先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
<北海道>「女子高生がたまたま写った」起訴内容の一部否認
札幌の社会福祉施設で女子高校生の裸を盗撮し児童ポルノを製造した罪に問われている男の裁判が始まり男は起訴内容を一部否認しました。
札幌市北区の被告56歳はことし6月、勤務していた札幌市の社会福祉施設で当時16歳の女子高校生がシャワー室で着替えている姿を盗撮し児童ポルノを製造した罪に問われています。
きょうの裁判で被告は「シャワー室に設置したカメラはシャワー室の横にある畑のネズミを撮影するためもので女子高校生がたまたま写っていた」と起訴内容を一部否認しまた、弁護側は被告が故意に撮影する意図はなかったと争う姿勢を見せています。
引用元 : HTB北海道テレビ 2019年11月19日 11時59分配信
※被告人の氏名部分を修正しております。
福祉施設の職員による児童ポルノの盗撮製造事件のようです。しかし被告人は盗撮する意図は無かった(たまたま映ったものなので盗撮でも児童ポルノの製造にも当たらない)という主張で否認しています。
既に起訴されて公判が始まっている事件なので詳しい経緯にあまり触れられておらず、これだけだと無理筋の否認なのか可能性としてあり得ることなのか判断が難しいところです。畑を荒らす野生動物への対応としてということならわからないでもないですが、シャワー室に設置されたというカメラの位置や向きによっては苦しい言い訳と捉えられるでしょうし、逆に真っ直ぐ畑の方に向けられていれば説得力も出てくるでしょう。
ただ、本当に畑の監視用であって女子高生の着替えが撮れてしまったのは偶々だということであれば、例えばその女子高生以外にもシャワー室を使った人が映っているとか、女子高生は動画の端っこの方にわずかに入り込んでいるだけとか、客観的に見て盗撮用ではないことが窺える物が何かしらあるものです。
そうした物が無いからこそ着替えの盗撮が目的だったと判断されて事件化されているとも考えられますが、盗撮目的ではなかったとしても本当は盗撮目的だったとしても裁判官が証拠から適切に判断してくれるだろうと期待したいところです。
公判で否認しているからには中途半端な判決ではないだろうと思われ、被告人の言い分が認められれば当然無罪、認められなければ30万円から50万円程度の罰金が見込まれますが、不合理な弁解に終始していて反省していないということになれば懲役などのより厳しい罰が科されるかもしれません。
サンダルに小型カメラ、授業中スカート内を盗撮 山形県立高の教諭懲戒免職
山形県教育委員会は20日、サンダル内に動画用小型カメラを仕込んで、授業中に女子高校生のスカート内を盗撮したとして、県立高校の50代男性教諭を懲戒免職処分にした。県教委の調査に男性教諭は「たびたび盗撮を繰り返した」と盗撮を認めている。監督責任を問い同校の50代女性校長を戒告処分にした。
県教委によると、男性教諭は10年ほど前に家電量販店で購入したカメラ(長さ5×縦1×幅2センチ)をサンダルに置き、右足の親指と人さし指で挟んでみえないようにして、今年6月下旬と8月下旬の計4回、職員室や授業中の教室で後ろから3人の女子生徒のスカート内に差し入れ、盗撮した。
6月下旬ごろ、周囲の女子生徒が男性教諭の行動が不自然で、右足に光るものが見え不審に思い、同高校校長らに相談。男性教諭は当初は否定したが、その後、保護者の被害届で県警の任意捜査で10月になって校長らに「自分がやった」と盗撮を申告した。
男性教諭は「(盗撮が)やめられなくなり続けていた」とし謝罪の気持ちを表明しているといい、6月以降、10回以上盗撮をしたと明かしているという。
菅間裕晃教育長は「盗撮の被害にあった女子生徒や保護者におわびをし、今後こうしたことのないよう再発防止策を徹底したい」と述べた。
引用元 : 産経新聞 2019年11月20日 23時47分配信
高校の教員による学校内での盗撮事件ですが、前々回、前回の記事で続けて取り上げていた高校教員の靴カメ盗撮事件に近い内容でしょうか。小型カメラを靴に仕込んでいたかサンダルに仕込んでいたかの違い程度で、勤務先の学校内で女子生徒を狙って何度も盗撮していたことは共通しているようです。
ここしばらくはまた教員による盗撮事件のニュースが目立ってきています。勤務時間外に学校の外で盗撮に及んで捕まったというニュースも勿論ありますが、この事件や前回の記事までに取り上げていた事件のようにスマホ盗撮ではなく足にカメラを仕込んで学校の中で女子生徒を狙う悪質な手口による事件も続けて起きています。
これでは、また別の事件で会見を開いていた教育長が述べている「ひょっとしたら『うちの学校の先生も(盗撮している)』という疑念」が現実のものになりかねません。
この事件でサンダルに仕込まれて盗撮に使用されていた小型カメラは5cm×1cm×2cmということでそれなりに小さいサイズと見られますが、それを購入したのが約10年前とのことなのでそんなに古い小型カメラで満足に撮れていたのかはやや気になります。約10年前というとiPhoneで言えば3Gや3GSなどの時代です。
同程度か又はより小さいサイズも存在する最新のカメラと比較すると画質を含めあらゆる点で劣っていると思われますが、せっかくリスクを負って盗撮するならより小さくてより性能の良い新しいカメラを使うべきなのではないかと感じるところ、高画質での盗撮を追求するというよりは常習化していて行為そのものが目的化していたのかもしれません。
なお、発覚までの経緯も先の高校教員による靴カメ盗撮事件と似ていて、カメラを仕込んだサンダルで盗撮する教員の不自然な挙動に疑念を抱いた女子生徒がサンダルの中にカメラらしき物を見つけて校長などに相談、そして発覚したというもので、保護者が被害届を出して警察が任意捜査に入っているようです。
しかし、山形県の迷惑防止条例ではスカート内盗撮に対する規制が公共の場所に限られており、隣県の秋田県における校内盗撮の立件が見送られていたように学校内は公共の場所に該当しないということで同様に迷惑防止条例違反での検挙はできない可能性があります。
山形県 迷惑行為防止条例 第3条
- 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から又は直接人の身体に触れること。
- 衣服等で覆われている人の下着又は身体をのぞき見し、又は撮影すること。
- 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、正当な理由がないのに、公衆が利用することができる浴場、便所、更衣場その他公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所において当該状態でいる人の姿態をのぞき見し、又は撮影してはならない。
任意捜査により先の事件のように別件の余罪が発覚すればまだ盗撮で検挙する余地はありますが、今回の件に限ればトイレや更衣室に侵入したものではないなら建造物侵入や軽犯罪法違反にも該当せず、懲戒処分としては免職になっているもののもしかすると刑事的にはお咎め無しということになるかもしれません。
隣県での学校内盗撮の立件が見送られて話題になっていたように、ここでも立件できないとなるとまた問題になって条例改正の動きが加速するのではないでしょうか。
石川の温泉旅館脱衣場で女性2人を盗撮容疑 大阪の消防士逮捕
温泉旅館の脱衣場にいた女性2人を盗撮したとして、石川県警大聖寺署は21日、大阪市消防局此花消防署西九条出張所の消防士長(29)=大阪府大東市野崎4=を県迷惑行為等防止条例違反容疑で逮捕したと発表した。逮捕は20日。容疑を認めているという。
逮捕容疑は20日午前8時50分ごろ、石川県加賀市内の温泉旅館で、女性浴場の脱衣場にいた大阪府内の50代と20代の宿泊客をスマートフォンで撮影したとしている。
大聖寺署によると、従業員からの通報で駆けつけた警察官が職務質問したところ盗撮を認め、スマホから画像が見つかったという。容疑者もこの旅館に泊まっていた。
大阪市消防局によると、容疑者は19、20の両日、年次有給休暇を取っていた。市消防局は「信頼を著しく失墜させる行為であり深くおわびする。今後、事実を確認し厳正に対処する」とのコメントを出した。
引用元 : 毎日新聞 2019年11月21日 16時21分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
消防士による脱衣場での着替え盗撮と思われる事件です。現場は女性浴場の脱衣場とのことですが、さすがに男が堂々と中に入っていくのでは盗撮できる状況になり得ないように思えますのでスマホを持った手を伸ばし隠れて撮影したといったようなやり口だったのでしょうか。
父親と一緒に男湯へ入ってきた女児が盗撮されるといった事件はたまに目にすることがありますが、この場合は(脱衣場や浴場でスマホを操作する不自然さはともかくとして)あくまで男湯ですので同じ空間にいる女児を撮る隙さえあれば状況としておかしいものではありません。
しかし、女湯の脱衣場となると同じ空間に成人男性がいるという状況はまずあり得ないので男湯にいる女児を盗撮する感覚の事件ではないのでしょう。旅館の浴場にある脱衣場は普通は入口から中が見えないようになっているものですので、暖簾を潜って少しだけ中に入りスマホを持った手を伸ばして脱衣場の方を撮ったのだろうかと思われます。
男湯と女湯のそれぞれの脱衣場が隣接していて仕切りが天井や床まで達していない旅館だった(仕切りの隙間から盗撮した)可能性も無いでは無いですが、いずれにしてもスマホで盗撮しているのを従業員か被害者に見つかって通報されたのでしょう。
温泉旅館の脱衣場は公共の場所とは言えないと考えられますが、石川県の迷惑防止条例では公共の場所ではない浴場や更衣室における盗撮も処罰の対象とする規定があります。
石川県 迷惑行為等防止条例 第3条
- 人の身体に、直接又は衣服その他の身に付ける物(以下「衣服等」という。)の上から触れること。
- 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見すること。
- 衣服等で覆われている人の身体又は下着を撮影すること。
- 前三号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、公共の場所又は公共の乗物にいる人に対し、みだりに、衣服等を透かして見ることができる写真機等を使用して、次に掲げる行為をしてはならない。
- 衣服等で覆われている人の身体又は下着を見ること。
- 衣服等で覆われている人の身体又は下着を撮影すること。
何人も、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人に対し、みだりに、次に掲げる行為をしてはならない。
- 人の身体又は下着をのぞき見すること。
- 人の身体又は下着を撮影すること。
何人も、集会場、事務所、教室その他の特定かつ多数の者が利用するような場所において、人に対し、みだりに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安若しくは嫌悪の情を催させるような方法で、衣服等で覆われている人の身体又は下着を撮影してはならない。
この事件においては第3項第2号に該当していると考えられます。ただ、盗撮目的でスマホやカメラを向けたり設置したりする盗撮準備行為への規制は今のところ無いようですので、この事件でもしスマホを向けただけで実際に撮るに至っていなかった場合は迷惑防止条例違反にはならなかった可能性があります。
しかしこの事件では被疑者が盗撮を認めており、スマホから盗撮した画像も見つかっているので微妙な判断の必要も無く迷惑防止条例違反となります。
被疑者の余罪や前科前歴の有無、被害者との示談の行方にもよりますが、盗撮の状況や手口を見る限りでは特に悪質な盗撮事件という程の内容でもないので罰金という処分に至っても30万円程度で済むのではないでしょうか。