局捕まり、実名報道でみっともない姿を晒すことになってしまうでしょう。
「あなた似の動画がネットに…」知人から知らされ被害発覚 性行為盗撮し公開の男逮捕
出会い系アプリで知り合った女性との性行為を盗撮し、動画をインターネット上の会員制投稿サイトで公開したとして、兵庫県警人身安全対策課と西宮署などは11日、わいせつ電磁的記録陳列とリベンジポルノ防止法違反の疑いで、大阪市中央区の無職の男(30)を逮捕した。同課によると、男は多数の女性と性交している動画約200本をサイトを通じて有料配信し、2013年以降で約8800万円を売り上げたとみられる。
逮捕容疑は17年9月~18年12月ごろ、隠し撮りした20代女性との性行為の動画6本を自身のパソコンから投稿サイトに投稿し、公然と陳列した疑い。調べに対し、「(動画を)有料で販売した」などと容疑を認めている。
同課によると、2人は17年9月、出会い系アプリを通じて知り合ったという。男は女性と大阪市内のホテルを複数回訪れ、スマートフォンを仕込んだ絵画を持ち込み、客室にある絵画と入れ替え、性行為を盗撮。編集した映像を1本あたり1500~2000円程度の視聴料で投稿サイトに公開し、売り上げを得ていたという。
今年1月、知人から「あなたに似た人のわいせつ動画がネット上にある」と知らされた女性が県警に相談し、被害が発覚したという。県警が男が投稿した他の動画を確認したところ、少なくとも女性計30人が写っていたといい、同課などは他にも被害者がいるとみて調べる。
引用元 : 神戸新聞 2019年7月11日 22時12分配信
女性との性行為を盗撮し、その動画をネット上で販売したという事件です。被害者の女性は被疑者と面識が無かったと見られ、出会い系アプリで知り合ったとのことですが、逮捕容疑に含まれているリベンジポルノ防止法違反は面識の無い相手であっても成立します。
ネット上で個人または法人が販売している同種の動画は「盗撮風」に演出されたものが多く、普通は女性の同意を得た上でモザイクも入れるものですが、女性が警察へ相談していたということは少なくとも販売する許可は得ていなかったのでしょうし、その動画がわいせつ電磁的記録に当たるということはモザイクも入れていなかったのか、もしくはアウトと判断されるほど薄かったのでしょう。
被害者の女性が知人から知らされて発覚したとのことで、そんな偶然はあり得るのだろうかという気がしなくもないですが、スカート内の盗撮動画でも関係者が見つけて検挙に至った事件がありますので少ないながらもこうした可能性はあるのだろうと考えられます。
なお、この事件で動画販売のプラットフォームとして利用されていたのはFC2とのことです。
兵庫県警が摘発したわいせつ動画投稿事件で、逮捕された男(30)は米国法人「FC2」が運営する会員制投稿サイトを使い、盗撮したわいせつ動画を有料で公開していたとされる。
(中略)
捜査関係者によると、サイト運営会社が海外にある場合、違法動画の削除要請や不審な会員の照会が困難なケースがある。結果として、違法動画が半永久的にネット上にとどまる恐れもある。今回の事件では、女性や県警による法人への動画削除依頼が反映されなかったといい、県警が投稿主の男に動画を直接削除させた。
リベンジポルノの被害抑止などに取り組む「セーファーインターネット協会」(東京)は「裸の映像は『持たない、撮らない、撮らせない』が原則。もし被害に気付いた場合は、長く放置するほど映像が拡散するので、すぐ協会や警察、自治体に相談してほしい」としている。
引用元 : 神戸新聞 2019年7月12日 7時30分配信
このところFC2におけるわいせつ動画販売に絡んだ摘発が続いており、警察が力を入れて捜査していることが窺えます。この事件においてはFC2を介さずとも被害者が知り合うきっかけになった出会い系アプリから捜査を進めれば被疑者を特定できたと思われますが、海外に拠点があるから違法な動画も販売できるといった神話はもはや過去のものと言えます。
以前はそうした海外神話も手伝って半ば無法地帯とも化していたFC2ですが、わいせつ動画の販売や配信に絡んで運営者らが共犯関係に問われて逮捕起訴された事件などがあってその際に資料が押収されたり、そもそも日本国内に関係先があったりしていて、海外法人と言っても警察にとっては比較的捜査しやすい法人(サイト)になっているのではないかと思われます。
再び共犯関係に問われて運営者やスタッフが逮捕される可能性もありますので日本の警察からの問い合わせや照会を無下にすることも難しいのではと窺われるところ、この事件においては被害者の女性や警察からの動画削除依頼に応じていなかったとされ、こうなるとまたFC2本体へ捜査が及びかねない雑な対応だったのではないでしょうか。
この事件ではスマホを仕込んだ絵画をホテルの客室に持ち込んで盗撮したとされており、これではカメラワークも何も無い動画になるでしょうからこういうのが好きな人でもつまらないように感じるのですが、相当の売上だったのようなのでやはり好きな人は好きなのかもしれません。
わいせつ電磁的記録陳列とリベンジポルノ防止法違反とのことで、後者は親告罪なので被害者と示談して取り下げてもらえることもあり得ますが、わいせつ電磁的記録陳列についてはこの事件以外で投稿された動画でも該当するとされており、余罪として追加される可能性がありますのでおそらく罰金では済まされず公判請求されるのではと思われます。