先週報道された盗撮に関するニュースに触れてまいります。
JR新宿駅で線路に立ち入り 盗撮気付かれ逃走か 逮捕
9日、東京のJR新宿駅でアルバイト従業員が線路内に立ち入り、山手線などで一時、運転を見合わせる影響が出ました。女性を盗撮しようとして気付かれ、線路に飛び降りて逃げたということで、警視庁は都の迷惑防止条例違反の疑いで逮捕し、詳しい状況を調べています。
逮捕されたのは、東京 東村山市のアルバイト従業員(45)です。
警視庁によりますと、9日午前10時ごろ、JR埼京線の電車内でスマートフォンのカメラで20代の女性を盗撮したなどとして、都の迷惑防止条例違反の疑いが持たれています。
容疑者は女性のスカートの中を盗撮しようとして気付かれ、JR新宿駅の1番線のホームから線路に飛び降りて逃げたということです。
その後、警察官が駅の外にあるデパートの入り口付近で見つけ、事情を聴いていましたが、9日夜、逮捕しました。調べに対し、容疑を認めたうえで「痴漢で捕まったことがあったので、今回はスマートフォンで撮影した」と供述しているということです。
JR東日本によりますと、この影響で山手線や埼京線、それに湘南新宿ラインなどで10分ほど運転を見合わせる影響が出ました。
引用元 : NHK 2018年10月9日 18時58分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
先週報じられた盗撮事件のニュースとしてはおそらく最も扱いが大きかったのがこの事件でしょうか。
スマホによる直撮りのようなので盗撮行為としては特段目立った点はありませんが、盗撮に気付かれた後に線路へ降りて逃走し、それにより都心部を走る山手線や埼京線などが一時運転見合わせになったことで大きなニュースになりました。
盗撮や痴漢の後に線路へ降りて逃げるというのも以前取り上げた記事も含めて一時期多く報じられており「またか」という印象がありますが、この事件で個人的に気になった点は「痴漢で捕まったことがあったので、今回はスマートフォンで撮影した」という供述でしょうか。
最初これを見たときは「もう捕まりたくないので(痴漢より気付かれにくいと思われる)盗撮に変えた」という意味なのかと思いましたが、他の記事で以下のように報じられているのを見るとそういう意味ではなさそうです。
しかし30分後、警視庁の捜査員が、新宿駅近くで容疑者を発見し、確保した。調べに対し、容疑者は容疑を認め、「盗撮なら逮捕されないと思っていた」などと話しているという。
引用元 : ホウドウキョク 2018年10月9日 20時0分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
約20分後、新宿駅近くにいた容疑者を警戒中の警察官が発見して職務質問した後、警察署に任意同行したということです。取り調べに対し、容疑者は「前に痴漢で捕まったので、捕まるのが怖くて盗撮した」「怖くなって逃げた」と容疑を認めています。
引用元 : テレビ朝日 2018年10月10日 5時53分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
それぞれ表現が微妙に異なっていますが、総合すると盗撮が犯罪ではないと考えていた節が見られるのでこれには軽く驚きを感じます。連日のように報じられる盗撮事件のニュースは届いていないのでしょうか。
知らなかったと言えば罪が軽くなると思ってわざとそう言った可能性もありますが(もちろんそんな主張は通用しません)、本当にそう信じていたとしたら、それが情報の格差なのか単に都合の良い情報だけ摘んで高を括っていたのかわかりませんが、ある意味怖ろしいことのように感じます。
いずれにしても痴漢という同種前科があるようなので厳しい処分は免れないでしょう。前科が1件だけなら今回の事件は罰金50万円程度、前科がより多いなら公判請求も視野に入ってくると思われます。
また、電車が一時運転見合わせになったことでJR東日本が被疑者への損害賠償請求を検討しているとのニュースも出ています。被疑者においては刑事民事の両面で責任を厳しく追及されることになるかもしれません。
授業中に女子児童を繰り返し盗撮 教諭を懲戒免職 福岡
福岡市教育委員会は11日、授業中に女子児童のスカートの中を繰り返し盗撮したとして、市立小学校(福岡市中央区)の教諭(44)を同日付で懲戒免職にし、発表した。市教委の聞き取りに「昨年2学期から盗撮していた。人数は覚えていない」と話しているという。
市教委によると、教諭は9月27日と10月1日の授業中、5年生の女子児童数人のスカートの中を、手に持った小型のデジタルカメラを使い動画で撮った。児童が発言などで立ち上がった時に指導を装って脇にしゃがみこみ、撮影するなどしていたという。
1日の授業後、教諭の不審な動きを知った女子児童2人が別の教諭に「撮られたかもしれない」と申し出た。校長の聞き取りに教諭は当初、否定していたが、7日に「自分で見るために撮っていた」と認めた。動画を保存していた記録装置は、2日に壊して捨てたと説明しているという。
引用元 : 朝日新聞 2018年10月11日 21時52分配信
※被疑者の氏名部分を修正しております。
前回取り上げていた件の続報で、聴き取りに対して当初は盗撮の疑いを否定していた教員が一転認めたようで懲戒免職処分となりました。結局はシラを切っていただけのようです。
「児童が発言などで立ち上がった時に指導を装って脇にしゃがみこみ、撮影するなどしていた」とされていますが教室での授業中にやっていたのでしょうか。周囲には他にも児童らがいたでしょうに随分大胆な手口です。
しかし、ここに至ってもまだ警察への相談や届け出など警察の捜査に関することに触れられていないのは気になります。
先の記事で取り上げていたように盗撮の現場としての教室を「公衆の目に触れるような場所」と解釈して迷惑防止条例違反を適用するのはやはり微妙ということなのかもしれません。それでも建造物侵入での検挙の可能性は残されていますが、この場合は盗撮と被害者が異なってきます。
市立小学校なのでその場合は学校を看守する責任者として校長が被害を届け出ることになり、もちろん教育委員会の指示や意向を受けることになりますが、盗撮を認めて懲戒免職処分を受け入れれば警察沙汰にはしないという持ちかけがあった可能性はあります。
一方、そうだとしたら1年以上も続けて「人数は覚えていない」と言うほどなので親御さんの中には教員が逮捕されて断罪されないと納得できない人もいると思われ、特に盗撮された女子児童の親御さんにおいては個別に警察へ相談しているということも考えられます。
会社の事務室や学校の教室を「公衆の目に触れるような場所」とする福岡県の解釈についても気になるところなので、続報があるかどうか引き続き注視していきたいと思います。
小学教諭が女性盗撮 勤務外 学校体育館で 停職6ヵ月
県教委は11日、県内の公立学校体育館で女性2人の着替えを複数回、盗撮したとして大分市立小学校の男性教諭(29)を停職6カ月の懲戒処分にした。教諭は同日付で依願退職した。
県教委によると、教諭は7月1日午後9時半ごろ、個人的に所属するスポーツ同好会で体育館を利用した際、倉庫の棚にスマートフォンを設置。練習を終え、倉庫内で着替えをしていた同好会の女性2人を動画で撮影した。女性が気付いて指摘。教諭は盗撮を認め、その場で映像を消去したという。
女性は被害届を提出し、県警は8月1日、教諭を県迷惑行為防止条例違反の疑いで書類送検した。大分区検は9月27日に不起訴処分とした。
県教委の聞き取りに対し、教諭は2017年11月と18年3月にも同じ女性2人を盗撮していたことを認めた。「職場のストレスを抱え込んでいた。悪いことと分かっていたが、自分の弱さに負けてしまった」と述べたという。
会見で教育人事課の法華津敏郎課長は「教育行政への信頼を失墜する行為。綱紀粛正と服務規律の保持を徹底する」と謝罪した。県警などによると、同条例は今年3月の改正で盗撮行為の規制範囲が拡大され、学校施設も対象となった。今回の摘発は改正点を初適用したケースだった。
引用元 : 大分合同新聞 2018年10月12日 3時1分配信
こちらも小学校の教員による盗撮事件で、被害者は小学生の児童ではなくスポーツ同好会に所属する一般女性のようです。何のスポーツかわかりませんが、被疑者が勤務する小学校の体育館を借りて活動していたということでしょうか。
「2017年11月と18年3月にも同じ女性2人を盗撮していた」とのことでこの女性らを狙っていたことが窺えるところ、女性らを盗撮する目的で自身も同じスポーツ同好会に所属していたのかもしれません。
過去2回の盗撮はバレずにうまくいっていたのでしょうが、残念ながら今回は設置していたスマホに気付かれてしまったといったところでしょうか。
なお、大分県では今年の3月に迷惑防止条例が改正されており、「盗撮行為の規制範囲が拡大され、学校施設も対象となった。今回の摘発は改正点を初適用したケースだった。」とされています。
大分県 迷惑行為防止条例 第3条
- 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から、又は直接人の身体に触れること。
- 衣服等で覆われている人の下着若しくは身体(以下この号及び次号において「下着等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、又は下着等を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を下着等に向け、若しくは設置すること(次号に規定する方法により行われる場合を除く。)。
- 衣服等を透かして見ることができる写真機等を使用して、下着等の映像を見、若しくは撮影し、又は下着等を撮影する目的で写真機等を人に向け、若しくは設置すること。
- 前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
何人も、集会場、事務所、教室、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所又は乗物(公共の場所又は公共の乗物を除く。)において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、前項第2号又は第3号に掲げる行為をしてはならない。
何人も、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所に当該状態でいる人の姿態をのぞき見し、若しくは撮影し、又は当該状態でいる人の姿態を撮影する目的で写真機等を人に向け、若しくは設置してはならない。
盗撮行為の規制範囲に学校施設も含まれることになり、今回の事件でこれを初適用したとのことですので第2項の違反に該当するものと思われます。
体育館の倉庫が着替えに使われていたわけなので、第3項が示す「更衣室」や「人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」には当たらないという解釈だったのでしょうか。第2項が無かったとしてもスポーツ同好会において倉庫を着替えに使用していたという周知があったのであれば「更衣室」と解釈して第3項への違反とすることも無理ではないようにも感じます。
被害者女性が被害届を出しているものの教員は不起訴処分となっていますが、これは示談が成立したのか、あるいは立件された盗撮が1件だけで寛大に処分されたのかもしれません(過去の2件は県教委による聴取へ回答しただけの話で事件化していないと思われます)。
しかしながらその後、停職の懲戒処分の上で依願退職となったようですので、刑事処分としては寛大に済まされても失ったものは大きいようです。