先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
絵画に小型カメラ、わいせつ行為盗撮容疑 男を書類送検
女性とのわいせつ行為を盗撮した動画をネット上で公開したなどとして、大阪府警は1日、大阪市西成区のアルバイトの男(35)をわいせつ電磁的記録記録媒体陳列や軽犯罪法違反などの疑いで書類送検し、発表した。男は容疑を認め、額縁付きの絵画に仕込んだ小型カメラで盗撮を繰り返したと供述しているという。
南署によると、男の送検容疑は昨年7月、大阪市中央区のホテル一室の壁に掛けた絵画内の小型カメラで、女性1人とのわいせつ行為を盗撮。また盗撮した別の女性3人とのわいせつ動画を動画サイトに投稿したなどというもの。
この絵画は、額縁(縦約23センチ、横約30センチ)に絵とマジックミラーが重ねてはめ込まれており、裏側に仕込んだ小型カメラで撮影する仕組み。ホテルが同月下旬、「客室内の絵の中に盗撮機械がついている」と南署に通報。置き忘れに気づいた男が取りに来て発覚した。男は「30人くらいの女性をナンパして盗撮した」と供述しているという。
引用元 : 朝日新聞 2020年6月1日 19時57分配信
ナンパした女性との性行為を盗撮した動画をネットで販売していたという事件です。似たような事件を取り上げた記憶があったので確認したところ、昨年7月に非常に似通った内容の事件を取り上げていて一瞬一連の事件なのかと思いましたがよく見ると関連が無いようです。
撮影機材を仕込んだ絵画をホテルの壁に掛けて盗撮し、その動画をネットで販売していたという点や、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列とされておりおそらく陰部にモザイクを入れる等の修正をせずに販売していたと見られる点、被疑者が共に大阪市の男性で現場となったホテルも大阪市内にあるなど共通点が多くなっています。
これだけ共通していて関連が無いのかというと、もしかするとお互いに面識等があってノウハウを共有したりしていたのかもしれませんが、絵画に仕込まれた得物のカメラが違っていたり、先の事件では数千万円稼いでいたとされている一方でこの事件では他の報道によると160万円だったり、先の事件では取り扱いが兵庫県警でこの事件では大阪府警だったりしていて事件としては別物のようです。
なお、この事件では被疑者は書類送検に留まっており逮捕されていないと見られます。これは先の事件では盗撮された被害者からの相談が捜査の端緒だったのに対して、この事件ではカメラを仕込んだ絵画をホテルに忘れて通報された事がきっかけだったためと思われます。この事件で盗撮された被害者はおそらくまだ気付いておらず被害届なども出ていないのでしょう。
その点については被疑者にとって不幸中の幸いだったと言えるでしょうか。ナンパした女性という事はどこの誰だかわかっていない可能性もあり、警察が被害者を特定して先の事件のようなリベンジポルノ防止法違反等の被害届を出させようにも難しいかもしれません。今回の送検容疑だけで収まれば逮捕されないまま50万円程度の罰金で済むのではないでしょうか。
『性欲を満たすため撮影した』6歳の女児の水着試着を「盗撮」か 24歳・会社員の男を逮捕
奈良県天理市の商業施設で女の子が水着の試着をしている様子をスマートフォンで盗撮した疑いで会社員の男が逮捕されました。
2020年4月、奈良県天理市の商業施設「ザ・ビッグエクストラ天理店」の子供服売り場で、6歳の女の子が水着の試着をしていました。女の子が試着室のカーテンを開けたまま試着をしていたところ、付き添っていた母親が売り場の棚からスマートフォンが出ているのを見つけました。
棚の後ろから男が逃げ出す様子を母親が確認し、母親が警察に相談しました。店の防犯カメラなどを捜査した結果、警察は天理市の会社員の男(24)を迷惑防止条例違反の疑いで逮捕しました。
調べに対して男は「間違いありません。性欲を満たすために撮影した」と容疑を認めています。警察は男のスマートフォンを調べるなどして撮影していた裏付け捜査を進めるとともに余罪についても調べる方針です。
引用元 : 関西テレビ 2020年6月2日 19時37分配信
母親と一緒に水着の試着をしていた女児を盗撮したという事件ですが、パッと見で児童ポルノ禁止法違反かと思っていたところ読み進めたらどうやら迷惑防止条例違反のようです。
水着の試着といっても全て脱いで着替えるわけではないと思われますので全裸を撮影したという事ではないでしょうが、何かしら衣類を脱いでいる状態を盗撮したとして捕まっているのでしょうからそれが6歳の女児なら児童ポルノの盗撮製造に当たるのではと気になるところです(逆に服を着たままの状態を試着室から少し離れた売り場から撮っていただけなら迷惑防止条例違反にもならないと思われる)。
もっとも、事件が起きたのが4月で被疑者は現場から逃走しており、防犯カメラ映像の解析等の捜査の末に逮捕に至った後日逮捕のケースですので、逮捕する時点までは被疑者が盗撮したデータを確認できていないはずでそれが児童ポルノに該当するかどうかわからない状態だったためまず迷惑防止条例違反での逮捕となったのかもしれません。
また、盗撮していた事がバレたのは現場から逃げ出した被疑者自身が認識していると思われ、仮にその時盗撮したデータが児童ポルノに当たるとしても果たしてデータが残っているのかという疑問もあります。被疑者は盗撮行為については認めているようですが、データが消去されていて復元等もできない場合は少なくとも児童ポルノの盗撮製造は立証できない可能性があります。
さらに、奈良県の迷惑防止条例では更衣室等での着替え盗撮について、盗撮目的でカメラを向けたり設置したりする盗撮準備行為が処罰の対象として定められておらず、もし盗撮データが無いとなると被疑者や目撃者の証言以外の証拠が無い事になりますので迷惑防止条例違反としても立件するのが難しくなってくるかもしれません。
奈良県 迷惑防止条例 第12条
- 他人の胸部、臀部、下腹部、大腿部等(以下「胸部等」という。)の身体に触れる行為(着衣その他の身に着ける物(以下「着衣等」という。)の上から触れる行為を含む。)であつて卑わいなもの
- 着衣等の全部若しくは一部を着けないでいる他人の姿態若しくは着衣で覆われている他人の下着若しくは胸部等の身体をのぞき見し、又は写真機等を使用して、その映像を記録する行為であつて卑わいなもの
- 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動
何人も、みだりに卑わいな行為であつて次の各号に掲げるものをしてはならない。
- 公共の場所及び公共の乗物以外の場所から、写真機等を使用して、透視する方法により、公共の場所にいる他人若しくは公共の乗物に乗つている他人の下着若しくは胸部等の身体を見、又はその映像を記録すること。
- 写真機等を使用して、住居、浴場、更衣室、便所その他の人が着衣等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所(公共の場所及び公共の乗物を除く。)に当該状態でいる他人の姿態の映像を記録すること。
「①水着の試着をしていた女児を盗撮するつもりでスマホを向けたが盗撮する前に気付かれて②実際には撮っていない」と言い訳したとすると、まず①の盗撮準備行為は奈良県の迷惑防止条例に規定が無いので目撃証言や防犯カメラ等から客観的に裏付ける事ができたとしても処罰する事ができません。
そうなると②が嘘であるとして盗撮行為を立証しなければなりませんが、現場で取り押さえられたわけではなく後日逮捕されるまでにデータを消去する事ができたと思われますのでもしデータが無くなってしまっていると撮っていた事を裏付ける物証も無いという事になります。
「男のスマートフォンを調べるなどして撮影していた裏付け捜査を進める」という表現からしても撮影していた事の裏付けが肝になっている事が窺え、仮に裁判で上述したように言い訳されると撮影していた事の裏付けができていないままでは無罪という事もあり得ますが、被疑者が盗撮を認めているのでその辺りの微妙な事情は伏せつつ略式起訴からの罰金で手打ちにするようになるかなと感じます。
もしデータを復元等できないように消去した上で否認している状況だと不起訴という事もあったかもしれませんが、公判を行わずに略式起訴して罰金とするのであれば30万円から50万円程度ではないでしょうか。
「撮ったやろ」男子トイレでスマホ差し入れ盗撮 無職の男を逮捕
トイレの個室で男性を盗撮したとして、兵庫県警伊丹署は3日、県迷惑防止条例違反の疑いで伊丹市内の無職の男(22)を逮捕した。
逮捕容疑は同日午後7時ごろ、同市藤木の商業施設「イオンモール伊丹」の2階男子トイレで、個室の上からスマートフォンを差し入れて団体職員の男性(31)を盗撮した疑い。容疑を認めている。
同署によると、男性は個室を出ようとした際に差し入れられたスマホに気付いたという。男はトイレから出た直後、男性から「撮ったやろ」と声をかけられて逃走。施設とJR伊丹駅を結ぶ通路の袋小路に迷い込み、男性に取り押さえられたという。
男のスマホには他にも動画が保存されており、同署が関連を調べる。
引用元 : 神戸新聞 2020年6月4日 10時34分配信
商業施設の男子トイレにおける盗撮事件です。男子トイレという事からわかるように男性を狙った盗撮事件で、男性が被害者になる盗撮事件はこれまでに何度か取り上げていますがやはり稀ではあります。
事件の内容としてはトイレの個室の上からスマホを差し入れて盗撮し、それがバレて取り押さえられたというトイレ盗撮ではありがちな手口と末路です。被害者が女性ならもし気付いてもその場で声をかけるというのはなかなかできない場合もあるでしょうが、「撮ったやろ」と詰め寄れるのは男性だったからという事もあるのかもしれません。
その場から逃げる事はできていたようですが、被疑者にとっては土地鑑が無い場所だったのか袋小路に入ってしまって追ってきた被害者に取り押さえられる結果になっています。逃走中は逃げ切れる可能性も考えていたでしょうが、逃げ込んだのが袋小路だった時に被疑者が抱いたであろう絶望感には計り知れないものがあります。
兵庫県の迷惑防止条例でもトイレ盗撮とその目的でカメラを向けたり設置したりする行為は処罰の対象ですのでこの事件は勿論アウトです。
兵庫県 迷惑防止条例 第3条の2
- 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
- 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
- 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
- 前項第2号に掲げる行為
何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
被害者が男性か女性かは関係無く、現場がトイレですので第3項に該当する迷惑防止条例違反と考えられます。
被疑者のスマホには他にも動画が保存されていたとの事で、おそらく盗撮動画と思われるデータという事でしょうがそれが本人が撮ったのであって、かつ余罪として立件できるかどうかによって最終的な処分が多少変わってくると思われますが、この事件だけで見ればそれ程悪質な手口でもないので30万円程度の罰金で済むのではないでしょうか。