先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
盗撮目的で女子トイレ侵入か 海上自衛官の男逮捕
盗撮目的でトイレに侵入したとして、自衛官の男が逮捕されました。
青森県むつ市にある海上自衛隊大湊病院の歯科技工士(43)は14日午前9時20分ごろ、八戸市立図書館2階の女子トイレに盗撮目的で侵入した疑いが持たれています。女性から「盗撮された」という連絡を受けた男性職員が早歩きで急ぐ容疑者を見つけて追い掛けたということです。
容疑者を取り押さえた八戸市立図書館・小川賢太郎主査:「女性が被害に遭っていたので、何とかしなきゃいけないと思って、頑張って捕まえました」
警察の取り調べに対し、容疑者は容疑を認めているということです。
引用元 : テレビ朝日 2019年1月14日 18時44分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
自衛官による盗撮事件ですが、自衛官といっても自衛隊病院勤務の歯科技工士のようなので現場勤務の軍人ではなく技官といったところでしょうか。
「女子トイレに盗撮目的で侵入した疑い」とされているので逮捕容疑としては建造物侵入と見られ、経緯を見た感じでは迷惑防止条例違反にも該当しそうに思えましたが、青森県の条例ではトイレでの盗撮が規制対象外なのかもしれません。
青森県 迷惑行為等防止条例 第6条
- 他人の身体に直接又は衣服等の上から触ること。
- 衣服等で覆われている他人の身体若しくは下着(以下「他人の身体等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、又はこれらの行為をしようとして、他人の身体等をのぞき込み、若しくは写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器を設置し、若しくは他人の身体等に向けること。
- 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
他の都道府県では「浴場、更衣室、便所その他の人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所」のような表現でトイレも規制対象の場所に含めている例が多いところ、青森県ではそうした規定が無く「公共の場所又は公共の乗物」だけに限定されています。
前回の記事でも取り上げているように盗撮行為が規制される場所というのは迷惑防止条例違反に該当するかどうかという点で重要な要素です。少なくとも青森県では、多くの都道府県で規制対象となっている「通常衣服を着けない場所」が対象とされていないように見られます。
このことで迷惑防止条例違反が適用できず建造物侵入のみということになれば3年以下の懲役または10万円以下の罰金となりますが、公判請求されて前者の懲役刑が選択されるようなことにはおそらくならず、10万円の罰金あるいは不起訴で済むのではないでしょうか。
巡査部長、盗撮の疑い 栃木県警が事情聴取
県警の男性巡査部長がJR宇都宮線の電車内で盗撮したとして、県警が県迷惑防止条例違反の疑いで巡査部長を任意で事情聴取していたことが14日、捜査関係者への取材で分かった。
捜査関係者によると、巡査部長は昨年12月下旬、携帯電話で女性のスカート内を盗撮した疑いが持たれている。被害女性が特定できていないが、調べに対し巡査部長は容疑を認めているという。県警は任意で調べるとともに、処分も検討している。
引用元 : 下野新聞 2019年1月15日 11時21分配信
こちらは警察官による盗撮事件とのことですが詳細は明らかにされていません。取材といっても御用聞きで出てくる内容ではないと思いますので記者が何らかの情報を持っていてそれについて尋ねたということなのかもしれません。
被害女性が特定できていないとのことなので、この警察官の盗撮に気付いた第三者が現場で問い質している内に被害者が気付かないまま立ち去ってしまい、被疑者と目撃者だけが残ったといったところでしょうか。
迷惑防止条例違反の疑いで任意捜査しているとのことですが、被疑者が身内ですので被害女性を特定して被害届を出してもらうことまではおそらくやらず、刑事的な処分は無いのではないかと思われます。
盗撮による迷惑防止条例違反は親告罪ではないので被害届が無くても立件することはできますが、現実の運用としては被害届が無いと不起訴になりがちです。一般人ならば被害者を探し出して被害届を出してもらい、きっちり刑事処分を科すところでしょうが、現時点で被害者不詳であれば身内を追い込むことは無さそうに感じます。
一方で盗撮行為自体は認めているようなので懲戒処分はあると思われます。刑事処分としてはおそらく不起訴、懲戒処分としては免職までは無いと考えられますが結局依願退職といったところではないでしょうか。
盗撮した男性を恐喝未遂か“ハンター”逮捕
東京の池袋駅で女性のスカートの中を盗撮した男性から現金を脅し取ろうとしたとして、いわゆる「盗撮ハンター」の男が逮捕された。
恐喝未遂の疑いで逮捕されたのは、職業不詳の容疑者。警視庁によると、容疑者は去年5月、池袋駅の階段で女性のスカートの中を盗撮した男性に対し、「女の子がパニックになっている」「150万円を払って誠意を見せてほしい」などと言って、現金を脅し取ろうとした疑いが持たれている。
男性が現金を持っていなかったため、容疑者はクレジットカードで新幹線の切符を買わせ、金券ショップで換金させたが、現金を受け取る前に男性が逃げ出したという。
調べに対し、容疑者は「全く身に覚えがない」と容疑を否認しているという。
引用元 : 日本テレビ 2019年1月17日 15時45分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
盗撮ハンターに関する記事もこれまで何度か取り上げており、昨年7月には劇団型として大きく報道されていた事件もありました。
今回の盗撮ハンター事件がこれまでのものとやや違って見えるのは先の劇団型と異なり単独犯と思われる点でしょうか。「現金を受け取る前に男性が逃げ出した」といった手際の悪さからもそうしたことが窺えます。
もちろん共犯者がまだ捕まっていないだけかもしれませんが、盗撮ハンターが獲物に逃げられては元も子も無く、組織だってやっている輩には獲物に逃げられないようにする係がいることを考えると随分と間抜けなハンターという風に思えます。
一方、盗撮した男性の方はそれなりに防衛策を講じていたように感じます。
盗撮ハンターが獲物を捕まえても1万円2万円といった財布に入っている小遣い程度の金額では脅し取ったところで割に合っておらず、(具体的な金額を提示する恐喝もどうかと思いますが)この恐喝犯が要求したように2桁万円から3桁万円といった高額を脅し取りたいと考えるところでしょう。
しかし盗撮犯でなくともそんな大金を持ち歩いている人などそうそういないので銀行口座などから引き出させるということになりますが、クレジットカードのショッピング枠現金化という面倒なことをやらせているということは現金はもちろんキャッシュカードも持っていなかったのでしょう。
それでもクレジットカードは持っていたわけで、あるいは単に預金が無かったという可能性もありますが、高額の現金に直結するものを持たないというのは1つの防衛になるかもしれません。
キャッシュカードが無ければATMで預金を引き出すことができず、身分証が無ければキャッシングの申し込みができず、クレジットカードが無ければショッピング枠の現金化ができません。ちょっとした買い物ならSuicaなどのIC乗車券でできますので十分チャージしておけば良いということになるでしょうか。
世間的にはどっちもどっちという内容で半年以上も前の出来事、恐喝の直接的な証拠は盗撮した男性の証言だけと思われますので事件としては微妙な気もしましたが、逆に言うとそれほど前の出来事でどこの誰かもわからない恐喝犯を特定し逮捕したからには警察は処罰する気があるように思えます。
恐喝罪には罰金刑の定めが無いので盗撮した男性が示談に応じなければ公判請求も見込まれるところですが、盗撮をネタにお金を脅し取るはずが逆に示談金を取られたということで男性が示談に応じるのもオツなものかもしれません。