先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
下りエスカレーターでしゃがんで「盗撮」 男を逮捕
福岡市地下鉄藤崎駅で7日、女性のスカートの下からスマートフォンを差し入れ、下着を盗撮したとして、33歳の男が逮捕されました。
福岡県迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕されたのは、福岡市早良区室見の自称、契約社員(33)です。
警察によりますと、容疑者は7日、福岡市地下鉄藤崎駅のエスカレーターで、女性(29)のスカートの下から、スマートフォンで下着を盗撮した疑いがもたれています。乗っていたエスカレーターは下りでしたが、容疑者はしゃがんで前にいた女性の下着を盗撮していたということです。
気付いた女性が声をかけると、容疑者は、エスカレーターを逆走する形で逃げましたが、すれ違った男性(23)に取り押さえられました。容疑を認めています。
引用元 : 九州朝日放送 2020年7月7日 16時45分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
スマホを用いてエスカレーターで盗撮するいつもの事件かと思ったら微妙に違っていました。エスカレーターでの盗撮事件は大抵上りエスカレーターで前方にいる女性のスカート内を後方の下の段から狙うという手口ですが、この事件では下りエスカレーターで被疑者がしゃがんで被害者のスカート内にスマホを突っ込んだという内容です。
普通はスカート内を盗撮するには下から撮る事になりますので、被害者が必然的にやや上にいる事になる上りのエスカレーターや階段における事件が殆どでしょう。逆に下りエスカレーターでは自分が上にいるので想像してもわかるように非常に盗撮しにくいと思われますが、そこを自らしゃがんで強引にスカート内を狙ったという事のようです。
この事件では被害者本人が気付いて発覚しているようですが、エスカレーターでしゃがむというのは日常的に目にする光景とは言えずこれはもう誰が見ても不自然ですので本人が気付かなくても周囲の人に見られてすぐにバレていた事でしょう。何故こんな悪条件で強行しようと思ったのか気になるところです。
被害者に気付かれてからエスカレーターを逆走する形で逃げたとの事ですがこれは下りエスカレーターを強引に上っていったという事でしょうか。逃げた被疑者を取り押さえた男性というのはそのエスカレーターで下りようとしていた人なのでしょうが、上述した通り被害者が気付かなくてもエスカレーターに後から来たこの男性が気付いて発覚していたのかもしれません。
駅構内という公共の場所における盗撮事件ですので場所や行為の内容によって迷惑防止条例違反に該当するかどうかが議論になる余地は無いと思われます。とはいえ下りだから悪質だという事にもなりませんし余罪等が出てこなければ厳しくても30万円までの罰金で済むのではないでしょうか。
アプリで知り合い「盗撮された」と60万円恐喝未遂
出会い系アプリで知り合った男性からホテルで全裸姿を盗撮されたことをきっかけに、現金60万円を脅し取ろうとしたとして、風俗店従業員の女2人が警視庁に逮捕されました。
恐喝未遂の疑いで逮捕されたのは、新宿区の風俗店従業員(21)ら2人です。2人は、先月、出会い系アプリで知り合った40代の男性に新宿区歌舞伎町のホテルで全裸姿を盗撮されたことをきっかけに、男性に対し「1人30万ずつで60万円払え。警察に取り調べを受ければ会社にもばれる。奥さんに電話しようか」などと言って現金を脅し取ろうとした疑いがもたれています。
取り調べに対し、容疑者は「裸の動画を撮影されたので示談金を請求しただけです」などと容疑を否認しています。2人は出会い系アプリを利用し、同様のトラブルを6件起こしているということで、警視庁が捜査しています。
引用元 : TBS 2020年7月9日 13時28分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
こちらは盗撮事件ではなく盗撮された事をネタに脅してお金を取ろうとした恐喝未遂事件です。近頃は盗撮絡みの恐喝というと盗撮ハンターのニュースが目立っていますが、これは盗撮された女性自らがお金を脅し取ろうとしていたようです。
被疑者の女性らは全裸姿を盗撮された風俗店従業員との事ですのでいわゆる風俗嬢という事なのでしょうが、示談のつもりだったとして否認しているとの事です。ただ、恐喝未遂の被害者とは出会い系アプリで知り合ったとされているので風俗嬢としての仕事中に盗撮されたわけではないようです。
しかし、何かを要求する前に男性がお金を出してきたならまだしも女性側から金を払え、警察へ行けば会社や家族にもバレる、などと言ってしまってはどう言い訳しようと恐喝です。ヤクザや半グレでも今時こんな言い方はしません。
一方で気になるのは「同様のトラブルを6件起こしている」との事で、ここからは同様の手口での恐喝を繰り返していた事が窺えます。ですが、盗撮されてもいないのに難癖を付ける事は流石に無理があると思われ、他の恐喝についても現に盗撮された事が前提になっていると考えられます。
6件というのが短い期間での話なのか数年間などある程度長い期間の中での話なのかわかりませんが、以前の記事で小学校教員による風俗嬢の盗撮事件を取り上げているように風俗店の利用客でも出会い系アプリの利用者でも似たような事を考える男性はそれなりに存在しているという事なのかもしれません。
なお、恐喝とは別に盗撮については、東京都の迷惑防止条例では「人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」での盗撮行為は処罰の対象になりますので被害者の男性の行為が迷惑防止条例違反となるかどうかは現場のホテルがこうした場所に該当するかどうかによると思われます。
東京都 迷惑防止条例 第5条 第1項
- 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
- 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
(イ) 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所(ロ) 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
- 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。
知り合ったきっかけが出会い系アプリであって盗撮されたのが全裸姿という事はおそらくラブホテルなどでしょうし、目的を考えれば第2号(イ)に該当するような場所だったと解釈して差し支えないと考えられますのでこれはこれで盗撮事件になり得る行為だったと思われます。
未遂とはいえ恐喝に及んでしまっていては今更その時の盗撮の被害届を出すことは無いでしょうし、盗撮に関しては事件化されないのではないでしょうか。
恐喝については未遂でも罰金刑の規定がありませんので公判請求されれば少なくとも執行猶予付きの懲役刑は免れませんが、「同様のトラブルを6件起こしている」という点から他に恐喝既遂の余罪があって追加で立件されれば一発で実刑という事もあるかもしれません。
ガソリンスタンドのトイレに盗撮目的のスマホ 警察官が持ち物検査したら、1人だけ…
抜き打ちの“持ち物検査”で御用-。盗撮目的で女子トイレにスマートフォンを仕掛けたとして、兵庫県警芦屋署は9日、迷惑防止条例違反の疑いで、大阪市淀川区のガソリンスタンド従業員の男(31)を逮捕した。
逮捕容疑は、同日午前11時35分ごろ、同県芦屋市内のガソリンスタンドの女子トイレに盗撮目的でスマホを設置した疑い。容疑を認めているという。
同署によると、ガソリンスタンドを経営する会社の社員が内装工事の下見で女子トイレを点検中、ドア上部に設置された棚を開けたところスマホが落ちてきた。110番で駆け付けた署員が、従業員にスマホを所持しているかどうか確認し、1人だけスマホを持っていなかったために男の容疑が浮上したという。
引用元 : 神戸新聞 2020年7月10日 0時30分配信
ガソリンスタンドの女子トイレにおける盗撮事件ですが、逮捕容疑が女子トイレに盗撮目的でスマホを設置した疑いとされていますので実際に盗撮された被害者が確認できなかったと見られ、盗撮準備行為での逮捕に留まっています。
社員が内装工事の下見に来ることを知らされていなかったのでしょうか、点検対象の女子トイレにスマホを仕掛けてしまってそれが露見し、110番通報されてお縄となったようです。従業員に対して所持品検査をすると言われた時の被疑者は正に生きた心地がしなかったでしょう。
運が悪いと言えなくもありませんが、偶々スマホを仕掛けた日に偶々社員が点検に来たという偶然が重なる事があるだろうかとの疑問もありますので、以前から同様の手口でトイレ盗撮をしていた可能性もあります。それならば猶のこと自業自得と言う他ありませんが、その場合はこれまでに実際に盗撮をした余罪を裏付けられる事もあり得ますので盗撮準備行為には留まらなくなるかもしれません。
兵庫県の迷惑防止条例でも盗撮目的でトイレにカメラ等を仕掛ける行為は勿論処罰の対象となっていますので、もし他の余罪が出てこなくても今回の行為がセーフになる事はありません。
兵庫県 迷惑防止条例 第3条の2
- 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
- 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
- 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
- 前項第2号に掲げる行為
何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
この事件では現場がガソリンスタンドの女子トイレですので第3項に該当していると考えられ、「撮影する目的で写真機等を設置してはならない」としっかり明記されています。
具体的な処罰の内容については前科の有無や余罪が発覚してそれが裏付けられるかどうかなどにもよりますが、今回の盗撮準備行為に限って言えば被害者がいないと思われますのでおそらく10万円から厳しくても30万円までの罰金、情状によっては不起訴という可能性もあるのではないでしょうか。